安倍首相の真珠湾訪問は、発表のタイミングもベスト - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年12月6日 12時20分
(12)直近のものでは、安倍昭恵夫人が今年8月22日に真珠湾献花をしています。これには「原発や沖縄」のように、「夫妻で政治的ポジションの左右に対して別々に支持を拡大」する一種の作戦ではないか、という「うがった見方」もありましたが、今となっては重要な伏線となりました。
このように様々な要素を検討した中での慎重な判断だったと思います。最後に残る課題は、スピーチです。もちろん、2015年4月の米上下両院合同会議でのスピーチや、オバマ大統領の広島でのスピーチの流れの延長でいいと思いますが、できれば中国に対して「中華人民共和国は第二次大戦の相手国ではないけれども日中の30年戦争に関しては、今回の相互献花外交と同様の和解をしっかりやりたい」というメッセージを発してもらいたいと思います。
それとセットで、「真珠湾で両国犠牲者を悼むことは、太平洋の平和を守るという強い意志の表明で、これに対する撹乱や挑戦は許さない」というメッセージも加え、硬軟一体となった主張として完結性を持たせることがあってもいいでしょう。
【参考記事】TPPを潰すアメリカをアジアはもう信じない
思えば、真珠湾に始まる第二次大戦の太平洋での戦闘は、アメリカにとって「太平洋の平和」ということが重要な「国のかたち」の一部であるということを、知らしめたのだと思います。孤立を脱して国際連合に加盟したのも、日本との講和や戦後復興に努力したのもその反映で、結果的に日米関係というのは、戦後のアメリカの「国のかたち」の大きな部分に関係しています。
今回の相互献花外交は、それを再確認する意味、そして、その一方的な変更を許さないという意味で、まさにベストのタイミングになると思います。
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