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中国と世界、そして日本 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年12月13日 6時57分

 それらの記事を総合するとキャメロン首相は昨年5月、チベット人の精神的指導者であるダライ・ラマと会見。中国の猛反発を受けた。だが今回、不振が続く経済打開のために中国との関係再開を求めて、100人を超えるイギリスの実業関係者を率いて訪中。無事、習近平国家主席に「お目通り」もかない、「チベットは中国の一部」と言い放ち、「今後イギリスの中国語教育に力を入れる」と豪語し、人権問題などの危ない橋を渡ることは一切避けて、「中国の投資歓迎」「観光客歓迎」「中国語学習チャンスの増大」などのリップサービスをばんばん振りまいて帰国した。

 だが、メディアの論調はむちゃくちゃ厳しい。

「中国と低価格戦を演じるつもりはイギリスにはない。そんなことしたらイギリスの負けだ」

「ヨーロッパの高級官吏は『北京当局は弱腰の者に利益を与えるような習慣は持ち合わせていない』と語った」

「彼の人権勝組からビジネス実用主義者への大跳躍は見事なものだ」

「一体全体、デビッド・キャメロンは何しに中国まで行ったんだ?」

......挙句の果てに「政治家がでしゃばって、貿易のプロたちがどんなにがんばってもできないことをやれるわけないだろ」みたいなことまで言われていて、そのあまりの激しさには、低姿勢に愛想を振りまいていたキャメロン首相が気の毒に思えるほどだ。でも、そんなメディアも、「お前がダライ・ラマ会見で突っ張るからこういうことになったんだろ」的な揶揄はわたしが見た限りまったくなく、そのへんのところは一本筋が通っているように感じられた。

 だが、みっともない、といえば確かにそうだ。そんなことなら最初から......と思うが、大喜びしてキャメロン貿易団に参加したイギリス産業界を見ると、やはりメディアがどんなに理想を語ろうと、背に腹は換えられないというのも現実なのだろう。そこに先進国の中国に対する理想と現実がせめぎ合っている。

 同様のことはアメリカにも言える。中国に降り立つ前に日本を訪れたバイデン副大統領と安倍首相の会談についてはすでに日本メディアを通じてご存知だろうが、そこで交わされた東シナ海防空識別圏問題を巡っての対話を米紙『ウォールストリート・ジャーナル』は「Japan, U.S. at Odds Over China's Air Zone」というタイトルで伝えている。この記事の翻訳版が掲載された同紙日本語サイトのタイトルは「中国の防空識別圏、民間機では日米に対応の違い」だが、中国語サイトでは「日美因中国防空識別区規定起争執(日米が中国の防空識別区の規定を巡り論争に)」となっている。英語タイトルの意味は中国語に近く、つまりアメリカ(及び西洋社会)と中国では「意見の違い」どころか、「日本と米国の間で対立があった」と伝わっていることになる。

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