[社説]嘉手納で降下訓練 日米合意は崩壊寸前だ
沖縄タイムス+プラス / 2024年4月21日 5時0分
「例外」は解釈次第で緩くなり、運用次第で「常態化」する。その結果、県や地元自治体の切実な声は軽くあしらわれ、ないがしろにされる。
嘉手納基地での米軍のパラシュート降下訓練は、19日でついに5カ月連続となった。 不可解なのは日米双方の対応である。
読谷補助飛行場で実施していたパラシュート降下訓練は、1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、伊江島補助飛行場に移すことが合意された。
2007年に追加合意が交わされた際「あくまでも例外的な場合」に限って、嘉手納基地での訓練が許されることを確認した。
伊江島補助飛行場の滑走路は修復の必要があり、工事の完了までに数カ月から1年半かかるという。
防衛省は「例外に該当する」と判断、5カ月連続の訓練であるにもかかわらず、これを認めている。
「例外」と見なす根拠について(1)定期的でなく(2)小規模で(3)緊急の必要性に基づき(4)伊江島の滑走路の不具合が継続している-ことを挙げる。
伊江島でのパラシュート降下訓練が練度維持のために必要だというなら、優先して滑走路の修復工事を急ぐべきではないのか。
滑走路の不具合が長期にわたって継続すると知りながら、米軍はなぜ、工事を急がないのか。
なぜ、県外・国外の基地を利用しないのか。
嘉手納があるさ、という安易な姿勢が見え隠れする。
■ ■
嘉手納基地などの騒音規制措置は「運用上の所要のために必要」な場合には、午後10時を超えて飛行できることになっている。
その結果、何が起きているか。例外の常態化によって騒音規制措置が有名無実化しているのである。
この構図はパラシュート降下訓練も変わらない。例外の常態化によって例外という言葉は本来の意味を失い、形骸化する。
政府は普天間飛行場について、「世界一危険な飛行場」だと言い、「一日も早い危険性除去」を強調する。
だが軟弱地盤の改良工事によって、返還は、はるかかなたに遠ざかった。
その時期を明示することさえできないのに、政府は壊れた蓄音機のように「一日も早い危険性除去」と「辺野古が唯一の選択肢」を繰り返すだけである。
無理が通れば道理引っ込む。基地問題はその典型だ。
■ ■
米軍の存在が安全保障上重要だというのなら、全国がその負担を負わなければならない。それが嫌なら地位協定を改め、米軍の行動にも国内法を適用し、実質的な負担軽減を図ることだ。
結局、沖縄に我慢してもらうしかないという基地押し付けの論理を、沖縄現代史研究者の故新崎盛暉氏は「構造的差別」と呼んだ。
米軍は記者会見を開いて県民に直接、事情を説明すべきである。米軍、防衛省双方に説明責任があり、防衛省経由の説明だけで終わらせてはならない。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
米軍、23日にパラシュート降下訓練を計画 嘉手納基地で6カ月連続
沖縄タイムス+プラス / 2024年5月21日 17時24分
-
玉城デニー知事、常態化する米軍パラシュート降下訓練に抗議 外務省で辻副大臣と会談【動画あり】
沖縄タイムス+プラス / 2024年5月10日 11時52分
-
嘉手納降下訓練の中止を要請 沖縄知事、基地負担軽減も
共同通信 / 2024年5月10日 11時12分
-
「降下訓練中止を」と嘉手納町長 米軍基地で5カ月連続実施
共同通信 / 2024年5月2日 18時1分
-
玉城デニー知事「上京し日米両政府に抗議と申し入れ」 米軍パラシュート降下訓練で 5月の早い時期で調整
沖縄タイムス+プラス / 2024年4月26日 11時26分
ランキング
-
1宝島さん夫婦殺害、元俳優「車庫に入ってない」と容疑否定…韓国籍の男は「怖くて引き受けた」
読売新聞 / 2024年5月21日 21時24分
-
2「県連をなめているのか」=自民車座で怒りの声
時事通信 / 2024年5月21日 20時22分
-
3出産費用、自己負担なしを検討 政府、正常分娩に保険適用案
共同通信 / 2024年5月21日 21時5分
-
4イラン大統領の事故死が中東情勢にもたらすもの 事故陰謀説、中東の武装勢力への支援、国内経済…
東洋経済オンライン / 2024年5月21日 17時0分
-
5安倍元首相銃撃事件も裁判員裁判の対象 負担や重圧にプロのサポートを、制度開始15年
産経ニュース / 2024年5月21日 19時11分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください