トランプは張り子の虎、オバマケア廃止撤回までの最悪の一週間
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月27日 17時30分
外交面でも傷を負った。ジャンクロード・ユンケル欧州委員長はEUのローマ条約締結60周年の演説で、ナショナリスト的な運動を煽る「いまいましい」トランプへの警戒を呼びかけた。極右など一部を除けば、ヨーロッパは、トランプのポピュリスト的レトリックにうんざりしているのだ。
【参考記事】中東和平交渉は後退するのか──トランプ発言が意味するもの
熱々だったイスラエルとの関係にもヒビが入った。二国家共存という中東外交の大原則に引き戻されるうちに、トランプも歴代大統領を苦しめたのと同じ立場に陥ったのだ。イスラエルに入植活動を停止し、和平合意を尊重するよう説得する立場だ。
散々な一週間の後、トランプは深刻なイメージダウンを被った。共和党の穏健派も保守強硬派も、共和党員の反乱分子は許さないというトランプの脅しをものともせず公然と歯向かった。上下両院で多数を握る共和党は本来、民主党の意思とは無関係に法案を通せるはずだが、内部の亀裂ゆえにそれができない。医療改革、税制改革、インフラ投資などの大型法案をこれからどうすれば成立させられるのかも見通せない。
トランプは、大統領就任式の参加者が史上最大だったという嘘をショーン・スパイサー報道官に押し付けた日から、毎日嘘をつくリズムを身に付けたのかもしれない。就任1週目にはそのどさくさに紛れてトランプ自身の支持者が喜ぶ大統領令に署名することができた。だがそんな蜜月は、もう終わったのかもしれない。
このままだと、トランプは「まぐれの大統領」であり続ける。一般の得票数ではヒラリー・クリントン民主党候補に負けた大統領。ロシアに当選させてもらったかもしれない大統領。与党・共和党の8年越しの公約でもあったオバマケア廃止もできない大統領だ。
ニコラス・ロフレド
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