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名作が続々映画&ドラマ化! 「ゲーム実写化」の明暗を分ける要素とは?

マグミクス / 2024年5月10日 21時25分

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■成功した「ゲーム実写化」要因はどこに?

 近年、ゲーム業界の成長は目覚ましく、累計売上本数1000万本を超える大ヒット作が続々、登場しています。そのようなゲームの魅力をこれまでリーチしていなかった層にまで展開しようと、人気作を実写映画/ドラマ化する動きが盛んです。ただこれまで、原作ゲームのヒットに反し、決して成功とはいえない作品も見られました。成功する作品とその条件とはなんなのでしょうか。

●『Fallout(フォールアウト)』

  2024年4月11日にAmazon Prime Videoで配信が始まったドラマ『Fallout』は、公開から2週間もしないうちにシーズン2の制作が決定するほどの大人気作です。米ベセスダ・ソフトワークス社による原作ゲームの要素をほとんど改変せずに取り入れているのが特徴で、本来なら不自然に見えてしまうようなゲーム的描写も「圧倒的なクオリティの暴力」と俳優の演技力、練り込まれた脚本で違和感なく見せてくれます。

 その代表例が第1話の冒頭です。主人公の「ルーシー」は腹部を大型ナイフで刺されてしまい、致命傷のような深手を負ってしまいます。しかし彼女は謎の注射器を取り出して負傷箇所に注射し、包帯で止血します。そして何事もなかったかのように活動を再開しました。生々しくリアルな暴力描写とマンガのような手当ての落差は激しく、本来であれば「注射だけで傷が治るものか」と、ツッコミどころしかない演出でしょう。

 この注射器の正体は、ゲームに登場する回復アイテム「スティムパック」です。シリーズ第1話でこのような描写をするのは、本作がゲームに準じた解像度で描かれることを、ゲームのファンだけでなく、はじめて『Fallout』に触れた視聴者に強く印象づける意図があると思われます。

 このようなギミックはドラマの各所に見られます。多少の不自然感があってもゲーム的演出を避けず、高度な映像、演出技術で見せていく手法は、今後のゲーム実写化のスタンダードになるかもしれません。

●『バイオハザード』シリーズ

 CAPCOMの『バイオハザード』を原作とする実写映画は、2002年から2021年までに7作が公開され、累計で12億ドルの興行収益を上げている大ヒットシリーズです。前述の『Fallout』とは異なり、本作はゲーム要素をそのまま取り入れるのではなく、大幅にアレンジしている点が特徴です。

 生物兵器「T-ウイルス」を開発している「アンブレラ」社の研究施設で「バイオハザード(生物災害)」が発生する展開は原作ゲームに準拠していますが、それ以外はほとんど映画オリジナルです。ゲーム『バイオハザード』には、人体がサイコロのように切断されるレーザートラップや、人工知能「レッド・クイーン」は登場しません。それにも関わらず映画がヒットしたのは、原作ゲームの要素を抜きにしても、映画それ自体がアクション・ホラーとして面白かったためでしょう。

 原作ゲームから取り入れられるべき要素を「ウイルスが原因でゾンビや危険なクリーチャーが生まれる」という点だけに絞り、映画としての完成度を追求した姿勢が成功の要因だと思われます。

■振るわなかった実写化作品は何が足りなかったのか?

●『モンスターハンター』

こちらもミラさんが主演でしたね。映画『モンスターハンター』ビジュアル (C)Constantin Film Verleih GmbH

『バイオハザード』と同じく、CAPCOMの大ヒットゲームシリーズ『モンスターハンター』も、2020年にアメリカで実写映画化され、翌2021年に日本国内で公開されました。本作については厳しい反応が多く、検索エンジンにかけるとネガティブな関連語がサジェストされるほどです。興行的にも振るいませんでした。

 成功した『バイオハザード』と同様にアレンジ要素が強い実写映画化でしたが、明暗を分けたのは残すべき要素の取捨選択かもしれません。原作ゲームの面白さの本質的な部分を見誤った感があります。

 ゲーム『モンスターハンター』のファンは、アメリカ軍が異世界転移して巨大な毒グモの群れに翻弄されたり、未開人(トニー・ジャーが演じるハンター。名前は不明)が文明に驚く様子が観たかったわけではありません。これは映画の興行成績から明らかです。

 本当は、さまざまな武器を操るハンターや、可愛い「アイルー」(ゲームシリーズでおなじみの猫型キャラクター)が、「ディアブロス」や「リオレウス」などのモンスターと戦うシーンを見たかったに違いないのです。

 原作ゲーム『モンスターハンター』の魅力はハンティングである、という点さえ見誤っていなければ、『バイオハザード』と同じように大幅なアレンジをしても成功したように思えます。ディアブロスの突進にぶっ飛ばされて瀕死になったハンターが、回復薬で即座に元気になる描写があっても、『Fallout』の「スティムパック」の描写が受け入れられたように、みんな納得したでしょう。

●2度目で「マリオ」が成功した理由

 シリーズ累計5億6000万本を超え「最も売れたゲームシリーズ」としてギネス認定されている『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂)も、1993年に公開された実写映画『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』の興行成績は厳しい結果に終わりました。おじさん「マリオ」のアクションにはリアルな重力が感じられ、シリーズのアイコンともいえる「キノコ」は菌糸を伸ばして生々しく、「ヨッシー」は小型恐竜そのもの、逆に「クッパ」は人型でした。

 ファンは映画でもキノコや「スター」でパワーアップし、軽快に走り回る「ゲームのマリオの世界」を求めていたのです。だからこそ、それらが全部盛り込まれた2023年の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、13.6億ドルもの大ヒットになったのでしょう。実写とフルCGアニメという違いはありますが、明暗を分けたのは表現技法ではなくコンテンツにあると思われます。

 これらの傾向からは、マルチメディアに展開する際、作品のエッセンスとなる部分を見抜くことの重要性がわかります。原作者は制作者であるために、かえって自分の作品の良さが見えていないことがあるのです。

 ゲームを実写化(映画化)する際は、客観的な評価をリサーチし原作のエッセンスさえ残せば、原作ファンを満足させつつ、新規ファンを獲得できるのではないでしょうか。今後も映画化だけに留まらず、人気作品のメディアミックスは増えていくでしょう。

(レトロ@長谷部 耕平)

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