検察庁が「ジャンヌ・ダルク」になれない理由
メディアゴン / 2024年1月25日 12時39分
山口道宏[ジャーナリスト]
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テレビ東京の金曜ドラマ「ジャンヌの裁き」が話題だ。
くじ引きで「検察審査会委員長」に指名された玉木宏(主演)が、検察庁が下した不起訴処分の適否をめぐり市井の感性で真相解明への模索と委員相互の意見から奮闘するといったストーリー。作品は検察庁本体ではなく市民代表の「検察審査会」を取り上げた。国民から無作為に選ばれた11人の一般市民が不起訴処分を審査するという「検察審査会」の存在と役割がみてとれて興味深い。
「これってマル暴の上納金と一緒でしょ」とは旧知の警察OBだ。
「これ」とは今回の国会議員によるパーティ券政治資金裏金事件で、派閥に納めたパーティ券収入は、マル暴なら「みかじめ料」に相当か、と指摘する。しかし、肝心の検察庁は、今回事件の巣窟といわれた安部派の幹部全員を「不起訴」と発表した。先のOB氏は続ける。
「はぁ? 連座が問えないって? いまは暴力団組長にも『使用者責任』がある時代ですよ。末端の組員が犯した事件事故に組長が知らんぷりなど許されない。今回の政治資金裏金づくりはどうみても立派な組織犯罪。脱税に追徴課税を払わせろ、なんて序の口。組長のほうがずっと潔いですよ」
平成16年11月12日最高裁判決。組長と構成員との間で威力を利用して資金獲得活動をしたという事件の審判に民法715条を引いて「暴力団組長にも使用者責任がある」と、すなわち雇用者だから連帯責任があると断定した。それを今回の自民党派閥による裏金づくりに重ねたら、どうか! 第3者(国民)に財産的損害を与えた「経済犯罪」「使用者責任」が浮上する。
ところで、なぜ「検察審査会委員会」なのか。
検察の「公訴権」に民意を反映させるという制度だ(1948年から)。法律の専門家によれば、今回の裏金事件は、共同して犯罪を実行した「共謀共同正犯」(刑法60条)の疑いもあるという。また、こんな意見も伝えられる。
「規制が緩い政治資金規正法は羊頭狗肉(よ うとうくにく)のザル法だ」。
数々の汚職事件を手が けた元特捜部長の五十嵐紀男さん(83)はそう憤り、抜本改正を求めている(毎日新聞2012.1.18)。
「ジャンヌ」とは、圧倒的強者の検察に、弱者である一般人の寄せ集め=検察審査会メンバーが、ジャンヌ・ダルクが革命を起こしたかのように、事件に隠された巨悪に立ち向かうの意味という。
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