日常風景に溶け込む宇宙服 少し不思議な存在感「宇宙飛行士の日常」
おたくま経済新聞 / 2022年1月31日 18時0分
地球に降り立った宇宙飛行士(宇宙飛行士の日常さん提供)
多くの民間人が宇宙へ旅立ち、宇宙旅行が身近になりつつあるとはいっても、宇宙飛行士は特別な存在。そんな宇宙服姿の「宇宙飛行士」が日常の風景に溶け込む、ちょっと不思議な写真を投稿するTwitterアカウントがあります。
その名も「宇宙飛行士の日常」。一体どういう方なのか、宇宙飛行士さんに話をうかがいました。
何気ない日常の風景に、突如現れた宇宙服姿の人物。宇宙飛行士がそこにいるだけで、見慣れた世界は日常と非日常の境があいまいになっていきます。
自作の宇宙服を着て出かけ、写真を撮影してはTwitterやInstagramに投稿している「宇宙飛行士」さん。もともとはSFの自主制作映画を企画し、その一環で宇宙服を作ったのがきっかけだったといいます。
映画の企画自体は、紆余曲折や新型コロナウイルス禍などの外的要因もあり、残念ながらお流れに。手元に残ったロシアのソコルとアメリカのアポロ月面宇宙服を見て、せめて宇宙服を使った写真だけでも……と、撮影を始めたそうです。
アポロ計画で月面への第一歩を記した様子をイメージし、公園にある滑り台の階段を降りていく様子は「地球面着陸」と題されています。ちょっとユーモラスな感じもしますが、地球だって宇宙にある惑星のひとつということを再認識させられるようです。
宇宙飛行士は宇宙服ごとに「ソコルくん」「アポロくん」と呼ばれています。設定としては、基本的に全員が別人、とのこと。
様々なところに出かけていく宇宙飛行士。場所については「自転車で関西をうろつくのが趣味なので、そこで見つけた良い感じの場所をロケハンしています。『ここに宇宙飛行士がいたら非日常感出るな』という場所」だそうで、ちょっと廃墟っぽいところなども好きなんだとか。
撮影は宇宙服を着た人物に対し、意図を説明しながら進めているんだそう。「映画のワンカットを意識して撮影しています。日常の中の非日常がテーマなので、写真を見た時に二度見してくれるような、『なんで?』と前後に何が起こってこうなったのか感を演出しています」と裏側を語ってくれました。
都会の雑踏を歩く宇宙飛行士は、確かに存在しているのにどこかフィクションのよう。日常と非日常を隔てるラインが、ぐにゃりと歪んで溶け合っていくような感じにもなります。
また、風景の中にポツンといる、というカットも印象的。存在自体があいまいになり、見えないものを見つけてしまったような、周囲の人にも確かめたくなりそうです。
これらの写真は、あえて何の文字情報もつけずに投稿されています。「最初はタイトルをつけていたのですが、フォロワー様が各々自分の解釈でショートショートを引用で書いてくださるようになり、こちらも『なるほど、そう捉えたか』と面白く感じ、今はタイトルも何もなしで上げています」と宇宙飛行士さん。
もちろん、個々の写真には意図したテーマがあるそうですが「自由に物語を妄想してくれてOKです」とのこと。文字情報が付加されていないだけに、より写真を見ての想像が膨らみます。
地球とは違う場所に行くために着用する宇宙服。だからこそ、日常風景ではどことなく違和感を覚えてしまうのかもしれません。
これら「宇宙飛行士の日常」を捉えた写真は、写真集にまとめられているほかグッズ化もされており、ECサイト「SUZURI」でも購入が可能とのこと。現在は新しい宇宙服を作っているそうなので、いずれTwitterやInstagram(utyuiroiro)、公式サイトに第3の宇宙飛行士が「地球面着地」することになりそうです。
#2021年もあと少しなので今年の作品の中で特に気に入っている作品を上げる pic.twitter.com/ZZhcBxIiJT
— 宇宙飛行士の日常 (@utyuiroiro) December 12, 2021
<記事化協力>
宇宙飛行士の日常さん(@utyuiroiro)
(咲村珠樹)
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