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『原神』『崩壊』シリーズなぜここまでヒット? miHoYo・HoYoverse急成長の秘密 ゲーマー視点で分析

マグミクス / 2023年11月24日 9時10分

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■miHoYo・HoYoverse成功のカギは「見た目」にあり!

 ここ数年、「miHoYo」や「HoYoverse」といった名前を、ゲームファン以外が耳にする機会が急増しています。ご存じの方には説明するまでもありませんが、「miHoYo」は多くのゲーム作品を生み出してきたメーカーです。そして、同社のコンテンツを扱う新ブランドとして、2022年に「HoYoverse」が立ち上がりました。

 その名が一躍広まったのは、とあるゲームの大ヒットがきっかけです。その規模は世界的と称してもよいほどで、以前から関心を寄せていたゲームファンのみならず、ゲーム企業以外からの視線も集め、エンターテイメント業界全体から注視されるほどの躍進を見せています。

 miHoYoとHoYoverseがどのような活躍を遂げ、その名を知らしめたのか。その動きに触れてきた一ゲームファンの視点から、当時の印象などを含めて振り返ります。

●2011年に立ち上がった「miHoYo」

 miHoYoは中国にあるゲームメーカーで、設立は2011年(日本法人は2015年設立)。歴史という意味では、まだ10年ちょっとの比較的若いメーカーです。また、初期の作品『崩壊学園』は中国内向けの展開だったため、当時のmiHoYoを意識していた日本のゲームファンはほんのわずかで、大半はその名前すら知りませんでした。

 2015年にようやく、続編の『崩壊学園2』が日本向けにも配信され、このタイミングでmiHoYoを知った人もいました。ですが、日本国内での活躍はまだ先駆けといったところで、その名が大々的に広まるのはまだ少し先の話です。ちなみに『崩壊学園2』の日本向けタイトルは、『崩壊学園』。国内では初上陸のタイトルだったため、シリーズ2作目ながら「2」が外されています。

『崩壊学園』公式PV「崩壊決別」より。全世界ダウンロード数が3000万を超えており、今もなお愛されている

●日本に上陸し、『崩壊3rd』で足がかりを作る

 この日本版『崩壊学園』のリリースを足掛かりに、2015年に日本法人を立ち上げ、miHoYoの日本国内に向けた展開が本格化します。そして2017年に配信された『崩壊3rd』をきっかけに、より多くの国内ゲームファンに知られるようになりました。

『崩壊3rd』は、前作の設定などを受け継ぎながら、新たな作品としてブラッシュアップされたゲームです。特に大きな違いは、2Dから3Dへの移行でしょう。前作のバトルは、デフォルメキャラを動かす2Dの横スクロールアクションでしたが、『崩壊3rd』は7~8頭身のキャラクターを操作する3Dアクションに変化しました。

 昨今ではごく普通に見られるようになりましたが、「アニメ調で描かれた美しい3Dモデル」を「滑らかに動かすアクションゲーム」は、決して楽なハードルではありません。しかも、家庭用ゲーム機やPC向けならともかく、2017年時点のスマートフォンの性能で動く、さらに基本プレイ無料のゲームとなれば、当時の水準から見て稀有な存在と言っても差し支えないほどです。

 デフォルメキャラの3Dゲームや、頭身の高いキャラのRPGなどはありましたが、前述した全ての条件をクリアしているという点で、『崩壊3rd』は抜きん出ていました。また、キャラデザインそのものも秀逸で、質が高いのはもちろんのこと、日本人好みのビジュアルでゲームファンを虜(とりこ)とします。

 ちなみに、『崩壊3rd』と同じ年にサービスを開始した作品は、『ファイアーエムブレム ヒーローズ』『アナザーエデン 時空を超える猫』『アズールレーン』などがありました。いずれの作品も頭身の高いキャライラストを用意していますが、バトルの最中はデフォルメされたキャラが戦うスタイルです。

 当時の作品を並べると、頭身の高いキャラで3Dアクションを実現させた『崩壊3rd』が目を引いたのも、頷ける話でしょう。

●「見た目」に秀でていた『崩壊3rd』

『崩壊3rd』「月下の誓い・真紅の愛」宣伝PVより。デザイン性だけでなく、演出も磨きがかかっている

 誤解を恐れずに言えば、そのビジュアル──素晴らしい「見た目」が、『崩壊3rd』の知名度をあげ、成功に導く力強い理由となりました。

 このように表現すると、「見た目がいいだけなの?」と思われるかもしれませんが、ユーザーにダウンロードさせるほどの動機になる「見た目」は、強みとして十分すぎるほど。そして『崩壊3rd』が提示した見た目は、人を動かすほどの魅力をたしかに放っていました。

