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幻冬舎・見城徹が語った『日本国紀』、データが示す固定ファン――特集・百田尚樹現象(2)

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月27日 17時0分

もっとも百田の舌禍癖くらいで右派論壇は揺るがない。花田たちの「支え」もあってカムバックから7年、安倍一強時代は続く。出版業界を見渡せば、売れるのは右派系の本や雑誌ばかりだ。すっかり勝ち組ですねと話すと、花田は首を振った。

「こういう雑誌はメディアでは少数派。全く売れているとも思わないですよ。だって朝日新聞は毎日何百万部と発行しているんですよ。それに比べたら、部数なんてまだまだでしょう。百田さんだって朝日に比べたら少ないもんですよ。だからこそ僕は発言の場をつくっていきたいんです」

花田はここで、重要なキーワードをぽろっと口走っていた。取材時にはぼんやりとしか見えていなかったが、彼らを結び付けているのはイデオロギーだけではない。あるメンタリティーにあるということが後々、分かってくるのだった。



DHCテレビ社長の山田にとって百田は「普通の人」の感覚を理解する出演者だ(5月8日) HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

「リベラルはおもろないねぇ。変に真面目やし。百田さんはものすごく面白い。ジョークや笑いも交えて、ニュースを語るじゃないですか」。百田がレギュラーを務めるインターネットのニュース番組『真相深入り! 虎ノ門ニュース』を制作するDHCテレビジョン社長の山田晃は率直に、起用の理由を語った。普段、現場に立っているときのデニム姿から一転、取材時にはスーツを着て、路上に面したガラス張りのスタジオに案内してくれた。

『虎ノ門ニュース』は、百田のほかにも右派系論壇誌の常連寄稿者と重なるメンバーを重用する番組として、ネットと右派をつなぐメディアになっている。同社は化粧品大手DHCの関連会社である。当然ながら、番組はDHC会長である吉田嘉明の意向が反映されている。

DHCテレビは、制作した情報バラエティー番組『ニュース女子』がBPO(放送倫理・番組向上機構)から「重大な放送倫理違反」を指摘された過去がある。吉田はこのとき、BPOに対し「普段NHKや地上波の民放テレビを見ていて何かを感じませんか。昔とは明らかに違って、どの局も左傾化、朝鮮化しています」(産経新聞「iRONNA」)と反論している。彼の思想傾向は極めて明確だ。

下請けの番組制作会社からキャリアをスタートさせた山田の転機は、関西の視聴率王・やしきたかじんに関わったことだ。彼はたかじん関連のウェブサイトを運営する会社のスタッフとして、バラエティー番組『たかじんのそこまで言って委員会』などの収録現場を回りながらウェブ用のコンテンツ制作をしていた。この番組は、安倍が「異例」と言ってもいい頻度でゲスト出演したことでも知られている。

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