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93年、米国を救ったクリントン「経済再生計画」の攻防

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月22日 7時12分

 加えて、電力、ガス、ガソリンなど、あらゆるエネルギー消費に対して、BTU(英国熱量単位。1BTUは、標準気圧下で1ポンドの水を華氏60・5から61・5まであげるのに必要な熱量)の量に応じて課税する、包括的エネルギー税を新設する方針も打ち出された。

 このBTU税はゴア副大統領のアイディアである。ゴアの考えでは、大気汚染の大きな原因となっている石炭への課税がもっとも重くなるため、BTU税は新規財源としてだけではなく、環境汚染の防止にも効果的であるとしていた。

 以上、歳出削減(3750億ドル)と増税による歳入拡大(3280億ドル)を合計すれば、7030億ドルになる。ここから長期公共投資と短期景気刺激策に必要な支出2310億ドルが差し引かれるため、クリントンの原案によれば、向こう5年間の赤字削減額は4720億ドルになる見込みであった。

 クリントン政権の財政再建案の特徴は増税を明確に打ち出し、財政赤字の削減を断行した点にあった。これはベンツェン財務長官、ルービン国家経済会議議長、パネッタ行政管理予算局長、リブリン行政管理予算副局長など経済チームの助言によるところが大きい。このほか、アラン・グリーンスパン連邦準備制度理事会議長の影響もあったといわれている。



僅差の上下院通過

 包括的予算調整法案は5月に下院、6月に上院を通過し、両院での法案の相違を埋めるため、両院協議会にかけられることとなった。共和党議員はこの法案に反対の方針で一致団結しており、上下両院とも多数を占めていた民主党でも、翌年の中間選挙で再選を控える議員は、同法案への賛否について頭を悩ませるものが少なくなかった。

 審議の過程で、石油産出州・石炭産出州の議員や大企業がBTU税に反対したことによって、結局BTU税導入は断念せざるを得なくなり、これに代わってガソリン増税が盛り込まれることが決まった。

 また、歳出面では向こう5年間で4960億ドルを削減(審議の過程で、大統領の原案よりも1210億ドルの削減額が上積みされた)することが決定し、メディケア支出を558億ドル削減すること、食糧配給切符への支出を抑制することなども含まれていた。

 両院協議会を経た包括的予算調整法案の最終的内容は、結果的に民主党・共和党双方にとって不満を残すものであった。

 民主党のリベラル派にはメディケア、学生融資、農業補助金といったリベラルなプログラムの義務的経費が削られていくことへの抵抗が強くあった。逆に共和党は赤字削減の努力がなお不足していると感じており、また富裕層や企業への増税を含む法案には賛成しがたいということもあった。

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