<放送法の呪縛?>テレビメディアに公平中立は必要ない
メディアゴン / 2017年1月17日 7時40分
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
これから、「メディアに公平中立は必要ない」ことを主張する。
その前にいくつかの確認をしておく。
小学生の頃(筆者の場合は昭和40年代である)、民主主義は多数決だと習った。しかし、その時先生は多数決で決めるときは少数意見を必ず尊重しなければならないと付け加えた。少数意見を取り入れるにはよく討議することだと、先生は言った。
民主主義という言葉はDemocracyの訳語としては誤解を招きやすい。政治の体制としては独裁政治、寡頭政、絶対君主制、立憲君主制、封建制などがあるが、これはすべて誰が政治を行うかを示したものである。封建制なら領主、たとえば徳川将軍が政治を行うのである。
それに引き替え民主主義は国の主人たる民衆は、だれかに政治をやって貰って安楽に暮らすというイメージが先行してしまう。Democracyはもっと攻撃的である。Democracyはつまり、民衆政のことだ。民衆が政治を行うことなのである。時には国王をギロチンにかける。では日本の民衆は政治を行っているか。
民衆が選挙などで政治を行うとき、情報はどこから得るか。マスコミと呼ばれる新聞・テレビなどのメディアである。このうち、テレビは公平中立を原則とする(少なくとも建前上は)。
マスコミを「マスゴミ」と揶揄する人が目立つ(目立つだけで多数派ではないはずだ)。ネットの世界は公平中立ではない、混沌としている。何人も(天皇を除き)わずかな例外を排除すれば、どんな主義主張をするのも基本的人権として認められれているからである。
その中で日本のテレビメディアが公平中立でなければならないのは何に依拠するのか。放送法である。放送法第4条で、事業者の番組編集につき、「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を義務としているからだ。付記しておくがアメリカには放送の公平中立原則はない。
【参考】メディアが「報道」ではなく「広報」になった国は必ず衰退する
日本は民衆政だから、この放送法も民衆の代議員である国会議員が決めたものである。だから、民衆によって変えることも出来る。
筆者としては、この放送の公平中立原則は変えた方が良いと思う。第一の理由は民衆の自由な討議をもっと活発にするためである。民衆が政治を行うための情報を、民衆により近い人がもっと熟慮し、討議をすることで、数多く提示するためである。
『沖縄に米軍基地を置くのが最適だ』
『米軍は日本から出て行け』
『原発は直ちに廃止するべきだ』
『東京に原発を作ろう』
『四の五の言わないで豊洲に移転しろ』
これらのどれが少数で多数かはおくとして、よく調査をしたメディアの人間が、どちらかの立場に立って主張をすべきである。侃々諤々喧々囂々、悪口雑言罵詈讒謗、面白くなくては民衆は振り向かない。両論併記で情報を提出してもどれだけの民衆が判断出来るというのか。
この放送局に私は賛成するということなら民衆は決めやすい。ただし、メディアは多数派と権力にすり寄る習性があるから、民衆は注意が必要である
国会に予算を握られたNHK会長が「政府が右ということを左というわけにはいかない」という発言を平気でする日本である。これではメディアの存在価値が全くない。
「政府が右ということでも、民衆のためにならないなら、左だと主張する」のがメディアの役割である。
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