社説:トリガー条項 許されぬ政局の道具化
京都新聞 / 2023年11月30日 16時5分
政治の利害で税制を駆け引きの道具とすることは許されない。
ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」の凍結解除を巡り、岸田文雄首相が検討を進める考えを示した。
凍結解除を強く求める国民民主党に首相が呼応した形で、与党と国民の3党で協議する。首相は「結論を尊重し、私自身が判断する」と前向きな構えをみせる。
協議と引き換えに、国民は2023年度補正予算案に賛成した。政務三役の相次ぐ不祥事や唐突な減税表明などで支持率が落ち込む中、野党を分断して政局を有利に運びたいとの思惑が透ける。
同様の3党協議は昨春もあり、国民が予算案に賛成したが、最終的に解除は見送られた。焼き直しのような枠組みを作っただけで、再び巨大与党にすり寄る国民の姿勢も理解し難い。
トリガー条項は10年、旧民主党時代に設けられた。レギュラーガソリンの全国平均価格が1リットル当たり160円を3カ月連続で超えた場合、ガソリン税のうち、約半分にあたる上乗せ分25.1円を減税する。11年の東日本大震災後、復興財源確保のため凍結され、一度も発動されたことはない。
ウクライナ危機などで高騰するガソリン価格に対し、政府は時限措置として補助金で抑制を図っているが、価格は落ちつかず6度も延長している。次の期限は来年の4月末である。
そこをにらみ、与党はトリガー条項の凍結解除に結論を出すという。だが、政府・与党内にも慎重な声が少なくない。
ガソリン税は地方税を含むため、自治体財政にも直結する。鈴木俊一財務相は国と地方合わせ「1.5兆円もの巨額の財源が必要になる」と難色を示す。
そもそも補助金も凍結解除も富裕層を含めた一律支援に変わりなく、財政難を顧みない「ばらまき」といえる。ガソリン使用を抑える脱炭素の流れにも逆行しよう。さらにいえば、補助金で含まれていた重油や灯油は、トリガー条項では対象外となる。
物価高対策ならば、低所得者層への支援に絞るべきだ。
ガソリン税はもとは特定財源として、道路整備のために暫定的に税率が上げられた。一般財源化された後も、上乗せ分として残り続けてきた経緯がある。
ガソリン税をどうするかは、国と地方の税制全体の中で丁寧に議論すべきテーマだ。場当たり的な対応は慎んでもらいたい。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
政権維持に固執する岸田首相が〝選挙準備〟「政活費公開」「外交」「減税」で大博打 衆院3補選全敗も…なぜか支持率UP
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月7日 14時39分
-
社説:憲法記念日に 後戻りさせず自治拡充こそ
京都新聞 / 2024年5月3日 16時0分
-
立民への追い風、閣僚経験者「微風程度だ」…泉体制に渦巻く不満
読売新聞 / 2024年5月2日 6時42分
-
焦点:少子化財源に日銀ETF活用案、支援金巡り「埋蔵金」の思惑再燃
ロイター / 2024年4月17日 13時14分
-
子育て支援金「正面から議論を」「結果だけ押し付けるな」 日本総研・西沢氏が政府与党批判、野党とも一線
カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年4月9日 19時51分
ランキング
-
1〈速報・那須2遺体〉“全身刺青”の宝島さん娘の内縁の夫が逮捕「何見てんだよ」とポルシェのオープンカーでライバル店に横づけ挑発…「彼はチンピラでした」「ほとんど亡くなった奥さんの命令で動いてた」
集英社オンライン / 2024年5月7日 1時17分
-
2「幼少期から酷い言葉を投げられることもあった」安達祐実(42)が週刊文春だけに語った実母への“絶縁宣言”
文春オンライン / 2024年5月7日 17時0分
-
33か月後に再び来店“万引き犯”…店はマークしていた 札幌の53歳女逮捕「やっていません」
STVニュース北海道 / 2024年5月7日 9時17分
-
4【中継】娘の内縁の夫が“首謀者”か 知人ら2人を死体損壊疑いで逮捕 那須夫婦遺体
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月7日 11時42分
-
5立て続けに自宅被災の珠洲市民、6割が再建の意欲低下…仮設住宅の女性「また被災するかも」
読売新聞 / 2024年5月7日 8時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください