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米テレビ銃撃事件、容疑者の暴走は黒人教会乱射事件を見て始まった

ニューズウィーク日本版 / 2015年8月27日 15時54分

 バージニア州ロアノークの地元テレビ局のスタッフが26日、生放送中に銃で撃たれて死亡した。殺されたのはCBS系列の地方局WDBJ7のアリソン・パーカー記者(24)とカメラマンのアダム・ウォード(27)。パーカー記者のインタビューに応じていた地元商工会議所の幹部ビッキー・ガードナーも撃たれて負傷した。

 警察はすぐに容疑者をアフリカ系のベスター・フラナガン(41)と特定。襲撃の約5時間後、ナンバープレート認識システムでフラナガンの運転するレンタカーを追い詰め、止めようとしたが、フラナガンは逃走。銃で自殺を図り、搬送先の病院で午後1時26分に死亡した。フラナガンは以前、ブライス・ウィリアムズと名乗ってWDBJ局で働いていた。

 フラナガンは襲撃の模様を自分で撮影した動画をツイッターとフェイスブックに投稿し、「アリソンは人種差別的な発言をした」とツイート。「アダムは、俺とたった1回仕事をしただけで、(人事部に)俺のことをチクった!」と書き込んだ。

 ツイッターとフェイスブックはフラナガンの動画をすぐに削除したが、すでに何千回も閲覧された後だった。動画には、拳銃を手にしてTVクルーに近づく男が映っていた。青いチェックのシャツを着た男はインタビュー中のパーカー記者を1.5メートル程の至近距離から撃った。

自滅的な行動で追い詰められた容疑者

 その後画面は暗くなり、何発かの銃声が響く。ツイッター上の動画は、投稿後10分程で削除され、その後にフェイスブック上の動画も消された。カメラを回すウォードの姿は動画に映っていたが、彼が撃たれた場面は入っていなかった。

 フラナガンは犯行の2時間後に23ページにわたる「くどくどしい」声明文をABCニュースにファックス送信した。同局が警察に提出したこの声明文で、フラナガンは今年6月にチャールストンの黒人教会で白人のディラン・ルーフが銃を乱射し、黒人9人を死亡させた事件を受けて、自分の怒りは「限界を超えた」と述べている。「ディラン・ルーフをどう思うかって? おまえら! おまえらお望みの人種戦争! こっちも望むところだ、白人め!」

チャールストンの黒人教会で銃を乱射したディラン・ルーフ Jason Miczek-REUTERS

 WDBJのジェフ・マークス社長は同局の正午の番組で、フラナガンは「一緒に仕事をしにくい」人物だったと語った。「絶えず何か気に入らないことを見つけては、人に食ってかかる。切れて手が付けられないことが度々あって解雇した。本人はそれを不満に思い、居座り続けるので、警察を呼んで出て行かせた」

 フラナガンは01年に別の勤務先で差別を受けたという理由で訴訟を起こしたが、和解で決着している。
 
 今回の襲撃の動機は不明だ。警察は記者会見で、動機については調査中と断り、こう推測した。「容疑者は自滅的な行為でどんどん追い詰められ、生活が破綻したようだ」

 バージニア州知事テリー・マコーリフは声明でこう述べた。「家族や友人、愛する者を傷つける人間から銃を遠ざけなければならない」

ポリー・モセンズ

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