絶対権力の歪さと、それに翻弄される市井の人々……『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年5月1日 12時53分
ニッポン放送「ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町」(日曜朝5時~)で、おススメの最新映画をご紹介しているコーナー『サンデー早起キネマ』。4月28日は、素晴らしい監督に感情を揺さぶられる3本をご紹介しました。
その1本には、実話にひたすら驚き、理不尽さにやりきれない気持ちになりました。イタリア史上最大級の波紋を呼んだ衝撃の史実を巨匠マルコ・ベロッキオ監督が映画化 『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』。
時は、イタリア統一に向けて世の中が揺れていた1858年。当時はローマ教皇を君主とする教皇国家に属していたボローニャのユダヤ人街で平穏に暮らしていた男の子が、教皇領の警察に突如連れ去られた「エドガルド・モルターラ誘拐事件」。悲嘆に暮れながらも息子を取り戻そうと奔走する両親と、権力強化のため決して返還に応じようとしない教会側の争いは、イタリアをはじめ時の皇帝ナポレオンやロスチャイルド家ら、全世界を巻き込んだ論争を紛糾させました。
この実話にスティーヴン・スピルバーグが魅了され映像化しようとしましたが、実現したのはイタリアの巨匠マルコ・ベロッキオでした。
ある日、モルターラ家に押し入る教皇直属の兵士達。6歳の息子エドガルドを連れ去るのが目的でした。実は、彼は生後間もない頃、父母が知らぬ間にベビーシッターから勝手に洗礼を授けられていたのです。教皇の命令は絶対であり、洗礼者はカトリック教育を受けなければなりません。「この少年を誘拐するのは神の思し召しである。ましてや親元に返すなどあり得ない。洗礼を受けたこの子は、永遠にカトリック教徒なのだ」……時の教皇ピウス9世の断固たる意志表示でした。取り乱したエドガルドの両親は、息子を取り戻すためにあらゆる手を尽くします。
世論と国際的なユダヤ人社会に支えられ、モルターラ夫妻の闘いは政治的な局面を迎えることに。しかし、教会とローマ教皇は、ますます揺らぎつつある権力を強化するために、エドガルドの返還に応じようとはしませんでした……。
教皇権力の尊重から自由の尊重へと変化しつつあった時代に、権威の崩壊を食い止めようとした誘拐事件により、エドガルドが、理解どころか想像さえできない人生を歩んだ、歩まされたという現実が、166年後の私たちに重くのしかかります。
信仰まで覆されたエドガルドの人生への責任は、一体誰がとれたというのでしょうか。いや、誰もとりはしないのです。絶対権力の歪さとそれに翻弄される市井の人々……度合いは違っても今も繰り返される現実は、人間の業なのでしょうか? そして、被害を被った人間はどうなってしまうのか? 人間の心の不思議さを感じずにはいられません。
『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』
4月26日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町他にてロードショー
監督:マルコ・ベロッキオ
脚本:マルコ・ベロッキオ、スザンナ・ニッキャレッリ
出演:パオロ・ピエロボン、ファウスト・ルッソ・アレジ『シチリアーノ 裏切りの美学』、バルバラ・ロンキ『甘き人生』、エネア・サラ、レオナルド・マルテーゼ『蟻の王』
2023/イタリア、フランス、ドイツ/カラー/イタリア語/134分/原題:Rapito/映倫:G
配給:ファインフィルムズ
(C)IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
イタリア中が恐怖に包まれた誘拐事件の真相を描いた“340分の大長編”公開決定
ORICON NEWS / 2024年5月7日 23時47分
-
作家サミュエル・ベケットの人生を描いた『まずは踊れ』、ボート競技に賭ける女性たちの物語『あのボートに乗って』など「アイルランド映画祭2024」が開催
NeoL / 2024年5月7日 10時0分
-
ポーランドの巨匠「闘わないのであれば、芸術を作ることに意味はない」『人間の境界』本編映像解禁
cinemacafe.net / 2024年5月3日 17時15分
-
19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月25日 18時25分
-
6月は大豊作!『トゥモロー・ウォー』日本初放送!/超大作インド映画『RRR』放送決定!インド映画の聖地Ramoji Film Cityオンラインツアーご招待キャンペーン&ラージャマウリ監督特集決定!
PR TIMES / 2024年4月25日 14時45分
ランキング
-
1山口智子は「キレイ」中山美穂は「似合ってない」“50代金髪”イメチェン評価が分かれたワケ
週刊女性PRIME / 2024年5月23日 11時0分
-
210年前に大大大ブレークした芸人、当時のギャラを告白 周囲も“ドン引き”の金額…「恐ろしいなテレビ」
スポニチアネックス / 2024年5月23日 11時24分
-
3星野源への「憶測」投稿を否定 「法的措置を含む対応を検討いたします」 アミューズ法務部が午前3時に緊急対応
よろず~ニュース / 2024年5月23日 9時50分
-
4元「ジュディマリ」YUKI、52歳の姿に衝撃広がる「やばい」「なんで」「こんなことに…」
スポーツ報知 / 2024年5月23日 12時35分
-
5北村匠海「何年経っても攻撃は止むことはない」 誹謗中傷被害に悲痛「傷つける為に言葉を使わないで」
スポニチアネックス / 2024年5月23日 15時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください