芸能人はどうやって覚せい剤を入手する?メディアを騒がせた元大物売人に聞いた
TABLO / 2016年12月6日 17時1分
今から書く記事は、約10年位前にマスコミを大きく騒がせた大物ネット覚醒剤売人の話だ。彼は未成年の女子大生と組み、ネットでかなりの顧客をつかんだのだが、その客の1人に吉本興業が売り出していたモデルユニットのメンバーがいたのである。以下の事件を覚えている方はいらっしゃるだろうか。
◇◇◇
吉本興業のモデルユニット「ビジュギャル」の元メンバーが、覚せい剤取締法違反容疑(使用)で逮捕されていたことを受け、同社は1日、今月28日に予定していたビジュギャルの撮影会を中止し、年内の活動を自粛することを決めた。「ビジュギャル」は、吉本と「ナニワ商会」の共同プロジェクトとして今年3月から活動をスタート。「カメラのナニワ」などで水着撮影会を行ってきた。オーディションで初代メンバーに選ばれた加西さおりこと、○○○○容疑者(20)は、撮影会をドタキャンしたため9月に吉本を解雇されたが、11月下旬、知人から購入した覚せい剤を使用した疑いで、近畿厚生局麻薬取締部に逮捕された。
吉本の担当者はこの日、ナニワ商会を訪れ、謝罪。撮影会中止などの対応を協議した。「元メンバーの事件とはいえ、ご迷惑をおかけしました。年内最後の撮影会だったので、ファンの集いなども企画していたのですが...。メンバーもショックを受けていますが、来年からがんばります」と肩を落としていた。(ZAKZAK 2003/12/02)より。一部伏字(編集部)
◇◇◇
筆者は、刑期を終えたこの事件で売人だった男、つまりこの大物覚せい剤売人との接触に成功した。早速インタビューを試みた。以下は彼との一問一答である。
――何で売人になったのか。
「自分で喰うネタを浮かそうとしたのが最初ですけどね、元々は。初めは(大阪の)西成で立って売り子をやっていたんですよ、そこからがスタートですね」
――使用していたのは自分の携帯ではないですね。それらの入手方法は?
「飛ばしの携帯ですね、つまり名義が誰か分からない携帯ですよ。主にそれらはネットで入手しました」
2000年代前半、ネットの薬物の売買は無法地帯でもあった。ヘビーユーザーの覚せい剤の愛好家は自分で仕入れ先を抱えているのが普通だ。だが、末端のユーザーはいつもこんな言葉で騙される。例えば、こんなように。
「上物のアイスお届けします、郵送、宅配可。今すぐ連絡を」
「冷たいモノから何でもお届け、道具もお付けします、誠心誠意真心を込めて、大阪発」
こんな書き込みを見て客は電話する。
客「ネットを見たんですけど、今すぐ届けられますか、場所は〇〇です」
売人「いいですよ、時間は一時間位掛かりますけど、値段はワンパケ0.2グラム1500円です」
という感じだ。実はこの時点でこの値段を出せば覚せい剤の1グラムはツテがあれば買える値段である。この売人は非常に目立つ名前でネットの書き込みを始めた。
「関西一円誰よりも早くお届けします、良心的な安心価格 〇〇」
――何でそんな名前にしたのか。
「覚せい剤の隠語ですよね、だからホンマにそのまんまです」
商人の街大阪では、値切る客もいる。
客「他の売人はもう少し安いわ、ほんの数百円でいいからまけてくれへんかな」
売人「うちはそこらの売人とちゃいますよ、キチンとした品物を自信持って扱ってます、そんなにこの値段が納得出来へんかったらよそ当たっても構へんですよ、他に客はいますから」
客「そんなにええんか、それやったら今回はその値段で構へんから、次回から考えてくれまっか」
売人「それやったら次回は多少考えますわ」
その様な感じで客は顧客となっていくのだ。売人だった彼は毎日の様に書き込みを続けて、顧客は数百人にも上った。そして、その金は毎日ゲーム屋、つまり違法賭博に溶けていくのである。
売人「あー、今日も負けたわ、そうや、少しこっちから営業掛けるか」
そうやって彼は飛ばしの携帯に入っている客の電話番号に自ら営業をするのである。
売人「もしもし〇〇ですが、今日いりまへんか、少しいいネタを多く仕入れたので」
客「そうなんでっか、それだったら持って来てくれまへんか」
売人「構へんけど、少し足代載せますが構いませんか」
客「モノがええなら高速代位なら出しますよ」
この様に覚せい剤に依存して溺れている客は断る事は出来ないのだ。こうした顧客を、ある地域に密集させて、彼は確実に高速代を全員から取り、それも又違法賭博で溶かすのである。彼が共犯として捕まった少女も初めは顧客の1人で覚せい剤を安く譲り渡す事で自分の女となった。
――出会いはやはりネットだったのか?
「ネットですよ、掲示板に覚醒剤の広告を出していたら、向こうから接触があり、会ったら可愛かったからモノにしました」
彼が捕まったのは警察では無くてマトリ、近畿では特殊な呼び方で「近麻」(近畿厚生局麻薬取締部)と呼ばれている。
――マトリ、関西では近麻と言うと思うだけど、内偵されているのは分からなかったのか?
「分からんかったですね、取り調べの時にあー、あいつ、と思う奴は沢山いました」
――例えば?
「茶髪のロン毛で自分が借りていたホテルの前で音楽を聞いていた奴。宅配便の恰好をして、自分の借りていたホテルの前にいつもいた奴。部屋の前でよくすれ違う住民とか」
――どんなホテルだったのか?
「ミナミでは有名な〇〇と言うホテルで、下の階は風俗の待機とか事務所があって、上の階はポン中ばかりです。一般の客も当然いましたが、殆どはそれらの事情を知っている客に占められていましたね」
――同じ階のポン中に注意されなかったのか。狙われてるぞ、とかおかしい奴いるぞとか。
「言われましたよ、何回も。だけど相手も効き目だし、自分も決まってるから相手にしませんでした」
――捕まった時はどんな感じだった?
「忘れもしません、早朝に女と寝ていたらいきなり女の捜査官も含めて10人位部屋に入ってきました」
――モデルユニットの女は何故捕まったのか?
「あれは一緒に捕まった女の子の連れで何か荷物を送った時の送り状からばれましたね、元々友達やったから」
――それで客になったのか?
「そうですね、他にもモデル仲間とか沢山いましたけど、近麻がそこまで一生懸命に摘発しなかったから助かったと違いますか。警察やったら芋づる式で捕まってたはずだと」
彼の話を要約する。一連の覚醒剤の事件で有名人が捕まった。この当時はマトリと警察はどれだけ多くの有名人を捕まえて報道されるか、競争している時期でもあった。今は捜査情報を共有しているが、この様な時代があったのだ。
その後、彼は服役して、社会に戻り今は覚せい剤とは無縁の生活を送っている。一方、モデルの女には新たな事件が浮上した。逮捕時の取り調べにおいて、年老いた開業医から向精神薬を不法に入手していた事まで発覚して再逮捕された。この一件もマスコミでは「老いらくの恋」と報道されて覚えておられる読者の方もいるのではないだろうか。この様に違法薬物は今も売買が盛んに行われている。前よりも目立たなくはなったが、それだけ巧妙になった、と言う事である。
Written by 西郷正興
Photo by K-SAKI
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