 もちろん、ゲーム性自体も良くまとまっており、タイミングを合わせた回避による敵のスローモーション化、心地よい連続攻撃、爽快感のある演出も伴うスキルなど、アクションゲームに欲しい要素は十分以上に揃っています。

 ですが、どれだけ優れたゲームであっても、触ってもらえなければその魅力は伝わりません。特に、スマホ向けの基本プレイ無料ゲームはライバルが多く、いかにダウンロードしてもらうかが重要です。

 この大事な第一歩を、『崩壊3rd』は「見た目」の強みで押し切りました。その狙いが正しかったのは、サービスが7年目に突入し、メインストーリー第2部の実施が予告されている現状からも明らかでしょう。

 作品単体で見ても成功と言える『崩壊3rd』ですが、「miHoYo」の名を業界すら超えて轟かせた作品へと繋ぐ、重要な役割も果たしました。なお、この時点ではまだ「HoYoverse」は設立されていません。

■サービス開始からわずか2週間で、開発費を回収したと思われるビッグタイトル

『原神』正式サービス開始前のゲームプレイトレーラーより。日本のゲームファンにも響くビジュアルは、さらに磨きがかかった

●世界を驚かせた、基本プレイ無料のオープンワールドRPG『原神』

 miHoYoの名を一躍知らしめた立役者といえば、2020年にサービスを開始した『原神』でしょう。『崩壊』シリーズで培われてきた魅力的なデザイン性は本作でも十分に発揮され、キャラクターたちはもちろんのこと、幻想的な世界観を描くグラフィックは見る者の目を奪いました。

『崩壊3rd』は、「アニメ調の美麗な3Dモデル」と「滑らかなアクション」を基本プレイ無料のスマホゲームで2017年に確立させ、注目を集めました。そしてこの『原神』は、3Dモデルにいっそう磨きをかけ、多彩なアクションも用意。さらに、オープンワールドという舞台まで実現させました。

 買い切り型のゲームなら、家庭用ゲーム機向けやPC向けで近い条件を満たす作品は存在します。しかし、基本プレイ無料でこれだけの条件を2020年にクリアしたゲームとなると話は全くの別物です。

 アニメ調の3Dモデルで、アクション性が高く、オープンワールドの基本プレイ無料という点でみると、『ファンタシースターオンライン2 ニュージェネシス』を思い出す人もいるでしょうが、こちらの作品がサービスを開始したのは2021年なので、『原神』の約1年後です。他作品の一歩先を行くmiHoYoの動きは、この『原神』でも健在でした。

●ケタ違いの成功を見せた『原神』の売り上げ

『原神』公式PV「罪人の円舞曲」より。Ver4.2で実装された「フリーナ」のビジュアルとアクションも完成度が高い

 これだけの地力を備えた『原神』は開発費なども相応で、リリースされるまでに100億円かかったとも報じられていますが、サービス開始からわずか2週間ほどで回収したと思われる点も驚くばかりです。またSensorTower調べによれば、『原神』の2021年売り上げ額は約18億ドルと、立ち上がりだけでなくその後の人気も揺るぎないものでした。

 ちなみに2021年といえば、アニメ人気を弾みに一躍大ヒットを記録した『ウマ娘 プリティーダービー』がリリースされた年でもあります。こちらも同調査によると、同年の売り上げは約9億6500万ドルとのこと。国内で一大ブームとなった『ウマ娘 プリティーダービー』も相当な売り上げですが、ざっと2倍を叩き出した『原神』がどれだけ躍進したのか、想像に難くないでしょう。

「ゲームの面白さ」と「売り上げ」は必ずしもイコールではありませんが、密接した関係にあるのも事実です。また、基本プレイ無料のゲームは、ユーザーを惹きつけ続ける魅力がなければ大きな収益には繋がりません。

●miHoYo・HoYoverse成功の要因は「萌えの再生産」

『原神』がなぜ、これほどの支持を集めたのか。プレイしたユーザーの数だけその理由はあるかと思いますが、ひとりのゲームファンとして感じたのは、やはりその「見た目」だと考えています。

