<星への旅行は不可能>星は見上げて「キラキラしてるな」と思うことしかできない
メディアゴン / 2015年10月26日 14時30分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
ぼくが経験できるのは、この宇宙のせいぜい100年程度の時間のスライスだが、最新の考えによると、この宇宙の年齢は137億年らしい。そのほとんどは、「これまで」も、「これから」も、とにかくぼくにはどうすることもできない。
確か『生きて死ぬ私』だったか、恐竜時代にも、じりじりとした夏の午後、のような時間があったはずで、そのような「今、ここ」の感じは、ぼくがコンビニに歩く「今、ここ」の感じと同じだったはずだ、みたいなことを書いたが、いずれにせよ、そういう時間の「今、ここ」は、全く自由にならない。
ぼくたちはcurrent affairs(時事)について、ああだこうだと言っているけれども、存在の本当の驚異は、「今、ここ」がどうしょうもなくずっと積み重なっていて、137億年も続いている(この宇宙だけで)ということの中にあるはずで、それはもう、パスカルが言うようにどうしょうもない。
先日、宮島に行ったとき、空に星がいっぱいあった。プラネタリウムクリエイター・大平貴之さんはメガスターから今度はギガスターを計画しているようだけど、肉眼で見えるのは限られている。
星はきれいだな、と思うけれども、とりあえずどうすることもできない。おそらく、旅することもできない。
われわれがいる銀河、すなわち天の川銀河(銀河系)の大きさは約10万光年で、宇宙全体から見れば小さいが、何しろ、光の速度で動いても10万年かかるわけだから、旅しようとしても、普通の時間スケールでは無理である。相対論的効果を考慮しても、旅している間にヘタすると人類が滅びる。
空にキラキラと光っている星の中には比較的近いものもあるだろうけど、旅行は現実的ではない。もっとも近いケンタウルス座アルファ星で、4.39光年。まあ、当分行くことはできないだろう。
つまり、見上げてキラキラしているな、と思う以外の関わり方は、できない。
時間にせよ、空間にせよ、絶対に到達、超越できない隔たりに囲まれて生きている、というのは、時々思い出してみると、魂の底がひんやりとするような感触に満ちていて、そんなに悪くない。
一方、current affairsは私たちの生に近い関心事だが、ミルクのように濁り、見通しがない。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
(茂木健一郎)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
銀河系最大の恒星ブラックホール発見 ESAのガイアミッション
財経新聞 / 2024年4月23日 9時16分
-
天の川銀河の恒星ブラックホールとしては最も重い「Gaia BH3」を発見
sorae.jp / 2024年4月22日 21時29分
-
優雅に渦巻く“ケンタウルス座”の棒渦巻銀河「NGC 3783」 ハッブル宇宙望遠鏡で撮影
sorae.jp / 2024年4月16日 21時36分
-
星を激しく形成する“おおぐま座”の矮小不規則銀河 ウェッブ宇宙望遠鏡で観測
sorae.jp / 2024年4月10日 21時10分
-
これがスターバースト銀河の中心部 ウェッブ宇宙望遠鏡で観測した「M82」
sorae.jp / 2024年4月7日 21時8分
ランキング
-
1幻の魚イトウの聖域に風力発電 原発相当計画に「最大級」の懸念
毎日新聞 / 2024年5月4日 6時0分
-
2696年後の日本は子ども1人?…推計の東北大教授「少子化で絶滅する最初の国になるかもしれない」
読売新聞 / 2024年5月4日 13時35分
-
3岩田明子氏、「ウェークアップ」で自民党「3補選全敗」を解説…「党内からは次の衆院選挙では『岸田総理では戦えない』こんな声が公然と出ています」
スポーツ報知 / 2024年5月4日 10時52分
-
4参加する馬は去年の半数に…骨折した馬の殺処分に批判相次いだ『上げ馬神事』4日から壁を無くすなどして開催
東海テレビ / 2024年5月4日 12時34分
-
5同僚女性、男の聴取後に不明 付きまとい巡り、山梨遺棄
共同通信 / 2024年5月4日 15時54分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください