南シナ海の人工島封鎖で米中衝突が現実に?
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月16日 19時0分
<エクソンモービルのCEOから次期米国務長官に転じる対中強硬派のティラーソンは、中国には南シナ海の人工島へのアクセスを認めるべきではないと米議会で証言した。本気なら米軍が中国海軍と対峙することになりかねないが、真意は?>
トランプ次期政権の国務長官になるレックス・ティラーソンは、南シナ海のために中国と戦争でもする気なのだろうか。もちろん、中国に甘い顔を見せるような軟弱な人間だったら、世界最大の石油メジャー、エクソンモービルのCEOにはなれなかっただろう。2008年、エクソンがベトナム沖で行っていたガス田開発を中国政府が中止させようとしたときも、エクソンは従わなかった。BPやシェブロン、コノコフィリップスなど他の石油大手は中国の圧力に屈したのに、エクソンは今でも、中国が領有権を主張している海域で、ベトナム政府の認可を盾に操業を続けている。
ティラーソンは米国務長官としても、アメリカのために同じことをしてくれるのだろうか? 先週水曜のティラーソンはまさにそう考えているように見えた。南シナ海南部のスプラトリー諸島(南沙諸島)で中国が建設した7つの人工島に中国のアクセスさせない人工島封鎖案を示したのだ。
【参考記事】中国空母が太平洋に──トランプ大統領の誕生と中国海軍の行動の活発化
米中衝突のリスクも辞さず
米上院の指名承認公聴会で、より強硬な対中政策をとるつもりかと聞かれて、ティラーソンはアメリカは中国にはっきりと意思表示すべきだと言った。第一に、人工島の建設継続は認められないこと、第二に、それらの島に近付くことも許さないということだ。驚いてあんぐり口を開いた対アジア政策専門家たちの顎が床に届きそうだった。
アメリカが南シナ海の島々への中国のアクセスを阻止する唯一の方法は、米軍艦を派遣して力の行使に備えることだ。7つの小さな人工島のために、ティラーソンは本当に米中の武力衝突に発展しかねない賭けに出るつもりなのか。
専門家の大半は、ティラーソンの失言を疑う。強硬発言が出たときには、証言は5時間も続いていた。数分前には、南シナ海経由の貿易額は一日に5兆ドルだと言い違えた。正しくは、「年間」5兆ドルだ。誰にでも間違いはあるものだ。だが、もし失言でなかったらどうなるのか。
【参考記事】ロシア通の石油メジャーCEOがトランプの国務長官になったら外交止まる?
米CSIS(戦略国際問題研究所)のアジア海洋透明性イニシアチブが公開した衛星写真によると、中国のほか台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、マレーシア、ブルネイが領有権を主張する南沙諸島では、中国の人工島建設は既に止まっている。
この記事に関連するニュース
-
南シナ海で睨みを利かす中国海警局の「モンスター船」、フィリピンEEZ内
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月11日 15時30分
-
日本の解き方 中国が台湾やフィリピンで暴走 漁船を拿捕、公船を追跡・監視…主権めぐり盗人猛々しい主張、日本でも脅威が現実化している
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月10日 6時30分
-
米中新冷戦が猛烈な日本買いを引き起こす…エミン・ユルマズ「日本が再び経済成長期を迎えるこれだけの理由」
プレジデントオンライン / 2024年6月21日 18時15分
-
南シナ海、一段と「天気晴朗なれど波高し」、中国の「攻撃的行動で兵士重傷」と比側
Record China / 2024年6月21日 13時0分
-
焦点:南シナ海問題で「積極広報」に転じたフィリピン、試される中国
ロイター / 2024年6月21日 7時24分
ランキング
-
1韓国でLINEユーザーが急増した理由 日本への反発?
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月17日 15時55分
-
2ウクライナ侵略開始後、動員や弾圧避けるためロシアから65万人流出か…露独立系メディア集計
読売新聞 / 2024年7月17日 18時23分
-
3米副大統領候補のバンス氏、台湾へのパトリオット供与遅れを批判「ウクライナのせい」
産経ニュース / 2024年7月17日 14時38分
-
4血まみれで逃げる患者…「一線超えた」ウクライナの小児病院医師、露のミサイル攻撃を非難
産経ニュース / 2024年7月17日 15時32分
-
5トランプが銃撃を語る電話音声が流出「バイデンは親切だった」「世界最大の蚊かと思ったら弾丸」
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月17日 18時23分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください