1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

<どっちが天才?>ベートーベンとモーツァルトはどちらが優れた作曲家なのか-茂木健一郎

メディアゴン / 2016年3月22日 7時30分

茂木健一郎[脳科学者]

* * *

先日、日本モーツァルト協会でお話させていただいた。もちろん、聴衆はモーツァルトを愛する方々である。

当然、モーツァルトの美質をほめたたえる内容になった。いくつかの代表曲を紹介した。その後、理事長の三枝成彰さんがお話されたのだけれども、それがちょっとおもしろかったので、振り返ろうと思う。

三枝さんご自身作曲家だが、モーツァルトのシンフォニーを全曲最近聞いて、いいのはいいけど、つまらないのはつまらない、と思ったのだという。

 「モーツァルトの曲の中には、職人的というか、藝術としてはつまらないものもある」

と三枝さんはおっしゃった。

 「今日、茂木くんが紹介していたやつはいいやつばかりだったけど、それはたまたま名曲だ、というだけで」

と三枝さん。ここからが面白いところだ。

至高の名曲を何曲か残したからといって、全作品がいいわけではない、と三枝さん。そして、三枝さんは、モーツァルトとベートーベンを比較して、ベートーベンの方が藝術家としてはよい、と言い切った。

ベートーベンの方が、楽曲が自由というか、作家性がすぐれているというのである。「エロイカなんか、だーんといいでしょう」と三枝さんはおっしゃった。

モーツァルトか、ベートーベンか。

このような、浮世離れした話は、たいへんおもしろい。中学校の時、N先生が、ある日、授業の雑談で、いかにも重大な秘密を打ち明けるように、「君たち、作曲家と言えばベートーベンだと思っているでしょ。でもね、本当はね、モーツァルトの方が天才らしいよ」と言った。

その時、N先生は、明らかに興奮していた。モーツァルトか、ベートーベンか。このような論争は、芸術観に関わるだけに面白い。

N先生が興奮して言ったあたりからかどうかわからないけど、とりあえずモーツァルトを天才だと褒めておけば政治的に正しい、みたいな雰囲気が現れたことは確かである。

ベートーベンは時に重く、厚く、軽やかでのーてんきに見えるモーツァルトと対照的だ。時代がニューアカブームなどの明るい喧騒に向かう中、パラよりもスキゾのモーツァルトに天才のイメージがシフトしていったのかもしれない。

ベートーベンは時に重く、厚く、軽やかでのーてんきに見えるモーツァルトと対照的だ。時代がニューアカブームなどの明るい喧騒に向かう中、パラよりもスキゾのモーツァルトに天才のイメージがシフトしていったのかもしれない。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください