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なぜJR宝塚線は運賃が高いのか!?…実は“めちゃくちゃ複雑”だったJR西の運賃体系 京阪神エリアの運賃体系を見直しへ

まいどなニュース / 2024年5月18日 15時0分

宝塚線は純然たる通勤・通学路線だが「幹線」だ

JR西日本は5月15日、京阪神エリアにおける新たな運賃体系を国土交通相に認可申請したことを発表しました。あまり日常生活において意識しているようで意識していない運賃体系。一体、どのような問題が存在するのでしょうか。そして、今日の運賃体系にはどのような背景があるのでしょうか。なお、当記事での運賃はJR西日本管区内に限ります。

京阪神エリアに4つの運賃区分が存在

JRの運賃は営業キロに応じて定められていますが、運賃体系は全路線同一ではありません。京阪神エリアですら大きく4つの運賃区分が存在します。その4つとは「大阪環状線内」「電車特定区間」「幹線」「地方交通線」です。

この中で最も運賃が安いのは「大阪環状線内」(大阪環状線・ゆめ咲線など)です。たとえば、営業キロ11~15キロですと、電車特定区間が230円なのに対し、大阪環状線内は210円です。大阪環状線内の次に安いのが電車特定区間です。36キロ~40キロですと、電車特定区間は660円、幹線は680円です。最も運賃が高いのは地方交通線です。

問題はどの路線区間がどの運賃区分に入るか、ということです。京阪神エリアにおいて、電車特定区間に属するのはJR京都線・神戸線京都~西明石、JR大和路線天王寺~奈良、阪和線、JR東西線、おおさか東線、学研都市線京橋~長尾です。

幹線に属する主な路線はJR神戸線・山陽本線西明石以西・兵庫~和田岬、JR宝塚線・福知山線、琵琶湖線、湖西線、嵯峨野線、奈良線、学研都市線長尾~木津です。

どう変わるのか…4区分→3区分へ

JR西日本京阪神エリアでは2025年4月から「大阪環状線内」を廃止し、「電車特定区間」「幹線」「地方交通線」の3区分に変わります。

電車特定区間は拡大され、西は網干駅、北は新三田駅・亀岡駅・堅田駅、東は野洲駅・城陽駅・松井山手駅・奈良駅、南は和歌山駅・関西空港駅になります。

電車特定区間の運賃も変わり、鉄道駅バリアフリー料金を含んだ電車特定区間の初乗り運賃(1~3キロ)は150円になります。また、普通運賃だけでなく通勤・通学定期券も改定されます。

なお、大阪〜三ノ宮間のように並行する鉄道事業者との競合区間等に設定している、上限運賃より安価な特定の運賃については、基本的に変更しません。

大阪環状線内に属している区間は値上げ、従来から電車特定区間に属している区間は値上げもしくは据え置きの一方、幹線から電車特定区間に移行する区間は値下げもしくは据え置きになります。なお、全体では運賃収入の増収にはならないとのことです。

 なぜ宝塚線は運賃が高いのか

ここで不思議に思うのは、なぜ1日あたり乗車人員約23000人の宝塚駅(JR宝塚線)が幹線に属すのかということ。同距離の新大阪~神戸間は660円なのに対し、JR宝塚線の新三田~尼崎間は680円です。

また、琵琶湖線南草津駅は1日乗車人員が約25000人で幹線なのに対し、約21000人の大和路線王寺駅は電車特定区間に属します。

一体、どのような定義に基づいて、各路線が電車特定区間と幹線に区分されているのか、とてもわかりにくい状況になっています。

幹線や電車特定区間などの運賃区分が設定されたのは国鉄時代の1984年のこと。当初、「電車特定区間」は「国電区間」と名付けられていました。

国鉄は膨大な借金に悩み、増収が喫緊の課題でした。もともと国鉄の運賃は物価に比べ安価に設定されていましたが、1976年に運賃50%以上に及ぶ値上げを断行。1977年からは運賃の値上げに関して国会の承認制から運輸大臣の許可制になり、運賃値上げが断続的に行われるようになったのです。

相次ぐ値上げにより、京阪神エリアでは国鉄線に並行する私鉄線との運賃格差が拡大。次々と国鉄利用者が私鉄線に鞍替えし、競争力が失われつつありました。

そこで少しでも大都市圏の利用者をつなぎ止めるために、そこそこ運行本数がある電化区間を電車特定区間(国電区間)に設定した、考えられます。

先ほど言及したJR宝塚線(福知山線)の1980年代は現在とは全く異なる状況でした。電化が遅れ、尼崎~宝塚間の複線電化は1981年、全線電化は1986年に行われました。

1986年全線電化時のダイヤを見ると、日中時間帯における大阪~宝塚間の普通電車は1時間あたり3本という運行本数。快速列車は存在せず、並行する阪急宝塚線に大きく水をあけられていました。現に1986年の宝塚駅における1日あたりの乗車人員は現在の約3割にあたる約6300人でした。

他の「国電区間」に指定された路線区間は複線電化が早くに実施され、快速列車が設定されていた路線も少なくありませんでした。

1987年の民営化後、JR宝塚線は快速列車の設定や増発により、阪急宝塚線と互角に勝負できる路線に進化。乗車人員も大幅に増加しましたが、運賃区分は変わらずでした。

値上げ・値下げに対する意見はありますが、今回の見直しによるポイントは「現状にあったシンプルな運賃体系」にあると思います。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)

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