晩年はずっと膝に乗せて生活「重かったけど愛おしい思い出」 猫派だった飼い主が保護犬カフェで出会ったシニアの中型犬を見送るまで

寝たきりだけど、可愛い表情を見せてくれる＝aichan_0603さん提供

迷子犬あいちゃん

あいちゃん（14歳・メス）は、2020年5月12日、茨城県牛久市さくら台にて収容後、茨城県動物愛護センターに移送された。当時の推定年齢は7〜8歳くらいで、穏やかで大人しく、全く吠えることがなかったという。

2020年6月8日、NPO法人アルマさんに引き出され、預かりボランティアをしている、保護犬カフェ紫陽花で暮らすことになった。後に里親になったRさんによると、

「最初は迷子犬として収容されたそうです。収容当時に赤い首輪をしていたことや、おすわり、おて、おかわりができたと記録にありますので、飼い犬だったのだと思います」

Rさんは猫が好きだったが、彼が大の犬好きで、保護犬カフェ紫陽花のInstagramをずっと見ていたという。

「始めは横から覗いていただけだったのですが、そのうち自分でもフォローして見るようになり、気づけば毎日保護っ子たちの様子を見るのが楽しみになっていました。彼は彼でお気に入りの子がいたのですが、私はシニアのあいちゃんに惹かれて、密かに応援していました。とても可愛らしいのですが、どこか哀愁が漂っていて寂しげだなぁと思って」

ある日、Rさんが保護犬カフェ紫陽花の投稿を見ると、カフェの保護っ子たちがおやつをもらいながらトレーニングしているところに、あいちゃんも入りたそうにしていた。

「様子を見てしばらく佇んでいて、結局入るのを諦めてしまいました。何を考えていたのかはわからないのですが、その時、ひとりっ子で思いっきり甘やかしてあげたいなぁ…と思いました」

猫派だったけど、一緒に暮らしたい

2021年11月7日、Rさんは「カフェに行ってみようよ」と彼に誘われて行ってみた。実際にあいちゃんを目の前にした時、嬉しくてドキドキしたという。

「アイドルの追っかけってこんな気持ちかな！？と。驚かせないようにそーっとそーっとなでなでさせてもらいました。わんちゃんと暮らしたことがなかったので撫で方もわからず、かなりぎこちなかったと思います（笑）。想像していた通り、ふんわり穏やかで優しい雰囲気でした。それから何度も会いに行くようになり、次第にお迎えして一緒に暮らしたいと思うようになりました」

ただ、Rさんは犬と生活した経験がない上、あいちゃんは既にシニアの中型犬だったので、紫陽花カフェのオーナーさんは心配した。すぐに介護をしなければならないことや、中型犬の介護はとても大変ということを話してくれたという。

お散歩ボランティアにならないかと提案され、約半年間、Rさんはほぼ毎日のようにあいちゃんの元へ通いつめ、一緒にゆっくりゆっくりお散歩をした。

「紫陽花さんに来ているトレーナーさんたちに、お散歩の仕方からブラッシングや歯磨き、トイレやごはん、運動の仕方など色々な事を教えていただき、本当にありがたかったです。お迎えへの自信にも繋がりました」

Rさんは、あいちゃんが環境の変化に適応できるだろうか、本当に幸せにできるだろうかと自問自答を繰り返しながらカフェに通い続けた。

「会う度に一緒にいたいという気持ちが強くなり、トライアルの申し込みを決意しました」

一緒に暮らせて幸せだった

2022年6月3日、あいちゃんはトライアルのためカフェのオーナーの車でやって来た。

「怖がって震えていたらどうしよう…と思っていたら、わりと堂々としていてほっとしました。我が家に到着した後は、あいちゃん仕様に敷き詰めた絨毯を踏みしめながら、部屋の中をグルグルと歩いてチェックしていました」

初日は警戒気味に部屋の隅で寝ていたあいちゃん。翌日からは用意していたハウスもベッドも使わずに、部屋のど真ん中で横になって寛いでいたという。

名前は、カフェににいた頃のままにした。

「みなさんにあいちゃん、と親しまれて可愛がられていましたし、私たちの中でもあいちゃんでした」

1年2カ月、Rさんと彼氏、あいちゃんは一緒に暮らした。晩年は1匹でいるのが不安になってきたのか、人の姿が見えないと探すような仕草をしたり、甘えてきたりするようになった。膝の上で寝るのが好きだったあいちゃん。2人はできるだけあいちゃんを膝に乗せて生活するよう工夫した。

「まあまあの重さでしたが、今となっては愛おしい思い出です。短い間でしたが一緒に暮らせて本当に幸せでした！あいちゃんにも、預かりボランティアをされている紫陽花カフェさんにも、保護してくださったアルマさんにも、本当に感謝しています」

（まいどなニュース特約・渡辺 陽）