スリランカ連続自爆テロで蘇ったイスラム国の悪夢
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月26日 18時20分
<イスラム過激派のテロとは無縁だったスリランカが、9.11同時多発テロ以来の大きな犠牲を出さなければならなかったのはなぜなのか>
悲劇に際しては、犠牲者を悼む人たちに深い悲しみと連帯を示すだけで十分だ。スリランカの連続自爆テロでは、少なくとも250人が犠牲となり負傷者は約500人に上っている。犠牲者の埋葬が続くさなかに、何が問題だったか詳細を検証するのは、スリランカの人々に対して失礼なのではないかとも感じる。
しかし無辜の犠牲者にとっては事実解明こそが(それがすべてとは言わないまでも)慰めだ。テロがどのように実行されたかを解明し、再発防止に向けてでき得る限りのことをするのが、犠牲者や遺族に対する我々の責務だ。
今回のテロは、紛争地帯以外で発生したテロ攻撃としては、アメリカの同時多発テロ以降で最大規模の犠牲と被害を出した。現在スリランカは平和だが、過去には少数派タミル人のテロ組織が分離独立を求めて武装闘争を続け、内戦は数十年に及んだ。しかしその内戦のさなかでさえも、イスラム過激派によるテロとは無縁だった。
より組織的な殺戮テロへの回帰
IS(イスラム国)の犯行声明はテロ発生から2日後の4月23日、系列メディアのアマク通信を通じて行われた。この声明によって、今回の実行犯とされる地元の小規模なイスラム過激派組織(「ナショナル・タウヒード・ジャマア(NTJ)」)が、これだけ大規模なテロ攻撃を実行できたことの説明がつく。
今回のテロは、ISがこれまでシリアやイラク、アフガニスタンで実行してきたトラックによる自爆攻撃などよりも規模が大きい。
その手口はISによる、よく知られた(現在ではもうほとんど見られないが)連続自爆攻撃を踏襲している。カトリック教会を標的にするやり方は、スリランカの内戦の中心となった国内問題の文脈では理解できないが、キリスト教徒を攻撃してイスラム教徒の共感を得るISお決まりのパターンとは合致する。
40人以上のスリランカ人がシリアでISの活動に参加していた事実を考慮すれば、ISが極めて小規模なスリランカのイスラム過激派NTJに人脈を築き、攻撃計画を実行させたことも説明がつく。シリアから帰国した元ISメンバーや外国人のIS支持者がどのようにテロに関与したかという詳細はまだ捜査中だ。
だが、キリスト教のイースター(復活祭)を狙った今回のテロは、最近のISのテロよりも、2000年代に国際テロ組織アルカイダが起こした一連のテロ攻撃と類似している。
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