ロート製薬と阪大、データサイエンスの活用で皮膚老化の効果的因子を発見
マイナビニュース / 2024年5月10日 19時53分
ロート製薬と大阪大学(阪大)は5月9日、次世代シーケンサーを用いたさまざまなオミクス解析と、数理モデルを用いたシミュレーション解析により、データサイエンスを活用した新たな皮膚老化研究のターゲットを見出すことに成功したと共同で発表した。
同成果は、ロート製薬と阪大 蛋白質研究所の岡田眞里子教授、同・飯田渓太准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、物理・生命科学・地球科学などの幅広い分野を扱うオープンアクセスジャーナル「iScience」に掲載された。
皮膚の老化は、紫外線などの外的要因と、加齢による内的要因が複合的に関与している。内的要因では、加齢に伴って皮膚組織に蓄積される老化細胞が関与しているが、そのシステムレベルでの発生メカニズムは未解明。そこで研究チームは今回、次世代シーケンサーを用いたさまざまなオミクス解析を行い、皮膚老化を誘導する上流因子を探索し、それらの実験結果に基づいた皮膚老化数理モデルの構築とシミュレーション解析を実施することにしたという。
新生児由来の正常ヒト真皮線維芽細胞を長期継代培養することにより細胞老化が誘導され、異なる細胞倍化数(PDL)(PDL24、PDL36、PDL47)を有する細胞が作成された後に、次世代シーケンサーを用いて発現解析が実施された。細胞老化を誘導した真皮線維芽細胞のRNAシーケンス解析の結果、サイトカイン(細胞間の情報伝達の際に分泌されるタンパク質)の一種である「TGF-β1」の下流転写因子である「SMAD3」および「SMAD4」が上昇することが見出された。また、細胞老化が誘導された真皮線維芽細胞のRNAシーケンス解析とATACシーケンスおよびChIPシーケンス(H3K27Ac)を用いた統合解析によって、TGF-β1が主要な上流制御因子であることが同定された。
次に、2つの公共データから正常ヒト真皮線維芽細胞の長期継代培養による細胞老化(in vitro)および加齢ヒト腕由来真皮線維芽細胞(in vivo)で共通して変動している遺伝子が抽出され、遺伝子エンリッチメント解析が実施された。すると、同じくTGF-β1経路が発現上昇することが確認されたという。
また、TGF-β1経路に関連する重要な遺伝子を調べるため、各データにおいて遺伝的発現量とPDL(in vitro)もしくは年齢(in vivo)との相関係数が計算された結果、両データによって皮膚老化において「THBS1」と「FMOD」が高い相関性を持つ遺伝子として発見された。
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