「国葬」をめぐって維新と立憲の奇妙な『共同歩調』"水と油"の関係に変化は?
MBSニュース / 2022年9月3日 8時39分
8月30日の午後、日本維新の会の控室に立憲民主党の安住淳国対委員長の姿があった。就任したばかりの安住氏が維新の遠藤敬国対委員長を訪ね、維新の看板の前でにこやかに談笑する。これまでには“あり得ない光景”だった。2人は去年の衆院選前にも国対委員長を務めていたが、このようなシーンは全く見られないばかりか、両党はお互いがお互いを批判し、まさに「水と油」の関係だった。ここにきて両党の関係に変化がみられるのには、いくつかの理由があると思われる。
岸田政権に距離を置く維新
これまで立憲民主党は維新のことを『野党でも与党でもない立ち位置』を揶揄して「ゆ党」と呼び、政権の補完勢力と批判してきた。確かに、安倍政権・菅政権ではトップ同士の人的関係もあり、政権に近かった維新だが、岸田政権になるとその立ち位置を一変させた。「もう遠慮することはあらへん...」当時、維新幹部は周辺にこう語っている。
去年の衆院選に勝利し、議席数を41に伸ばした維新は、矛先を岸田政権に向け文書通信交通滞在費(現・調査研究広報滞在費)の問題で、動きの鈍い自民を批判し、国会での議論をリードしてきたいきさつがある。ある意味「野党化」したのだ。一方、立憲民主党は泉代表の当時の新態勢では、維新とは一線を画していたが、いくつかの場面で議論を維新にリードされ、存在感を発揮できたとはいいがたい。
交流を深めた安住・遠藤国対委員長
両党の関係を述べるうえで重要なのが安住国対委員長と遠藤国対委員長の関係だ。去年12月に立憲民主党の新執行部の発足で、安住氏が国対委員長を退いた後に2人は交流を深めたとされる。同時期に国対委員長を務めた自民の森山氏とともに3人で食事をすることもあったというが、安住氏の国対委員長就任を契機に、両党の関係に変化が訪れた。安住氏は会見で「政策別連携対応型国会」を目指すと語っているが、これは政策テーマごとに連携する党を変えるという意味で、まさに維新はここに当てはまってくるのだろう。
「国葬」で見えた両党の奇妙な"共同歩調"
安倍晋三元総理の「国葬」においては、政府は2.5億円を予備費から支出すると閣議決定したが、肝心の警備費用は含まれておらず、野党ヒアリングでは「警備費も含めた総額は数十億円になる可能性はあるのか‥」との質問も飛び出した。昭和天皇が崩御した際の「大喪の礼」で約24億3600万円の予備費を支出しており、総額がいくらになるのか注目が集まったが、政府は国葬の後に総額を示すという。
そもそも、国葬については岸田総理の説明が不足しているとの認識は両党に共通しており、安住国対委員長は、国会での説明について「総理自らが行うべきだ」と強調。一方の維新は「国葬に賛成」の立場だが「税金を投入するわけだから、できるだけ早く具体的に説明するべき」(馬場代表)と不信感をあらわにし、つまるところ「総理の説明」では全くの共同歩調だった。
岸田総理は「先手を打った」のか、それとも「言わされた」のか...
8月31日には野党6党1会派が集まり、岸田総理に国会での説明を求める「野党国対委員長会談」=「野国」(やこく)が開かれた。これまで、維新はこの「野国」の枠組みに入っておらず、立憲や共産などと維新の国対委員長が同じ写真に納まるのは「隔世の感」すらあった。
しかし、この会談の直前、岸田総理はコロナ復帰後のぶら下がり取材に応じ、国葬に関する閉会中審査について「早急に私自身が出席」と明言した。同時刻の「野国」をけん制するため先手を打った形だが、逆に言えば、総理が発言せざるをえなくなるまで追い込まれたとも言える。立憲のベテラン議員は「野党がまとまってくることが、与党としては一番いやなこと。あるべき国会の姿が戻ってきた」と一連の動きを評価する。
旧統一教会めぐる「議員立法」の行方は...
両党には旧統一教会問題での共通課題もある。立憲民主党は「カルト被害防止・救済法案」を作成中で、8月31日には野党ヒアリングに2世信者が呼ばれ「高額献金を規制するべきだ」と訴えた。山井和則国対委員長代理は「議員立法の成立が秋の臨時国会の勝負所」だと決意をにじませる。
一方の維新も9月2日に、全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹氏から被害実態のヒアリングを行い、音喜多駿政調会長を中心に立法の準備を進めている。信者らの所得に応じ、寄付の上限規制を設けるなどの内容を目指しているが、上限を設けること自体が"違憲"ではないかという指摘もあり、臨時国会での審議を念頭にしっかりと検討するとしている。
議員立法などをめぐって両党の共同歩調はあるのか...ただ「憲法観」などでは全く相いれないことも確かで、"水と油"の関係が今後どのように変化していくかはまだ見通せない。維新の馬場伸幸代表は「立憲に対しては、あくまで是々非々の立場で対応する。この点は変わることがない」とあらためて、松井路線の継承を強調した。
毎日放送報道情報局 解説委員 三澤肇
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