『ドラクエ2』最初からサマルトリア王子が最強だったら? 再現可能だが準備が苦行すぎ!
マグミクス / 2024年1月27日 21時40分
■不遇なサマルトリアの王子を活躍させたい!
1987年1月26日にファミコンで発売されたRPG『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』は、「勇者ロトの子孫が統治する3つの国の王族が協力し、世界を破滅させようとする大神官ハーゴンを討伐する旅に出る」というストーリーでした。
ドラクエシリーズ、そしてRPGというゲームジャンルの人気そのものを押し上げた名作の「誕生日」を記念して、何かと弱いことで有名だった「サマルトリアの王子」を主役とした、なりきりプレイ記事を書いていきます。
サマルトリアの王子は、最初のファミコン版で普通にプレイすると「強い武器は装備できないので、通常攻撃は弱く、攻撃魔法も全然覚えず、回復魔法も微妙」なので、「いらない子」扱いまでされてしまうという、気の毒なキャラクターです。
他のナンバリングタイトルに比べて『ドラクエ2』のゲームバランスが厳しいこともあり、強い攻撃手段を持たないサマルトリアの王子の弱さがより際立つ仕様でした。しかし、実は彼は「大器晩成」キャラクターでもあります。今回は、「サマルトリアの王子だけ、いきなり最強だった件について」というコンセプトで、名誉挽回のプレイを進めていきます。
『ドラクエ2』は、主人公であるローレシアの王子の名前しだいで、サマルトリアの王子とムーンブルクの王女の名前が自動的に決まります。裏技で変更もできますが、今回はサマルトリアの王子が主役なので、変更せずともカッコイイ名前にしたいところです。
試行錯誤した結果、ローレシアの名前を「あすあ」にすれば、サマルトリアが「カイン」、ムーンブルクが「マリア」となることが分かりました。いい感じです。
というわけで、冒険開始。コンセプトが「サマルトリアの王子だけ、いきなり最強だった件について」なので、ローレシアの王子アスアをレベル1スタートにすべく、逃げ続けてサマルトリアの王子カインを仲間にします。そして、毒の沼地でアスアをHP0にしました。これでカインによる1人旅の準備ができました。あとはレベルを上げるだけです。
『ドラクエ2』はRPGなので、プレイヤーの数だけ物語があります。なぜカインがひとり旅をするのか、筆者の脳内ストーリーを書いていきます。
* * *
僕はカイン。サマルトリアの王子。この国の南にあるムーンブルクが大神官ハーゴンの軍勢に蹂躙(じゅうりん)されてから、父王は「勇者ロトの子孫である我が王家は、ローレシア、ムーンブルクと力を合わせて、世界の危機に立ち上がらねばならぬ!」と言い出した。
僕は覚悟できているけれど、妹のリルムはダメだ。あんな可愛くて、ふわふわしていて、甘えん坊な生き物が、魔物と戦えるわけがない。父王に「ロトの子孫全員がハーゴン討伐に出て、もし討ち取られたら、世界の希望は絶えてしまいます! 僕だけでいいです」と力説して、僕だけが冒険に出る許可を取り付けた。
リルムが「わたしもローレシアの王子アスア様を助けて、冒険に出たい!」というから「ダメだよ。お前は」と返したら「お兄ちゃんのいじわるうっ!」と頬を膨らませてきた。
いじわると言われようが、こんな可愛い妹を冒険になど出すものか! ましてや、アスアとの旅なんて論外だ。あいつはロトの子孫なのに、魔法を軽んじて剣ばかり振っている粗忽(そこつ)者だぞ。あいつの何がいいんだ。まったく。
そんなことを考えていると、リルムが寝間着姿で部屋にやってきた。何度「はしたない」と窘めても、全然改まらない。もう13歳なのに。何と注意したものか。
「お兄ちゃん、あたし、悪い夢を見たの」
いつになく、真剣な口調だった。話を聞くと、僕がアスアや、ムーンブルクの王女マリア姫と旅をしている夢らしい。
「リルムがそこにいないなら、いい夢じゃないか」
「ふざけないで! お兄ちゃんは、剣も魔法も弱くて、みんなの足を引っ張っていて……あげくの果てにハーゴンの呪いを受けて、宿屋で倒れてしまったの!」
「前言撤回。ひどい悪夢じゃないか……」
「ハーゴンが呪いをお兄ちゃんに向けているのは間違いないわ。感じるもの」
リルムもロトの子孫だ。秘められた魔法力は僕よりも高い。妹が言うなら、そうなのだろう。
「だから、あたし。お兄ちゃんの呪いを、祓(はら)ってあげるね」
有無を言わさず、リルムは僕の額に手を当て、ロトの聖なる力を解き放つ。背中に羽が生えたように、体が軽くなった。
そう言われてから数日後、僕はハーゴン討伐の冒険に出た。色々あって、ローレシアの王子アスアと合流できたのだけど、宿屋で祝杯を挙げていたら、アスアが倒れてしまった。
