[社説]海自ヘリ2機墜落 相次ぐ事故 背景に何が
沖縄タイムス+プラス / 2024年4月23日 5時0分
20日深夜、伊豆諸島の鳥島東方海域で海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が墜落した。
事故はイージス艦や護衛艦など9隻とヘリ6機が参加する大規模な訓練中に起きた。哨戒ヘリ1機の通信が午後10時38分ごろ途絶。同11時4分には別の1機とも連絡が取れないことが判明した。
それぞれ4人ずつの計8人が搭乗していた。訓練に参加していた艦艇やヘリの捜索で1人が救助されたものの、死亡が確認された。
自衛隊と海上保安庁は捜索を続けるが、残る7人の行方は不明だ。何より人命救助に全力を注いでほしい。
2機は海自が「最重要任務」と位置付ける対潜水艦戦(対潜戦)の訓練中だった。
哨戒ヘリは海上でホバリングしながらつり下げたソナーを海中に入れ、音を出して潜水艦を探す。位置を正確に特定するため通常は2、3機で絞り込むという。
海自は、その際に衝突した可能性が高いとみる。2機のフライトレコーダーには現時点で機体の異常を示すデータはないという。
対潜戦の夜間訓練では度々事故が起きている。2017年には青森県沖で1機が墜落し死者が出た。21年にも奄美大島沖で2機が接触する事故が発生した。
互いの機体が見えない夜間は特にリスクがある。3年前の事故で海自は、複数の航空機が展開する場合は高度差をつける指示を出し、僚機と接近しすぎた場合に警報が作動するシステムを搭載するなどの再発防止策を打ち出した。
教訓は生かされたのか。詳しい原因究明が求められる。
■ ■
中国の海洋進出などを念頭に、政府は防衛力強化を掲げる。今回の訓練の目的は、海自護衛艦隊部隊のトップが隊員の技量を確認する「訓練査閲」だった。
一方、海自の現場部隊は中国への対処に追われ、基礎的な訓練が不足していると訴える隊員もいる。
自衛隊では昨年4月にも、宮古島沖で陸上自衛隊のヘリが墜落して10人が死亡する事故が起きた。
この事故も陸自幹部らが現場を上空から視察するために飛行していた最中に起きた。
わずか1年後の大事故であり、「非常事態」と受け止めなければならない。
パイロットなど搭乗員の熟練度は訓練内容に達していたか。防衛力強化を急ぐあまり、無理なスケジュールになっていないかとの視点からも検証が必要だ。
■ ■
米軍基地が集中する県内でも訓練中の墜落事故が後を絶たない。16年には米軍普天間飛行場所属のオスプレイが夜間の給油訓練中、名護市安部の沖合に墜落した。現場は集落に近く一歩間違えれば住民を巻き込んだ惨事となる恐れもあった。
県内では自衛隊の配備強化に伴い大規模な日米共同訓練も頻回に行われている。相次ぐ自衛隊機の重大事故に不安感を抱く県民は少なくない。
海自は原因究明を急ぎ、再発防止策をまとめた上で、その情報について公開を徹底すべきだ。
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