「美人銭湯絵師」の盗作疑惑に見る「虚像」による文化破壊
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月17日 18時30分
火の勢いを増す「燃料」となったのは、 "謝罪"の仕方だった。勝海氏本人は、「先日、私が参加させて頂いたイベントにて描いた絵が他の作品に酷似しているというご指摘を頂戴いたしました。まずはお騒がせし、ご迷惑をおかけしたこと心よりお詫び申し上げます」と、公式アカウントに謝罪ツイートを掲載したが、これが<世間を騒がせたと言っているだけでパクリは認めていない。全く謝罪になっていない>と、炎上したのだ。猫将軍氏に直接宛てた謝罪メールと大正製薬の謝罪文も、同様にも受け止められる内容だった。さらに、これらの謝罪文がテキストではなく画像として貼り付けられていたことも、「検索避け」だとして非難された。
そこからの「匿名の集団の力」は凄まじく、匿名掲示板「5ちゃんねる」には関連スレッドが次々と立ち、勝海氏の過去の絵画・デザイン作品が次々と掘り起こされていった。そして、詳細な比較画像と共に、インターネット上で検索できるほとんど全ての勝海作品が国内外のアーティストの作品を模倣した「パクリ」だと"認定"される事態となった。作者本人からの抗議を受け、SNS上から削除された作品も出た。さらには、絵画だけでなく、勝海氏が日常の何気ない出来事を語ったツイートの中にも、他人のツイートをコピーして一部改変した「パクツイ」が多く見つかり、衝撃が走った。
掘れば掘るほど膨らむ「虚像」
勝海氏自身は、件のライブペインティングについて、銭湯絵師見習いではなく、独立したアーティストとしての活動だと語っている。しかし、イベントには、丸山氏と共に行動する際に身に着けているペンキの汚れが飛び散ったズボンと、名前入りの紺の手ぬぐい姿の「銭湯絵師見習い」のコスチュームで臨んでいた。騒動後、丸山氏は、公式HPで勝海氏の方から申し出があったとして、師弟関係の解消と、今後の勝海氏の銭湯絵師としての活動には一切関知しない旨の声明を発表した。
「パクリ」が指摘されている無数の勝海氏の絵は、元絵と比べてお世辞にもレベルが高いものとは言い難い。陰影や反射などの細部の模倣も多く、「インスパイアされてアレンジした」という言い訳は効きそうもない。強調されている「芸大」の学歴も、実際に通っているのは学部よりも入学が容易とされる大学院であり、卒業したのは入試の難易度という点では東京芸大よりもランクが落ちる私大だ。それも必ずしも高い絵画のデッサン能力を求められないファッション系の学科であった。
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