テレビ東京「池の水ぜんぶ抜く」不定期放送でもネタ切れ?
メディアゴン / 2018年1月8日 7時40分
高橋維新[弁護士/コラムニスト]
* * *
2018年1月2日放映のテレビ東京「池の水ぜんぶ抜く」は不定期に放送されているドキュメントバラエティ番組であり、今回は新年の3時間スペシャルであった。
筆者はこのシリーズを初めて見るが、「おもしろい」という評判はよく聞いていた。実際に視聴してみると、確かにおもしろい番組だった。水を抜くと色々な生き物が出てくる。デカくて大量にいる魚・カメ・カエルの映像のインパクトはものすごい。
トカゲやウーパールーパーみたいな変わり種も出てくる。他方で在来種(大抵は外来種より小ぢんまりとしていて可愛らしい)が出てくると、ほっとするなど、見ている側にも起伏を起こしてくれる。
少し変化球の動物番組であるが、おもしろい番組ができたうえに外来種駆除にもなって社会貢献もできるとなれば、言うことはないではないか。
しかしながら、気にならないことがないわけではない。筆者が今回のオンエアを見て少し気になったのは、以下の3点である。
(1)前フリが長い
(2)過去の映像の紹介が長い
(3)番組の内容を煽るような演出が少しうるさい
「(1)前フリが長い」というのは、池を紹介したり、その池で問題になっているようなことを地域住民からインタビューしたりというような内容の映像である。それが長いのだ。「(3)番組の内容を煽るような演出が少しうるさい」というのは、「このあとどうなる!?」や「いよいよアリゲーターガーの姿が見える!?」といったテロップやナレーションが余計な演出になっており、うるさく感じるということである。
【参考】<視聴率競争で明暗>「フジテレビの凋落」と「テレビ東京の躍進」の理由
はっきり言ってしまえば、視聴者としてはそんな前フリや煽りなどはどうでもよい。さっさと池の水を抜いて何が出てくるかを見せて欲しいのである。それがこの番組のメインコンテンツでもあるはずだ。上記のような「周縁部」の映像は、最低限で良い。
これらが長くなってくると、肝心のメインコンテンツの方に撮れ高がなかったから「周縁部」を増やして尺を埋めようとしているのではないか、煽りのテロップやナレーションで内容のつまらなさを糊塗しようとしているのではないかという邪推さえ働いてしまう。
「(2)過去の映像の紹介が長い」に関しても、たまたま筆者は全てが初見なので新鮮な気持ちで見ることができた。しかし、毎回それを繰り返しているようであれば、番組を追いかけているファンほど突き放してしまうことになるだろう。
この番組は通常放送はしておらず、不定期に特番としてやっているわけだが、人気が出たとしても現在の不定期放送を維持した方が良いだろう。人気が出たという理由だけで通常放送に移行してしまうと、毎週1時間分の映像を作る必要があるので、ネタ切れが加速するはずだ。
今回の放送ですら、すでに前フリや過去映像で尺を稼ぐ兆候が出ていたので、通常放送の開始による負担増は番組としての死を早めるだけである。質を維持するのであれば、いい「ネタ」がとれたときだけに不定期に放映するぐらいのスパンでちょどいいだろう。
特にこの番組は、NHKの動物番組と違って動物の様子を長期間にわたって追っているわけでもないので、エサを食べたり繁殖行動に出たりといった動物の「動き」はほとんど映像に納められない。池からその動物が出てきた時のインパクトが全ての「出オチ」のような番組である。コイやソウギョやブラックバスやブルーギルといった「よく出る」動物ばかりだとあっという間に飽きが来てしまう。
通常放送化した結果、ネタが切れて終了した番組は数えきれないほどある。タチが悪いと、ネタ切れを防ぐためにネタを捏造し始める(その場合も、結局は捏造がバレて番組が終わってしまうのだが)。
まさかこの番組で捏造をやることはないとは思うが、インパクトのある映像を捏造するために事前にコッソリ池に珍しい動物を仕込むようなことは決してやって欲しくない。そうやって消えていった番組は少なくない。
捏造をしたくて番組を始める作り手はいないと思うので、環境が彼らを追い込むのである。前述のように、無理せずにおもしろい画が撮れた時にだけ番組をやるということでいいだろう。
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