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[社説]復帰52年の沖縄振興 本来の目的に立ち返れ

沖縄タイムス+プラス / 2024年5月15日 4時0分

 沖縄はきょう復帰から52年となる。半世紀を経て基地はなお広大に広がり、米軍が自由に使い続けている。同時に「台湾有事」が喧伝(けんでん)されて、自衛隊の配備も強化。基地の加重負担が増している。

 足元の暮らしを見ると、1人当たりの県民所得はいまだ全国最低水準である。沖縄の自立経済の確立は道半ばだ。

 苛烈を極めた沖縄戦と四半世紀に及ぶ米軍統治、集中する米軍基地の存在など、沖縄振興は沖縄の特殊性を踏まえた国の責務とされる。1972年の復帰を機に「本土との格差是正」を目指して始まり、10年ごとに更新されてきた。2002年の第4次計画からは「民間主導の自立型経済の構築」を目的とし、12年の第5次計画からは県が策定の主体になった。22年度までに約14兆4千億円が投じられた。

 沖縄の自主性を尊重しつつ、自立的発展や豊かな住民生活への寄与を目指しているとされるが、安倍晋三政権以降は基地とのリンクがあからさまだ。

 沖縄関係予算は、名護市辺野古沖の埋め立てを承認した仲井真弘多県政時代、3794億円が概算要求されたのをピークに、新基地建設に反対する翁長雄志前知事や玉城デニー知事の下で減り続け、近年は2600億円台にとどまっている。

 使途の自由度が高く、県の主体性が発揮できる沖縄振興一括交付金も減額傾向だ。

 24年度予算案では10年ぶりに増額されたが、県側の要望にはほど遠い状況となっている。

■    ■

 一方で増えているのが、県を介さず、国が市町村に予算を直接交付する沖縄振興特定事業推進費だ。基地政策に協力的な市町村に予算を国が融通する制度で、19年度に突如導入され、拡大している。

 また総合的な防衛体制の強化に向けた公共インフラ整備を巡っては、政府が那覇空港や石垣港を「特定利用空港・港湾」に位置付け、97億円を沖縄関係予算の社会資本整備費に組み込んだ。

 整備した空港や港は、有事の際に自衛隊や海上保安庁が使用することを想定している。防衛利用に対する「見返り」の色が濃く、沖縄振興の本来の趣旨とは異なる。沖縄では、米軍の利用につながる可能性が高く、さらなる軍事負担への懸念が残る。

 沖縄振興が「沖縄の自立的発展」「豊かな住民生活の実現」といった本来の目的から逸脱してはいないか。基地を置くことを目的とする「基地化」の一途をたどっている。

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 県の試算によると、那覇市の新都心や小禄金城、北谷町の桑江北前の3地区では、基地返還後の跡地開発に伴う直接経済効果の合計が、返還前の28倍の年間2459億円となっているほか、雇用者数は72倍の2万3564人になっている。

 沖縄の米軍基地は人口密度の高い本島中南部でも地域を分断する形で広がってる。基地が都市機能や交通体系、土地利用を妨げ、県経済の足かせになっていることは間違いない。過重な基地負担こそが、沖縄の振興を妨げている大きな要因ではないか。

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