インドネシアの宗教と民主主義の危うい関係
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月25日 15時30分
ジョコが選挙戦で当初から優位に立っていたことや、インドネシアには大統領の任期制限があるため3期目はないという事実からすると、2期目のジョコに対する国民の期待は相当に大きい。お世辞にも良好とはいえない人権状況の改善も急務だ。
14年に進歩的な波に乗ったにもかかわらず、ジョコは65年の華僑虐殺に対する説明責任や、急激に悪化しているLGBTの権利についてほとんど手を打っていない。
ジャカルタのシンクタンク、セタラ研究所によれば、宗教的な不寛容は彼の1期目に急拡大した。先住民は相変わらずないがしろのままだ。「誰が選挙に勝つにせよ、大統領には過去も現在も含めて、人権侵害を解決する義務がある」と、人権活動家のリニ・ズルリアは言う。
強権的な支配者がぞろぞろいる東南アジアで、インドネシアは最大の民主主義国だ。98年の民主主義革命から21年後の現状は、回復力のある民主国家が育つ可能性があるという証拠だ。
候補者のメンツは同じなのに、「今度の選挙は前よりひどかった」と言ったのはジャカルタ育ちのイスマン・アフマド・チュアニ。「それでもこれが民主主義。民主主義は守らなくちゃ」
<本誌2019年4月30日/5月7日号掲載>
※4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が尊敬する日本人100人」特集。お笑い芸人からノーベル賞学者まで、誰もが知るスターから知られざる「その道の達人」まで――。文化と言葉の壁を越えて輝く天才・異才・奇才100人を取り上げる特集を、10年ぶりに組みました。渡辺直美、梅原大吾、伊藤比呂美、川島良彰、若宮正子、イチロー、蒼井そら、石上純也、野沢雅子、藤田嗣治......。いま注目すべき100人を選んでいます。
クリティカ・バラグール
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