逮捕劇で再び動き出した、ウィキリークス第2章
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月18日 11時0分
マニングに政府機関の書類を提供するように促したことも、取材でよくある手法だ。マニングがもう渡す書類がないと伝えると、アサンジは次のように返した。「私の経験上、好奇心の目が乾くことはない」
ウィキリークスを皮切りに機密情報や数百万本の外交公電などが公開され、米司法当局は、情報を漏洩した政府関係者を次々に起訴した。ただし当時のオバマ政権は、情報漏洩を画策したとしてアサンジを起訴はしなかった。彼を追及すれば、ジャーナリストの訴追に関する危険な前例になると考えたからだ。
アサンジは、自分の仕事はジャーナリズムであり、メディアに対する慣例的な保護が自分にも適用されるべきだと、繰り返し主張。アサンジの弁護士ジェニファー・ロビンソンは、「アメリカに関する真実の情報を発表して米当局に訴追されたジャーナリストは、誰でも(米当局に)身柄を引き渡されかねない」と述べている。
アメリカに引き渡される?
現時点では何とも言えない。引き渡しの可否はイギリスの裁判所で激しく争われだろう。
エクアドルのレニン・モレノ大統領はアサンジの亡命を取り消すに当たり、拷問や死刑判決を受ける可能性がある国に引き渡さないよう英政府に文書で約束させたと言っている。
だが、それだけではアメリカに送られる可能性は否めない。EUの法律では拷問や死刑判決を受ける恐れがある国への容疑者の引き渡しは禁じられている。だがロンドンの米大使館の公式ホームページを見ると、イギリスは日常的に容疑者をアメリカに引き渡しているようだ。
一方、最近のハッキング事件での司法の判断がアサンジに有利に働く可能性もある。イギリスの裁判所は昨年、FBIなど米政府機関のコンピューターシステムに侵入した罪に問われた被疑者のアメリカへの引き渡し要請を退けた。アメリカの刑務所での扱いを危惧したからだ。テリーザ・メイ英首相その人も、内相だった12年に米政府へのハッカーの引き渡しに待ったをかけたことがある。
ほかの罪にも問われる?
過去に問題となった事件に関連して、アサンジはさまざまな容疑で取り調べを受けることになりそうだ。
例えば米情報機関はアサンジが16年の米大統領選に向けた選挙戦中にロシアの情報機関と共謀して、米民主党幹部のコンピューターシステムに侵入し、盗んだ文書を公開したとにらんでいる。トランプ陣営へのテコ入れを目指すロシア政府にとって、民主党の内部文書の暴露は極めて有効な一手となった。
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