社説:経済安保法案 権利侵害の懸念拭えず
京都新聞 / 2024年4月11日 16時5分
幅広い市民のプライバシー侵害や知る権利の制約となる懸念が拭えない。与野党でさらに審議を尽くすべきだ。
機密情報の保全対象を先端技術や重要なインフラにも広げる「重要経済安保情報保護・活用法案」が衆院を通過した。
国が民間人を身辺調査し、資格を与えた人のみが情報を扱う「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」を導入することが柱である。
政府は経済安保の機密保全制度がある欧米各国と足並みをそろえ、同盟国などとの情報共有や企業間の共同開発を進めるのが立法化の狙いという。しかし、どのような情報が機密に当たるのかを明確にしていない。
サイバー攻撃対策や半導体の供給網などに関する情報が想定されるが、岸田文雄首相は審議で「運用基準で明確にする」と繰り返すばかりだった。
運用基準は今後、有識者の会議を設けて検討するとしている。だが、政府の恣意(しい)的な機密指定で国民の知る権利を脅かしかねない。
適性評価は家族の国籍、犯罪歴、精神疾患、飲酒の節度、借金まで調べるという。本人の同意を前提とするものの、具体的な調査の内容や判断基準は不明確で、人権侵害の恐れが否めない。
評価取得のため、企業の上司からの指示を事実上強制される状況も想定される。だが、調査を拒否したり、適性が認められなかったりした従業員が、不当な解雇や配置転換などを被らないか保障されていない。権利保護の仕組みづくりが求められる。
情報漏えいには5年以下の拘禁刑などの罰則を伴っており、政府の管理体制も問われよう。
衆院では運用状況を毎年国会に報告するよう修正を加え、野党の多くも賛成して可決された。
特定秘密保護法でも同様の仕組みを導入しているが、そもそも政府の情報開示が不十分な上、国会の審査会が秘密の開示を求めても政府側が拒む例が相次ぐ。
国会が運用改善を求める「勧告」は、同法の制定から昨年までの10年間で海上自衛隊の漏えいに対する1件にとどまる。しかも強制力が伴わず、限界は明らかだ。
なし崩しで機密の対象や範囲が広がる懸念への歯止めには、実効性のある監視体制を担保することが必要ではないか。
参院では法案の不透明な内容と問題点を掘り下げ、国民の疑念に応える見直しを求めたい。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
社説:「育成就労」法案 看板かけ替えなのでは
京都新聞 / 2024年4月25日 16時0分
-
経済安保法案、参院で審議入り 身辺調査導入、「知る権利」懸念
共同通信 / 2024年4月17日 12時4分
-
マスコミ労組、経済安保法廃案に 表現の自由を脅かすと声明
共同通信 / 2024年4月12日 15時33分
-
経済安保新法案が衆院通過 民間人身辺調査拡大へ、国会監視
共同通信 / 2024年4月9日 18時29分
-
経済安保新法案が衆院通過
共同通信 / 2024年4月9日 14時3分
ランキング
-
1〈速報・那須2遺体〉“全身刺青”の宝島さん娘の内縁の夫が逮捕「何見てんだよ」とポルシェのオープンカーでライバル店に横づけ挑発…「彼はチンピラでした」「ほとんど亡くなった奥さんの命令で動いてた」
集英社オンライン / 2024年5月7日 1時17分
-
2「幼少期から酷い言葉を投げられることもあった」安達祐実(42)が週刊文春だけに語った実母への“絶縁宣言”
文春オンライン / 2024年5月7日 17時0分
-
33か月後に再び来店“万引き犯”…店はマークしていた 札幌の53歳女逮捕「やっていません」
STVニュース北海道 / 2024年5月7日 9時17分
-
4【中継】娘の内縁の夫が“首謀者”か 知人ら2人を死体損壊疑いで逮捕 那須夫婦遺体
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月7日 11時42分
-
5立て続けに自宅被災の珠洲市民、6割が再建の意欲低下…仮設住宅の女性「また被災するかも」
読売新聞 / 2024年5月7日 8時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください