研究会仲間の丸山九段と千葉六段が相居飛車で激突:第2期 叡王戦本戦観戦記
ニコニコニュース / 2016年10月17日 16時0分
プロ棋士とコンピュータ将棋の頂上決戦「電王戦」への出場権を賭けた棋戦「叡王(えいおう)戦」。2期目となる今回は、羽生善治九段も参戦し、ますます注目が集まっています。ニコニコでは、初代叡王・山崎隆之八段と段位別予選を勝ち抜いた精鋭たち16名による本戦トーナメントの様子を、生放送および観戦記を通じてお届けします。
すべての写真付きでニュースを読む
研究会仲間
ともに本戦初出場の丸山忠久九段と千葉幸生六段が10月11日の対局でぶつかった。2人は研究会をともにするメンバー同士でもある。この研究会は「振り飛車研」として居飛車党と振り飛車党で構成されていたのだが、「振り飛車党はみんな居飛車党になってしまいました」と千葉。千葉本人もそのひとりである。
戦型は丸山が最近よく用いている、一手損角換わりからの早繰り銀になった。△8五歩(第1図)が「違う形をやってみようと思って」という丸山の趣向で、代えて△9四歩が多かったところ。本局の作戦は△9四歩を省略して、持久戦になった場合により価値の高い手に回す意味がある。千葉も早繰り銀で対抗して、開始早々に戦いの気配が漂った。
時間差棒銀
丸山は角換わりのスペシャリストとして知られ、近年は一手損角換わりで独自の境地を開拓している。早繰り銀という選択は、手損ながら攻勢を目指す意欲的な作戦だが、手が遅れているだけに無理も生じやすい。丸山は「普通の手が指せないのがきつい」とニコニコ顔で振り返った。顔だけ見れば悩んでいるようには見えないが、この屈託のない笑顔が丸山のトレードマークである。
丸山は7筋の歩を交換して棒銀に繰り替えたが、これが疑問の構想。千葉が▲2四歩(第2図)でうまくとがめた。△2四同歩なら▲3五銀~▲2四銀とスムーズに銀がさばけ、△2四同銀なら▲5五角がある。局後、丸山は「経験のない形だったが、1手でしびれた」と苦笑した。序盤は先手が一本取ったが、まだ先は長い。
手の広さゆえに
後手が反撃して迎えた第3図では、先手の手が広い。千葉は悩んだ末に本譜の▲4五角を選択した。△3六角成を消した攻防手だが、局後「筋が悪かったですね」と千葉。代えて▲2四銀は有力だった。以下△2七歩▲同飛△3六角成▲2八飛△2七歩▲3八飛△4七馬と進むと先手忙しいが、手順中▲3八飛に代えて▲4八飛と逃げ、△2四銀▲5五角(A図)の進行がどうか。先手は駒損ながら玉が堅い。千葉は「▲2四銀は考えたが、ここまで深く掘り下げられなかった」と振り返った。
先手の手得は玉の位置の差になって現れている。当然ながら、後手の居玉よりも先手玉のほうが好位置だ。だが、漠然としたよさを具体的な戦果に結びつけるのはとても難しい。「いいといっても、1手で吹き飛ぶ程度」という千葉の言葉どおり、ひとつの判断ミスが波紋を呼ぶ。
逆モーションの攻め
丸山の△7六歩(第4図)に千葉は▲6六銀と前に出たが、対する△8六歩が鋭い切り返しだった。「玉が上から押さえられる形になってしまった」と千葉。本譜の順を思えば、▲2四銀と出る前に▲7六歩とキズを消しておくのも有力だった。
丸山は第4図で▲8八銀との「二択と思った」と振り返る。以下△2四銀▲同飛△2三歩▲2八飛△7四角成で難しいというのが丸山の見立てだ。▲8八銀は壁銀になるだけに指しづらいが、本譜は上に出た銀が守りに働かなくなったのがつらい。
柔らかい好手
千葉は▲6三角成(第5図)と後手玉に肉薄する。代えて▲2一飛成と王手を入れなかったのは、△3一歩▲6三角成△8七銀成▲8五歩△7八成銀▲同玉△6九銀▲8七玉△7四角成(B図)で「読みきれていたわけではないが、負けそうと思った」から。第5図は次に▲2一飛成△3一銀▲4一銀という狙い筋がある。後手はどう応じるか。丸山は長考に沈んだ。