僕はアスアを棺に入れて、サマルトリアの城に連れていった。
リルムが仮死状態となったアスアを見るなり、泣きながら言う。
「呪いを受けているわ……。ハーゴンはアスア様にも呪いをかけていたのね……。あたしがお兄ちゃんの呪いを吹き飛ばしたから、アスア様がふたり分の呪いを受けてしまったのよ」
「僕の分まで呪いを?」
「あたしでもふたり分の呪いは跳ね返せないわ。でも……ひとつだけ方法があるかも」
「どうすればいい」
声に力がこもった。アスアは粗忽(そこつ)者だが、いい奴だ。このままにはしておけない。妹の泣き顔も、いつもの笑顔に変えたかった。そのためなら、何でもしたい。
「……お兄ちゃんが、強くなればいいの。ハーゴンの呪いを受けないほどに。そうすれば、ふたりの呪いがお兄ちゃんに戻っても、ふたりとも助かるわ」
「わかった。でさ、リルム」
「なに」
「今回のことは、ハーゴンが悪い。呪いを払ったお前には、感謝しかないよ。僕が、弱かったから、呪いを受けただけ。絶対に、強くなるから、気にやまないで」
僕はそういって、落ち込む妹の頭を撫でた。
* * *
というわけで、カインを最高レベルの「45」まで上げることにします。
スライムやおおなめくじを倒してレベルを上げ、武器を「くさりがま」に買い替えてさらにレベルを上げます。泣くほど弱い……。『ドラクエ2』では仲間が死んでいても、もらえる経験値が増えることはないので、気の遠くなるほど戦闘を重ねて、ようやくレベル18に。
ここで初めて、全体攻撃呪文「ベギラマ」を覚えます。普通にプレイすると、25ダメージ前後の威力しかないので「他の仲間に止めを刺させるために削る」という使い方をする攻撃呪文なのですが、ムーンペタ周辺の敵まではほぼ一撃で全滅させられるので、レベル上げが進みます(ベギラマを覚えないと危険で、ムーンペタ周辺では戦えません)。
■棺をひきずりながらレベルを上げ、「子犬」と出会う
ローレシア王子をレベル1のままにしてサマルトリア王子のレベル上げを行いたいので、ひたすら棺を引きずり続けることに
初めて到着したムーンペタでは、脳内ストーリーがはかどります。
* * *
僕はローラの門を抜けて、ムーンブルクの領内に足を踏み入れた。仮死状態となったアスアを入れた棺を引きずっているうちに、少しは腕力もついたようだ。
リルムによると、ふたりが離れると後で呪いを解けなくなるらしいので、アスアを連れていくしかない。新しく覚えたベギラマで、多くの敵を薙(な)ぎ払って進む。
しかし、生き残ったマンドリルの一撃を受けて、全身が痛んだ。魔法力がなくて、傷も癒せない。ムーンペタの町に入ると、緊張が切れて、僕は倒れこんだ。
棺とともに倒れた僕を不審がり、町の人が遠巻きに見ているなか、美しい子犬が僕のところに駆け寄ってきた、心配そうに僕を見て、傷口を舐めて、癒そうとしてくれる。不思議なことに、少し痛みが引いてきた。
「……大丈夫だよ。僕は勇者ロトの子孫だから、これくらいじゃ、死なないさ」
「くーん、くーん」
子犬は首を横に振った。
「人間の話がわかるの? 君は優しいだけじゃなくて、頭もいいんだね。……きっと、立派な人のところで暮らしていたんだろう。ハーゴンがこの国を滅茶苦茶にしたから、飼い主とはぐれてしまったのかな? こんなに痩せて、可哀そうに……」
僕は何とか立ち上がり、宿屋に向かった。そして、宿屋の主人に「料金をもうひとり分支払うから、この子にも食べ物を作ってあげて」と言う。
子犬はびっくりして、首を横に振る。僕は微笑んで、子犬を撫で、目線を合わせた。吸い込まれそうなほど、美しい瞳をしている子犬だった。
「聞いて? 僕はこの国を解放しに来たんだ。もう、何も奪わせない。君からもね」
頭のいい子犬は、深く深く、何度も僕に頷いた。
* * *
子犬と関わったところで、ムーンブルク城でレベル上げ開始です。ベギラマで大抵の敵は倒せるのですが、リビングデッドとメタルスライムは避けて通ります。
リビングデッドはベギラマ3発が必要なので、消耗が激しすぎますし、メタルスライムはほぼダメージが通らないうちに、敵のギラの呪文でこちらが倒されるからです。
単調な作業なので、ラリホーアントやリザードフライが、1/8の確率で落とす「ふくびきけん」で福引を回して、退屈をしのぎます。
福引を数百回も回すと……出ました! 1等「ゴールドカード」! 定価の25%引きでアイテムを買えます。この時点で買える最強装備をすでにそろえているので、何も買うものがないのですが。
というわけで脳内ストーリー。
* * *
美しかったムーンブルク城は、破壊されて見る影もなかった。城内には亡霊がさまよい、無念の思いを訴えていた。僕は怒りを込めて魔物を討伐し続ける。
