イスラエル総選挙:中東和平支持の中道勢力がタカ派与党に敗れた訳
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月11日 18時13分
新会派はパレスチナ問題の解決策としての「2国家共存」など重要な争点を慎重に避け、ありきたりの公約を並べたばかりか、ドナルド・トランプに倣って「イスラエル・ファースト」をスローガンに掲げるありさまだった。
ネタニヤフは選挙戦の最中に手痛いダメージを被った。イスラエルの検察が2月末、収賄や詐欺など3件の容疑でネタニヤフを起訴する方針を発表したのだ。
中道右派を引き込めず
「青と白」はネタニヤフの人格的な欠陥と汚職疑惑に焦点を絞り、イスラエルの伝統的な左派政党である労働党とメレツ党から中道左派の票を奪うことには成功したが、ネタニヤフ陣営内の中道右派を引き込むことはできなかった。
敗因は、ネタニヤフのタカ派政策に代わる首尾一貫した代案を出せなかったことにある。
「青と白」に流れたのは左派陣営の中道派の票だけだ。今回の総選挙で労働党とメレツ党は大敗を喫した。特に労働党の得票率は史上最低まで落ち込んだ。
確かに、元将校たちにとっても、ネタニヤフ率いる与党リクードを倒すのは生易しい業ではない。
右派陣営は長年、イスラエル政治を支配してきた。その背景にはいくつかの要因がある。2000年秋に始まった第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)とそれに続くイスラエルとパレスチナの衝突、2005年にイスラエルがガザ地区から一方的に撤退した後に起きたさらなる衝突(今も続いている)、長年にわたり繰り返されたが不毛に終わった和平交渉。こうした状況下で、多くの国民が望むのは自分たちの安全を守ってくれる政権だ。
実際、選挙前の世論調査では、イスラエルのユダヤ人の40%が右派政権の存続を望み、中道右派政権の発足を望む人は25%、右派左派を巻き込んだ中道政権を望む人は16%で、中道左派か左派政権を支持する人は最も少なく、15%にすぎなかった。
それでも今回の選挙は、イスラエルの野党が長年尻込みしていたこと、つまりタカ派に代わる明確な代案を示すチャンスだった。
「ユダヤ国家の存立が危うい」という脅し
ネタニヤフは通算4期13年政権の座に居座ってきた。ネタニヤフ時代に育ったイスラエルの若年層は、パレスチナ問題に対するタカ派的なアプローチしか知らない。彼らはネタニヤフが語るストーリー、つまり和平が実現しないのはパレスチナ人のせいだ、という見方しか聞いたことがない。
当然ながら、イスラエル民主主義研究所が選挙前に実施した調査では、18〜24歳の有権者の圧倒的多数がより穏健なガンツよりも、ネタニヤフを支持していた。これは65歳以上の有権者とは正反対の傾向だ。
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