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ビートたけしがネットやスマホを批判する訳

ニコニコニュース / 2017年2月22日 18時12分

先週の土曜日の朝7時、こんなインタビュー記事が「NEWSポストセブン」に掲載された。

http://www.news-postseven.com/archives/20170218_493500.html

題して「ビートたけし『ネット・スマホ信者の弱点を指摘』」。このコラムは小学館が最近発売した「テレビじゃ言えない」の一部である。好調に売れていると言うので私もこの本を読んだが、久々にビートたけしの毒舌が炸裂するなかなか読み応えのある新書であった。

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「一億総活躍時代という馬鹿馬鹿しさ」「少年法の矛盾」「防災服を着るが革靴は脱がないわざとらしい政治家達」「乙武君スキャンダルと差別意識」というたけし特有の切り口で「最近の危ない日本の断面」を斬るという意図である。

その中に「ネットとスマホに関する強烈な批判」も多く含まれていた。一部引用すると

・あれに1日中かじりついているってのは正気じゃない。本当に大事にしなきゃいけない自分の時間が奪われていることに気が付かなきゃいけない。


・「ネットで調べればいいから知識はいらない。要はネットを使いこなす頭脳だ」みたいな風潮は絶対おかしいね。

・「ネットがあれば何でもできる」と思っている世代は、「世の中にはネットに書かれていないもっと深い世界がある」ということに思いが至らない。それが弱点なんだよ。

すぐに私の所属するドワンゴのニュースプラットフォームが運営する『ニコニコニュース』で「ネット・スマホを批判するたけし」に関する同記事はすぐに転載された。

http://news.nicovideo.jp/watch/nw2648698

すると驚くべき反応が起きたのである。

『ニコニコニュース』にはコメント欄があるが早朝の配信にもかかわらず結局は"1192個のコメント"が寄せられた。いくら大物芸人の発言とは言えここまでの反響のあるニュースを私はあまり知らない。

私は「世代間の考えの違いなのか?」「たけし発言が炎上しているのか?」「あるいはたけしの意見に触発され、まさにネットに関する多事争論となったのか?」・・・と想像した。そして1192個、私は全て投稿に目を通してみたが、これが意外に貴重な体験であった。ここでコメントの一部引用しよう。

・「お金を使うはずがお金に使われていると19世紀の人はいったように、21世紀の人はスマホを使うはずがスマホに使われているんだ。」


・「反論と意見交換と発信が出来るのは、ネットだけ。この一点にのみ、既存メディアとは全く性格が異なり、有用性が高い。この事実を否定できない限り、的外れな戯言だ。」

「ふざける時は本当にふざけるけど真面目なときはめちゃくちゃ真面目なたけしさん好き。」

「スマホとガラケーを両方知ってる時代の人間ならそんなことは当たり前の様に知っていることだけど。今の子供とかは基本的にスマホだろうし知らない子おおいだろうな~・・・。」

・・・「たけし炎上の嵐」と私が想定したコメント欄はまさに「玉石混合」だったと思う。テレビ・新聞批判などもある。知性のある意見もある、自分の愛用するネットとスマホを攻撃された故のたけしへの攻撃的意見もある。我田引水めくが、私は「ニコニコニュース」のコメント欄の面白みを存分に思い知ったのである。ネットメディアに関する興味深い議論が展開されていたのだ。

ビートたけしは「ほとんどの人間が普段からなんとなく感じている事」を絶妙の表現とタイミングで誇張して繰り出すことが上手い。これは昔から氏と付き合いのある私がほとんど日常的に感じていたことだ。

もちろんスマホは画期的な発明品であるが、使用している人間も意識的・無意識的に「便利すぎるスマホに対するふと感じる不安・躊躇・負の側面の様なもの」を感じる事もあるだろう。ビートたけしももちろんスマホを使っている。たけしはその卓越した便利さも十分知った上での「スマホ亡国論」を説いているのだ。

しかも、この極端な表現・論理展開はビートたけししか出来ない一流の芸だと思う。活字文化・ゲーム文化・映像文化・対話による交流・双方向性・情報論を踏まえた上で「ネット・スマホ批判」を堂々と出来るのは日本の芸能人ではビートたけししか居ないのではないのだろうか?たけしは連載などで学者や知識人や専門家と実際に会い知見を深め、プライベートでも本もかなり読んでいる。たけしの表現は極めてわかりやすいが、その底にある基礎知識が半端ではないのだ。なんでも斬ってしまうこの技を縦横無尽に駆使することは、あの「松本人志」でさえおそらくためらうであろう。

「文明の利器」「便利すぎるモノ」「皆が飛びつくモノ」には必ず"諸刃の剣"的な側面がある。世界最初に普及したマルコーニの無線通信機は僻地(へきち)の病人の命も救ったが第一次世界大戦に導入され「戦争の本質」を完全に変え遠隔操作による大量殺戮時代を生んだ。原爆投下で懲り懲りだったはずの日本は「原子力の平和利用」を謳われ、利権がらみの原子力政策を導入した結果、まさにディザスター(大惨事)を招いた。バイクや自動車も最初は事故だらけ・死人だらけの有様だったがその後のオペレーションが良かったのか事故は減ったが、これにより人間は何かを失ったのかも知れない。

そしてまさに世界を変えた各国を航行する大型旅客機も墜落したらほとんど全員死亡だ。スーパーマーケットや大型ショッピングセンターは便利だが中小商店の商機と個人商店の良さと人々暮らしに劇的な変化をもたらした。新しいテクノロジーに淫してゆくのが我々人間の運命だとしても、「スマホ」ごときの身近な機器が判断力の身についていない子供たちに対する影響力も含めさらに検証・議論・機能整備すべきだと思う。

こんな場合、最新科学の遺伝子操作技術で巨大恐竜を生み出した結果、制御不能になったマイケル・クライトンの小説「ジュラシック・パーク」を思い出してしまうのである。・・・今のスマホが昔の巨大なスーパーコンピューター並みの性能を持っているので、あと10年も経てばスマホレベルの大きさの機器で現在の超高性能大型コンピューターを超える世界が展開されるのは確実だろう。「科学哲学」と言う学問があるらしいが、その新テクノロジーが世界に与えるインパクトを予測するのは決して不可能ではないはずだと思うのである。

ビートたけしは「笑い」という包装紙に包んで「文明・技術・科学の暴走」「人間の浅はかさ」「権力者の偽善」「大衆の勘違い」に警告を発し続けている「お笑い哲学者」であり「お笑い社会学者」であり「お笑い科学哲学者」であり「お笑い人類学者」であるのかもしれない。

◇関連サイト
・ビートたけし「ネット・スマホ信者の弱点」を指摘
http://www.news-postseven.com/archives/20170218_493500.html

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