社説:みどりの日 プラごみ汚染の対策を急げ
京都新聞 / 2024年5月4日 16時0分
森は川を通じて海も育み、それらの恩恵を日々、私たちは受けている。きょうは「みどりの日」。豊かな自然を守り続けるため、身近なところから暮らしの在り方を考える。
若狭湾に突き出た大浦半島が校区の大浦小(舞鶴市)。児童たちは授業で、海岸に漂着した微小な「マイクロプラスチック」の回収活動に取り組む。収集物からアクセサリーなどを作って展示し、漁業にも悪影響を与える海の現状を伝えている。
身近な地域で、マイクロプラ汚染が深刻化している。環境ベンチャー企業が2020年度に実施した調査によると、京都府や滋賀県を含む16都道府県の港湾や湖、川など調査地点のうち約9割で確認された。
国連環境計画(UNEP)の推計では、20年に世界で2億3800万トンのプラごみが発生し、1億700万トンが陸や海の環境中に流れ出た。50年には海中のプラの総重量が魚の総重量を超えるとの予測もある。
流出したプラスチックは分解されにくく、劣化や波、紫外線で壊れてできるのが、大きさが5ミリ以下のマイクロプラだ。
エサと間違えて魚が食べ、それを人間が摂取することになり、環境問題だけでなく、蓄積による人体への影響も懸念される。最近の研究で、雲や雪からも発見された。大気中から人体に取り込んだ場合の影響はより大きいとの専門家の指摘もある。対策や解明が急務だ。
国連環境総会ではプラ汚染に対処するため、24年末までに法的拘束力のある国際条約作りに向けた協議が進む。
だが、どこまで厳しい規制を盛り込むか各国の隔たりは大きい。先月末、カナダで開かれた政府間交渉委員会の第4回会合では、欧州連合(EU)やアフリカ諸国が世界共通でプラスチックの生産・流通制限を盛り込むよう主張したのに対し、原料となる石油を産出する中東諸国やロシアは反対姿勢を示した。
日本は一律の生産規制には反対し、各国の状況に応じた規制を求め、リサイクルなどを軸に対策を進めるべきとする。
昨年の先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で、日本は議長国としてプラごみの新たな海洋汚染を40年にゼロにすることで合意をまとめたはずだ。
国際条約作りに向けても、日本は各国の溝を埋める思い切った提案と交渉により、議論を主導してほしい。
日本では亀岡市がプラ製レジ袋の提供を禁止する条例を制定した。国もレジ袋を有料化したが、他の使い捨てプラ製品の削減策がおぼつかない。
プラごみの分別回収は進むものの、そのほとんどは燃やされているのが実態である。大量生産、大量消費、大量廃棄を見直し、規制も視野に入れた踏み込んだ対応を求めたい。
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