鳥インフルエンザ対策奏功か 小康状態も依然警戒
共同通信 / 2024年4月11日 8時1分
昨シーズンに全国各地で猛威を振るった高病原性鳥インフルエンザの確認件数は今季、9県10例と小康状態だ。鶏卵の流通にも混乱は生じていない。専門家は「生産者の対策が奏功した」との見方を示すが、養鶏関係者は過去に発生例がある4月も警戒を強めている。(共同通信=渡具知萌絵)
渡り鳥の越冬地、鹿児島県北部の出水市。昨季は全国最多の9農場で見つかり、計約120万羽が殺処分された。多くの養鶏農家が加盟するマルイ農協は、気象条件や野鳥の感染状況を分析。干拓地周辺を対策強化地域に指定し、鶏舎の空気取り込み口にフィルターや消毒液噴霧装置の設置を進めた。
「この冬も組合員の危機意識は高かった」と話すのは椎木昭任(しいのき・あきと)生産事業部長だ。「より安価で効果が高い対策を模索していきたい」と語る。今季は2023年12月を最後に感染報告はないが、気が抜けない。「いつまで対策を取れば良いのか、毎年悩みどころだ」と明かす。
農林水産省は2023年9月、家畜伝染病予防法に基づく指針を改定。感染が確認された場合の一斉処分の回避を目的に、農場を複数の区域で管理する「分割管理」を盛り込んだ。全国約80農場が検討しているものの、現時点で導入を把握しているのは青森県三沢市の農場だけだ。
農水省の担当者は「予算の面から採用が難しく、消毒や人員配置で対応している農場もある。重要なのは衛生管理の徹底だ」と強調する。
鹿児島大の小沢真(おざわ・まこと)准教授(ウイルス学)はシーズン終了まで結論が出せないと断った上で「昨季の発生数が異常だった。比較すると今季流行したウイルスは伝染力が弱い系統だったのではないか」と分析する。
ただ「少なくとも渡り鳥が繁殖地へ帰るまでは養鶏場で鳥インフルエンザウイルスが広がるリスクがあり、引き続き対策が必要だ」と強調する。
高病原性鳥インフルエンザ
A型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥の病気。致死性が高く、冬に発生しやすい。農林水産省によると、2022年10月~2023年4月に26道県で84例を確認し、過去最多となる計約1771万羽が殺処分対象となった。この結果、冬場に需要が高まる鶏卵の価格が高騰。供給不足に加え、飼料価格の上昇によりさまざまな食品や外食店の値上がりにつながった。今季確認された9県は茨城、群馬、埼玉、岐阜、広島、山口、香川、佐賀、鹿児島。
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