城内で出会ったムーンブルク王の亡霊は「我が娘、マリアは呪いで犬にされた」と無念を訴えていた。幼いころ、この城に来たときに、転んで怪我をした僕に駆け寄って、ベホイミをかけてくれた女の子がいた。それがマリア姫との出会いだった。
そこで気づく。倒れていた僕に駆け寄った子犬の所作が、マリアと重なることに。
ムーンペタに戻った僕は、子犬のところに急いだ。子犬は宿屋の主人が世話をしてくれて、すっかり元気になっていた。僕の無事を喜んで、駆け寄ってくる。
「ねぇ、マリア」
そう子犬に呼びかけた。子犬はひどく驚いた顔をした。
「やっぱり、君がマリア姫なんだね」
そう言うと、子犬の目から涙が溢れ、こぼれ落ちた。僕は子犬を抱え上げ、一緒に泣いた。
「君の振る舞いが、マリア姫に似ていたんだ。そして、ムーンブルク城で王様の亡霊が『娘が呪いで犬に変えられた』と言っていた。僕は、ロトの子孫にかかる呪いを解く旅をしている。君の呪いも解く方法を見つけるよ。絶対に」
子犬……マリアは、何度も僕に頷いた。
翌日から、マリアは街中を歩く僕に付いてくるようになった。福引所を通ったので、マリアに話しかける。
「ちょっと福引して行こうか。今日は何かいいことがある気がするから」
福引機を回すと、太陽のマークが揃う。
「やったよマリア! 1等賞だ」
ゴールドカードを握りしめて、僕は子犬に言った。ちょっぴり嬉しさがこみあげてくる。マリアの存在に気づけたことに、精霊ルビス様が祝福をくれた気がした。
* * *
とはいえ、ゴールドカードがあっても、レベル上げは楽になりません。転機は33レベルになった時。通常攻撃がメタルスライムに通るようになったのです。33レベル時点の経験値は38万。目標100万なので、遠い道のりですが、狩りの効率が上がります。
サマルトリア王子が最大レベルに達してから、ムーンブルク王女を救出して仲間に加える。これで再現プレイの準備が整ったことになる
メタルスライムを狩るうちに「てつかぶと」もドロップしたので、棺のアスアに被せておきました。そして、ようやく最高レベル45に。これでストーリーが進められます。
* * *
ムーンブルク城をくまなく探索した僕は、外壁から入れる隠し部屋に気づいた。食糧を貯蔵した地下室が見つかる。
そこで生き残っていた兵士は「姫様は、呪いで姿を変えられて、どこかの町に……。姫の呪いを解くには、真実の姿を映すというラーのかがみが必要です!」と僕に訴えた。
騎士の亡霊が、ラーのかがみの場所を教えてくれた。沼地に沈む、ラーのかがみをつかむと、僕はルーラでムーンペタの町に戻った。
呪いを払うラーのかがみ。その魔力に触れた僕は、今ならアスアの呪いも祓える気がした。集中して復活呪文「ザオリク」を、アスアに施す。仮死状態のアスアに生気が宿り、ふたり分の呪いが僕へと戻るが、限界まで鍛えた今の僕には通用しない。呪いが消し飛び、アスアが目覚めた。
「んっ……カインか。随分よく寝たなぁ。ここはどこだ?」
アスアが僕に話しかけてきた。人の気もしらないで、呑気な奴だ。
「ていうか、お前、本当にカインなのか。見違えたぞ」
無数の戦闘を乗り越えた僕を見て、アスアが驚く。
「君の呪いを解くためには、自分を限界まで鍛えるしかなかった。詳しいことは後で。もうひとり、呪いを受けた人がいる。少しでも早く、救いたいんだ」
アスアの返事を待たずに、町はずれに急いだ。ラーのかがみで子犬を写すと、鏡が砕け散る。ハーゴンの本拠地ロンダルギアに近い、この地での呪いはそれだけ強力なのだ。
でも、鏡の力が呪いに勝った。砕ける前に、鏡は真実の姿である、ムーンブルクの王女の姿を写し出し、実体化させていた。
「ああ、元の姿に戻れるなんて……。もうずっとあのままかと思いましたわ」
あまりにも美しい少女がそこに立っていて、僕は茫然とした。
「わたしはムーンブルク王の娘、マリア」
マリアは、アスアを見て、丁寧に自己紹介する。こんなに待たせて、ごめん。涙が止めどなくあふれ出てくる。
「わたしを、貴方がたの仲間にしてくださいませ。共に戦いましょう!」
泣いている僕の手を取って、マリアはそう言った。
* * *
というわけで、ようやく3人がそろいました。今回のプレイを記録した「ふっかつのじゅもん」は以下の通りなので、興味がある人は遊んでみて下さい。
べへお おびり よもやも
やぴぷ ぺぽけ ぐかめの
めまぷ せにあ からきし
ぐへべ とふぽ ざろるれ
ろわぐ たおに
換金用に「はがねのたて」を沢山持たせていますが「最初からサマルトリアだけ最強」というコンセプトなので、「ぎんのカギ」すら取っておらず、イチから冒険できます。
次回は、この状態で3人がいよいよ冒険に出ます。お楽しみに。
(安藤昌季)
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