ホンダの上級セダン「インスパイア」復活!? 全長5m級&縦型グリルで迫力スゴイ! アコードと違う印象は? 中国で試乗
くるまのニュース / 2024年5月10日 17時10分
ホンダ「インスパイア」は日本において初代から5代目までの約20年間販売されていました。2012年の終了後には中国で2018年に復活を果たしています。
■ ホンダ「インスパイア」復活してた! どんなクルマ?
かつて日本では2012年まで販売されていたホンダ「インスパイア」。
中国では最新モデルも販売されています。その試乗した印象はどのようなものなのでしょうか。
インスパイアは1989年、フラッグシップセダン「レジェンド」とアッパーミドルセダン「アコード」の間を埋めるモデル「アコードインスパイア」として登場しました。
2003年に登場した4代目モデルからは北米向けアコードをベースにするようになり、日本向けアコードよりも余裕のあるエンジンと車体設計を特徴としています。
レジェンドとあわせてホンダにおける二大フラッグシップ的な立ち位置を担うことになりましたが、2012年9月には販売終了となりました。
一方、インスパイアの名前は中国市場では健在です。
2018年に中国で初登場を飾ったインスパイアはアコードに対する姉妹車としてその車名が復活。
ホンダの現地合弁会社「東風ホンダ」が製造・販売を担当しています。
ホンダは中国で東風汽車との「東風ホンダ」、そして広州汽車との「広汽ホンダ」の2つの合弁会社を持っており、ひとつのモデルに違うデザインと車名を与え、それぞれから姉妹車として展開する販売戦略をとっています。
アコードも例に漏れず、広汽ホンダでは「アコード」であるのに対し、東風ホンダでは「インスパイア」となる形です。
2022年11月にアコードは11代目へと移行しましたが、それにともなってインスパイアもフルモデルチェンジ、「7代目インスパイア」が2023年5月に発売されました。
ボディサイズは全長4979mm×全幅1862mm×全高1449mm、ホイールベースが2830mmとなり、日本で販売されているアコードとほぼ同一となります。
エクステリアの全体的な印象はアコードと同じですが、一方でフロントマスクやテールの造形はインスパイア独自です。
アコードではフロントグリルの角がシャープ、天辺がヘッドライトの延長線上にあるのに対し、インスパイアではグリルの縁を分厚く、また角を丸く仕立て上げています。
グリルの模様が縦型なのに加え、バンパーのエラに当たる部分にはインテークも設けられていることから、アコードよりもスポーティな印象を受けます。
テールライトはアコードが左右一体型なのに対し、インスパイアではオーソドックスな独立型となっています。
他にもリフレクターやディフューザーの形状が異なっている形です。
内装は他の仕向地と同様の設計となり、ダッシュボードのセンターには12.3インチのディスプレイが鎮座します。
同クラスのライバルであるトヨタ「カムリ」の中国向けモデルは他市場モデルと大きく内装設計を変えており、例えばエアコンの操作は木目調のタッチパネルとなっています。
このこともあり、インスパイアが他市場モデルと同一の内装を持つのには少し驚きました。
それでも、今世代のホンダの内装設計はそもそも優れており、ボタン類の押し心地からタッチパネルの応答速度まで、不満は一切感じられません。
上位グレードのスピーカーには日本のアコードと同じくBOSE製12スピーカーシステムを搭載、極上の音響空間を演出してくれます。
インスパイアは5人乗りのミドルセダンなため、後部座席の空間も重要となります。
身長187 cmの筆者が実際に座ってみても窮屈さは感じられず、楽な姿勢で長距離も移動できると感じました。
一方、リアトランクは容量17.7 kWhのバッテリーを搭載する関係で、積載量が少なからず圧迫されています。床面もフルフラットにはなっていないため、荷物の搭載には注意が必要と感じました。
パワートレインは純ガソリンかプラグインハイブリッド(PHEV)の「e:PHEV」モデルのみとなり、日本や北米などで販売されているハイブリッド(HEV)の「e:HEV」は展開されていません。
純ガソリンモデルはL15C型1.5リッター直列4気筒VTECターボエンジンを搭載し、最高出力189 hp/最大トルク260 Nmを誇ります。
中国では「260 TURBO」というグレード名が付与されていますが、その数字はトルクの数値に由来します。
一方のe:PHEVモデルはLFB型2.0リッター直列4気筒i-VTECエンジンを搭載。
エンジン自体は最高出力146 hp/最大トルク182 Nmですが、これにフロントに配置された最高出力181 hp/最大トルク335 Nmの駆動用モーターと組み合わせています。
バッテリーは「CATL(寧徳時代)」が製造する容量17.7 kWhの三元系リチウムイオン電池を搭載、WLTC方式での純電動航続距離は82 kmとなります。
ガソリンエンジンと総合した数値は公表されていませんが、同じパワートレインを搭載する「CR-V」の姉妹車「ブリーズ」のe:PHEVモデルが1060 kmと案内されているため、インスパイアでも同等と言えるでしょう。
■ホンダ「インスパイア」いざ試乗! e:PHEVの印象は?
今回、中国で試乗したのはe:PHEVモデルです。
運転してみると、さすがはPHEVと言わんばかりの静かな走り出しが体感できます。
ただ、そこで終わらないのがホンダのe:PHEV。
アクセルを強く踏み込むとスムーズに加速してくれて、あっという間に100 km/hを超える速度で静かに巡航してくれます。
エンジンは搭載していますが、振動はほぼ感じられず、またエンジン音も非常に抑えられている設計です。
ドライブモードを「SPORT」にすることでエンジン音はより大きく、また加速性能もよりパワフルになり、立派なスポーティセダンとしての走りをもたらしてくれます。
エンジンとモーター駆動の切り替えはとてもスムーズで、運転していても切り替わる瞬間は気づかないほどです。
また、足回りはよく設計されており、土や石が混ざった凹凸路でもしっかりと衝撃を吸収してくれます。
パワートレインとサスペンションの両方がよく設計されているため、高速道路では疲れ知らずのクルージングをもたらしてくれると感じました。
デザインよし、乗り心地よし、そしてパワートレインはスポーティかつエコ。
これらの要素が揃ったインスパイア e:PHEVは、ほんの30分ほどの試乗でしたが、その高い完成度ゆえにこれを日本でも販売してほしいと強く感じました。
e:PHEVモデルは2.0リッター直列4気筒i-VTECエンジンにPHEVシステム組み合わせている(撮影:加藤博人)
ホンダは日本市場において、2024年夏にCR-Vの燃料電池モデル「CR-V e:FCEV」、N-VANの純電動モデル「N-VAN e:」をリリースする一方、PHEVの販売予定はありません。
また、「ホンダ e」の生産終了にともない、現在は1台もBEVを販売していない状況です。
日本ではインフラや国土の面でもBEVよりPHEVのほうが向いていると筆者は考えます。
環境面だけじゃなく、スポーティな魅力も持つ「ホンダのPHEV」を中国国外でも積極的に展開してほしいという感想を抱きました。
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