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社説:電源構成計画 再エネ拡大に集中せよ

京都新聞 / 2024年5月17日 16時5分

 脱炭素と持続可能な電力需給の両立こそ求められよう。

 経済産業省は、電力政策の羅針盤となるエネルギー基本計画の見直し議論を始めた。2040年度の電源構成目標を盛り込み、本年度内の取りまとめを目指す。

 国際公約である「50年に温室効果ガス排出量を実質ゼロ」の方針達成に向け、道筋が問われる。

 政府が積極活用に政策転換した原発は、安全性などの課題を抱えたままで解決策になりえない。主力電源として再生可能エネルギーを拡大する思い切った目標と施策を打ち出す必要がある。

 基本計画は3年ごとに見直される。21年策定の現計画は、ウクライナ危機や円安進行で火力発電燃料費が高騰し、日本は大幅な貿易赤字と電気代値上げに直面した。

 30年度の電源構成目標で火力は41%だが、実際は他電源を補って約70%に上る。温室ガス排出の多い石炭火力に国際批判は強く、日本を含む先進7カ国(G7)は35年までの「脱石炭」で合意した。

 見直しの焦点は再エネの大幅上積みである。現目標36~38%に対し、22年度は22%にとどまる。太陽光発電などは気象条件による変動対応が不十分で、稼働停止を電力会社が求める「出力制御」が頻発している。無駄なく活用する送電網などの増強が急務だ。

 大規模ソーラーの開発や設備劣化による環境影響を抑えつつ、窓ガラスなどに幅広く設置できる薄型の「ペロブスカイト太陽電池」や浮体式の洋上風力発電といった新技術で積み増しを図りたい。

 電力消費の抑制も欠かせない。東日本大震災後の節電呼び掛けから減少基調だが、人工知能(AI)用データセンター新設などで大幅増に転じるとの業界見通しがある。省エネの技術・設備普及を加速せねば脱炭素は遠ざかる。

 気になるのは岸田文雄政権の原発回帰だ。22年末、脱炭素を理由に「最大限の活用」へ転換し、新増設や60年超運転も打ち出した。

 ただ、東京電力福島第1原発の過酷事故を踏まえ、安全性への国民の不信感は根強い。事故後の再稼働は12基で、構成比目標20~22に対し実績は6%にとどまる。

 1月の能登半島地震は、原発周辺の道路寸断や住宅倒壊で避難計画の不備を露呈させた。核ごみ処理の見通しも立っておらず、依存は非現実的だ。現計画の「可能な限り低減」を変えるべきでない。

 持続可能な将来に向けた再エネ拡大の世界的潮流に資金と技術、人材を集中させることが肝要だ。

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