丸山は頭を抱えたり、腕組みをして天井を見上げたり。苦しげなため息が漏れる。局後に丸山が明かした読みは、第5図から△8七銀成▲8五歩△8六歩▲5八銀△7四角成▲2一飛成△3一歩▲3二竜△6三馬▲3一竜△4一馬▲4二金△6二玉▲4一竜△5九銀▲9六角(C図)というもの。「これが第一感だけど、どうも勝てない」と丸山。手順中△5九銀が退路封鎖の手筋だが、▲9六角が妙防だ。
20分以上の時間を費やして放たれたのは、ふわっとした△2六歩。▲2六同飛なら△2五歩と止めればいい。感想戦では「甘い手と思って後悔した」と話した丸山だが、読みの入った最善の受けだった。
丸山が2回戦進出
先手は飛車の利きを止められて、後手玉に迫ることが難しくなった。「最後は大差になってしまった」と千葉。投了図の先手玉は△6九金までの詰めろで、適当な受けがない。
丸山は序盤でつまずいたものの、中盤から巻き返して最後は圧倒した。千葉は序盤でわずかにリードしたが、優位を拡大する手段が難しかった。千葉は普段からよく将棋会館に顔を出している棋士で、穏やかな性格とのんびりとした口調で場の雰囲気を和ませてくれる好人物だ。本局では打って変わって、鋭い眼差しと鬼気迫る表情が印象に残る。取材後にぽつりと語った「弱すぎました。また頑張ります」という言葉に、秘めた闘志を感じた。
(観戦記者:松本哲平)
◇関連サイト
・叡王戦公式サイト
http://www.eiou.jp/
・電王戦公式サイト
http://denou.jp/
・[ニコニコ生放送]第2期叡王戦 本戦 丸山忠久九段 vs 千葉幸生六段 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv277326595?po=newsinfoseek&ref=news
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【ひふみんEYE】伊藤七段は歩が躍動、終盤お手本のような指し手 藤井叡王は一工夫しないと大変
日刊スポーツ / 2024年5月2日 21時16分
-
仲よしコンビが振り返る戦いの軌跡 佐々木勇気八段×伊藤匠七段対談!
マイナビニュース / 2024年5月1日 12時0分
-
伊藤七段 王将戦1次予選準決勝進出 藤井王将戦初勝利から中2日 八代七段に108手で勝利
スポニチアネックス / 2024年4月23日 17時24分
-
「この一勝は大きい!」 伊藤匠七段が対藤井戦&タイトル戦初勝利でタイに 第9期叡王戦五番勝負第2局
マイナビニュース / 2024年4月22日 11時30分
-
「この人に勝つのは大変だ...」藤井叡王がピンチ切り抜け伊藤匠七段下し防衛に好発進 第9期叡王戦五番勝負第1局
マイナビニュース / 2024年4月8日 11時30分
ランキング
-
1大谷翔平がまたポルシェ贈呈!しかし… もらった監督がお茶目に公開、米記者「おもちゃの車だ」
THE ANSWER / 2024年5月5日 9時44分
-
2【マリーゴールド】ロッシー小川氏 ノアへの再参戦は「要望があれば、また来ますよ」
東スポWEB / 2024年5月5日 6時8分
-
3大谷翔平の会見にまさかの“乱入者”「お邪魔させてもらう」 笑顔の51歳が話題「可愛すぎる」
Full-Count / 2024年5月5日 14時50分
-
4連敗の阪神・岡田監督「フォアボールが絡むよな、点が入る時に」木浪のライナー帰塁判断「そら難しいよ」
スポニチアネックス / 2024年5月4日 21時42分
-
5同僚も衝撃「聞いたことない」…助っ人に舞い降りた魔球 打者に腰を引かせた“神の声”
Full-Count / 2024年5月5日 8時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください