八重山に津波警報 その時、赴任3日目の記者は パジャマで飛び出して
沖縄タイムス+プラス / 2024年4月11日 16時26分
台湾東部沖地震が発生した3日午前8時58分。私は石垣市真栄里の自宅アパートでパジャマのままひげをそっていた。揺れには全く気付かなかった。突然けたたましくスマホのアラームが鳴る。シェーバーの手を止め、画面を見ると「津波」の文字。慌ててテレビを付けたが、パニックで何と表示されていたかはあまり記憶がない。
4月の人事異動で、2日前に八重山支局に赴任したばかりだった。土地勘はほぼないが、自宅は海から数百メートルほど。逃げなくては-。そう思った瞬間、「待てよ。避難した住民に取材するだろうから歯磨きしないと」などと余計なことが頭に浮かび、部屋の中を行ったり来たりした。
スマホが鳴る。本社の総務局長からだ。
「何しているの?」
「どうしましょうかね」
「いいから逃げて」
半袖半ズボンのパジャマのまま、サンダルを履いて家を飛び出す。目の前を子どもたちが海とは逆に向かって走って行った。本当にまずいかもしれないと思ったが、どこに逃げたらいいかが分からない。生まれて初めて恐怖で手が震えた。
またスマホが鳴る。今度は前任の先輩記者からだった。「高台のバンナ公園に逃げて」。たぶん子どもたちが走って行った方向だろう。車に乗り込み、社用のスマホで自撮りしながら周囲の様子を実況しつつ公園に向かった。坂の一本道。徒歩で逃げる人、座り込む人たちの姿もあった。
道路はひどい渋滞で、全く進まない。不安になり本社の先輩記者に電話した。
「あとどのくらいで津波が来るんですか」
「分からない。そのまま逃げ続けろ!」
車を脇に寄せて止め、歩いて高台に向かった。汗でサンダルがキュッキュッと鳴る。足が痛く歩きづらい。せめて靴を履くべきだったと心底後悔した。
バンナ公園に着くと、避難してきた住民らが心配そうに海の方を見つめている。午前10時40分、取材で話を聞いているうちに、津波警報が注意報に切り替わった。ほっとしたのもつかの間、市役所で市長の緊急記者会見があるとの連絡を受け、急いで向かった。
車を取って市役所に着くと、他社の記者はかりゆしウエアを着ていた。「津波が来るからすぐ逃げろ」との警告通り、パジャマのまま逃げた選択は間違っていない。ただ「『石垣をなめているな』と思われたらどうしよう」と少し不安になった。終了後、中山義隆市長に「赴任早々大変でしたね」と同情された。
今回は幸いにも大きな被害がなかったが、見知らぬ土地で不安に駆られた観光客も多かっただろう。引っ越しや旅行先では第一に避難場所を確認しておくことが大事だと痛感した。できる限り徒歩で逃げることも教訓になった。
今、自宅玄関には水や防災グッズが入ったバッグを置いている。命を守るために、どんなに慌てていても、靴を履くことを忘れずにいたい。
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