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「発達障害」を乱用する風潮にモヤモヤ 自閉症児の母が覚える違和感と憤り

オトナンサー / 2024年4月6日 8時10分

「発達障害」という言葉が安易に乱用されている現実(べっこうあめアマミさん作)

 ライター、イラストレーターとして活動するべっこうあめアマミさんは、知的障害を伴う自閉症がある9歳の息子と、きょうだい児(障害や病気を持つ兄弟姉妹がいる子ども)の5歳の娘を育てながら、発達障害や障害児育児に関する記事を執筆しています。

 一昔前に比べ、今は「発達障害」という言葉が身近になってきました。この言葉が広まることは良いことですが、逆に、安易に使うことで弊害も出てきているのではないでしょうか。今回は、アマミさんが「発達障害」という言葉について、日々思うことを紹介します。

■「発達障害」の勝手なイメージが一人歩き?

 毎年、4月2日から4月8日は、「発達障害啓発週間」です。これは、同月2日の「世界自閉症啓発デー」を起点に、自閉症をはじめとする発達障害について、社会全体の理解を深める目的で定められたものです。この期間は毎年、シンポジウムが開催されるほか、東京タワーや大阪城といった、国内の代表的な建物が青色にライトアップされるなど、さまざまな啓発活動が催されます。

 そのかいもあり、世間には「発達障害」「自閉症」といった言葉がよく知られるようになってきたのではないでしょうか。

 一方、最近では、「発達障害」という言葉だけが一人歩きし、あまり意味を深く理解しないまま、安易に「発達障害ではないか」と他人を断定する人も多くなっているのではないかと思うのです。

「ちょっと変わっている」「考え方や行動が極端」「空気が読めない」など、「普通」から少しでも離れているように感じたらすぐに発達障害を疑う。

 自分と合わない人に対して、相手のことをよく知りもしないのに衝動的に「発達障害」とやゆする。

 そういった言動が、現実世界でもネット上の世界でも、散見されます。

■本当に知識がある人ほど、安易に使わない言葉

 発達障害とは、発達障害者支援法において、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎(はん)性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。

 確かに、上記の定義の中に含まれる障害がある人の中には、考え方や行動が極端な人や、一風変わった独特の空気感を持つ人もいると思います。著しく注意力が欠けていたり、多動傾向があったりする人もいるでしょう。

 しかし、それらは全て、発達障害がある人が抱えているかもしれない特性の一つに過ぎません。

 発達障害がある全ての人に当てはまるものでもなければ、発達障害がない人にだって、表れる特性だと思います。

 つまり、発達障害は、定義づけしようとすると非常に幅が広い障害ですし、「グレーゾーン」という言葉もあるくらい、あいまいな部分が多い障害です。素人が安易に「あなたは発達障害だ!」などと、断定できるはずがないのです。

 本来、発達障害などの障害名の判断は、医師しか行うことができません。そのため、たとえ障害に詳しい支援者の人でも、安易に障害名を示唆することはしません。

 私の息子には自閉症がありますが、この診断名も、医師以外の人からはかたくなに告げられませんでした。

 以前、障害について多少知識がある人から、息子について、「自閉症ではないか」「知的障害だと思う」などと言われたことがありましたが、こういうことを断定形で直接本人や家族に言う人ほど、知識は浅いものです。

 本当に発達障害に対する知識がある人ほど、安易に障害名は出さないと感じています。

■「発達障害」という言葉で人を断定するのはとても失礼なこと

 誰かに対して「発達障害だ」と言う人の中には、明らかな悪意を持ってやゆする言葉として使う人もいると思います。

 一方、全く悪意はなく、「その人のためを思って」「教えてあげた」というつもりの人もいるのではないでしょうか。しかし、そういった言動は、悪意があってもなくても、本当に発達障害で悩んでいる人に対して大変失礼なことです。

 悪意がある場合は言わずもがな、悪口のバリエーションの一つのように「発達障害」を使われたら不愉快極まりないですし、悪意がなくても、「発達障害」を非常に軽んじているような気がしてしまうのです。

 私の息子には発達障害の一つである自閉症がありますし、息子を育てている中で、いかに自閉症という障害が大変なものかを身をもって体験してきました。

 息子には謎のこだわりがあります。また、床の色が違うだけで動かなくなったり、想像もできないタイミングでかんしゃくを起こしたりするほか、以前は自宅の壁紙やふすまをボロボロにしたことがありました。

 息子に障害があると、さまざまなタイプの自閉症があるお子さんと知り合うことがありますが、それぞれ皆さん、タイプは違えど「障害」と判断されるにふさわしいような大変さを抱えています。

 それなのに、ちょっと普通と違う、変わっているだけで「発達障害」という言葉を乱用されたのではたまりません。言われた相手だって、気分が悪くなるでしょう。

 このように、「発達障害」という言葉で人を断定するのは非常に失礼な行為だということは、もっと知られてもいいと思います。

■人をラベリングする言葉として使わないで

 発達障害の啓発が進み、この言葉を聞き慣れてきた今だからこそ、今後は慎重に使われるべき重みがある言葉という認識が広まってほしいと感じています。

 慎重にといっても、もし、本当に発達障害なのかもしれないと悩んでいる人がいたら、早急にそのことを知り、支援者とつながった方がいいでしょう。家族などでその傾向が強い人がいて、周囲も接し方に困っているのであれば、受診を促した方が良い場合もあるかもしれません。

 だからといって、何でもかんでも発達障害ではないかと疑ってしまうのも違うと思うのです。このあたりの兼ね合いは難しいですが、「発達障害ではないか?」「自閉っぽい」などの言葉が安易に飛び交うのを見ると、自閉症がある子の親としては不快な気持ちになります。

 もちろん、本当に悩んでいる人がより相談しやすく、オープンにしやすい環境を整えることは大切ですが、非常にセンシティブな部分であるからこそ、周囲は言葉の扱いに慎重になるべきではないでしょうか。本人が自分で「発達障害だ」と公言するのと、周囲が「発達障害だ」と指をさすのは全然違います。

 正しく発達障害を知り、安易に他人をラベリングする言葉にしないでほしいと切に願います。

ライター、イラストレーター べっこうあめアマミ

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