 過去作で積み上げてきた実績と経験を活かし、『原神』のデザインやビジュアルはさらに洗練されました。しかも今回はオープンワールドを採用し、美しい世界が見渡す限り続く壮大さも加わり、ゲームファンの度肝を抜きます。

『崩壊3rd』や『原神』を成功に導いた「見た目」の魅力を言語化するならば、筆者は「萌えの再生産」と捉えました。昨今あまり使われなくなった「萌え」という言い回しは、明確な定義が難しい言葉ですが、本記事ではアニメやマンガ、ゲームなどで培われてきた「日本のエンターテイメントから生まれた、独特の可愛さやデザイン性」を示す言葉として使用させていただきます。

 視覚的な可愛さは、育った文化によって傾向が大きく変わります。そのため自国の「可愛い」が他国でもウケるかどうかは分かりません。ですが日本発祥の「萌え」は、相性こそあれ海外でも一定数の支持を得て、アニメやマンガなどが高く評価されました。なかには、こうした日本産のエンターテイメントに刺激されて来日したり、クリエイターを目指す人も出たほどです。

 実はmiHoYo自体も、日本のオタク文化に魅了された初期メンバーが立ち上げたもの。当時は受け手として「萌え」を味わい、育った人たちが、今度は作り手に回ったのです。

 こうした構図自体は、ゲーム業界だけに限っても、そう珍しい話ではありません。しかし特筆したいのは、「萌え」に触れたmiHoYoのメンバーたちが、新たな「萌え」を発信した点です。

「可愛さ」の基準が違う文化で育ったうえで、他国で培われた「萌え」の魅力を正確に理解する。これだけ見ても、miHoYoが優れたアンテナと視点を持っていることが分かります。そのうえで「萌え」を消化し、自分たちの内側から新たなデザインやキャラクターを生み出したこと──「萌えの再生産」こそが、『崩壊』シリーズや『原神』を成功に導いた最大の要因だと睨んでいます。

「萌え」を模倣するだけなら、それほど難しくはありません。しかし、模倣はあくまで模倣に過ぎず、オリジナルのデザインやキャラクターによる「萌え」を生み出すには、本質への理解なしには到底不可能です。

 例えば、可愛いキャラのイラストを模写できても、人体の骨格を理解していなければ、ポーズの違うイラストを新たに描くことは無理でしょう。それは「萌え」も同様で、魅力の本質を理解しなければ、再生産のレベルは著しく下がります。ですがmiHoYoは、非常に高い理解度で「萌え」を消化し、『崩壊』シリーズや『原神』で見事な昇華を見せました。

●miHoYoとHoYoverseの猛攻は、最新作『ゼンレスゾーンゼロ』に続く

『ゼンレスゾーンゼロ』「吸音テスト」ティザーより。アクションシーンの一瞬を切り取っても、これだけクオリティが高い

『原神』の大成功もあり、miHoYoのコンテンツを扱うブランド「HoYoverse」が2022年にスタート。会社の規模が飛躍的に大きくなるなか、体制の整備も徹底し、各作品がさらに力をつけていきます。そして2023年には『崩壊:スターレイル』を投入するなど、攻め続ける姿勢は今現在も変わりません。

『崩壊:スターレイル』もやはり、その「見た目」が持つ強みは圧巻の一言。実際に触れた経験がある人は、センス溢れるデザイン性や、そこから紡ぎ出される魅力的なキャラクター描写に驚愕したことでしょう。その衝撃と同じものが、2020年の『原神』、2017年の『崩壊3rd』の時にも起こったのです。

 発祥ゆえに、日本のクリエイターが一歩先んじていた「萌え」という強みを、他国の文化圏にいながら獲得したmiHoYoとHoYoverse。『崩壊』シリーズは今なお愛されており、『崩壊:スターレイル』の出足も好調です。『原神』はもはや絶対的な看板ですし、今回は触れていませんが女性ゲーマーを狙い撃った『未定事件簿』など、その牙城はもはや崩しがたいほどです。

 さらに、『ゼンレスゾーンゼロ』という次なる矢も控えており、同社の躍進は留まるところを知りません。「萌えの再生産」は今後も強力な武器となって、日本国内や海外を席巻することでしょう。

* * *

※記事中の名称などは全て日本向けの表記で統一しています。

(臥待)

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