脂質が多いイメージがあるけど…「豚こま切れ肉」って食べるメリットある? 率直な“疑問”を管理栄養士に聞いてみた
オトナンサー / 2024年4月9日 9時10分
スーパーに行くと、豚の「こま切れ肉」が売られています。豚の他の部位の肉よりも脂質が多いといわれていますが、本当なのでしょうか。食べると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
豚肉に含まれる栄養素のほか、豚こま切れ肉のお勧めの調理方法などについて、渋谷DSクリニック(東京都渋谷区)に在籍する管理栄養士の板橋瑠美(いたばし・るみ)さんに聞きました。
■バラ肉よりもカロリーや脂質は低め
Q.そもそも、スーパーで販売されている「豚こま切れ肉」とは、どのような肉なのでしょうか。
板橋さん「豚こま切れ肉とは、豚肉を加工する際に出るさまざまな部位の肉の切れ端を集めたものです。豚こま切れ肉とよく似ている肉に『切り落とし肉』がありますが、こちらはバラやモモなど、1種類の部位の切れ端肉を集めたものです。
豚こま切れ肉は、豚肉の肩やモモなどさまざまな部位の肉がランダムに、小さく薄くカットされた状態で入っているため、切り落とし肉よりも安価に購入できるのがメリットです。カットしなくてもそのまま使えるほか、火が通りやすいため短時間で調理可能で、いろいろな料理に使用できます」
Q.「豚こま切れ肉は脂質が多い」といわれていますが、本当なのでしょうか。脂質が多いのは、どの部位の肉なのでしょうか。
板橋さん「豚こま切れ肉は、肩やモモの切れ端肉が多いといわれていますが、バラやロースなどの切れ端肉も入っているため、脂質が多い部分が含まれていることがあります。そのため、豚こま切れ肉は、パックによって豚肉の脂身の量に違いがあります。
文部科学省の『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』によると、豚こま切れ肉によく含まれる肩肉やモモ肉などの栄養素は次の通りです。
■豚(大型種肉)の肩肉(脂身付き、生)の100グラム当たりの栄養素
エネルギー:201キロカロリー
たんぱく質:18.5グラム
脂質:14.6グラム
炭水化物:0.2グラム
■豚(大型種肉)のモモ肉(脂身付き、生)の100グラム当たりの栄養素
エネルギー:171キロカロリー
たんぱく質:20.5グラム
脂質:10.2グラム
炭水化物:0.2グラム
■豚(大型種肉)のバラ肉(脂身付き、生)の100グラム当たりの栄養素
エネルギー:366キロカロリー
たんぱく質:14.4グラム
脂質:35.4グラム
炭水化物:0.1グラム
■豚(大型種肉)の肩ロース肉(脂身付き、生)の100グラム当たりの栄養素
エネルギー:237キロカロリー
たんぱく質:17.1グラム
脂質:19.2グラム
炭水化物:0.1グラム
■豚(大型種肉)のヒレ肉(赤肉、生)の100グラム当たりの栄養素
エネルギー:118キロカロリー
たんぱく質:22.2グラム
脂質:3.7グラム
炭水化物:0.3グラム
脂質量はバラ肉が一番多く、肩ロース、肩、モモ、ヒレの順に低くなっていきます。豚こま肉は、バラ肉の切り落としほどカロリーや脂質は多くありませんが、脂質の摂取量を抑えている場合は、購入時に脂身の白い部分が少ないものを選びましょう。また、肉を選ぶ際はドリップ(赤い肉汁)が出ていないものがお勧めです。ドリップが出ていると、肉の臭みの原因になってしまうため、選ぶときに確認してみるとよいですね。
Q.「豚こま切れ肉」の主な栄養素について、教えてください。
板橋さん「豚こま切れ肉は、含まれている部位によって個体差はありますが、豚肉であることに変わりません。豚肉には三大栄養素の一つであるたんぱく質が豊富に含まれており、筋肉や皮膚、髪の毛などを作る材料となります。そのため、たんぱく質は私たちの体づくりには欠かせない栄養素です。
たんぱく質は複数のアミノ酸から構成されており、体内では作ることができないアミノ酸も含まれます。それらは必須アミノ酸と呼ばれており、食事で取り入れなければなりません。
必須アミノ酸を含む、さまざまなアミノ酸がバランス良く含まれているのが豚肉です。脂質の多い部位は脂質の取り過ぎにもつながりやすくなってしまいますが、脂質がほどよく含まれる豚こま切れ肉は、適量で食べる分には問題なく、毎日の体づくりや健康のために取り入れるのがお勧めです。
他にも、豚肉はビタミンB群が豊富に含まれており、特にビタミンB1は他の食品よりも豊富に含まれています。ビタミンB1は、糖質の代謝に必須のビタミンで、米やパンなどの糖質を燃やしてエネルギーに変えるためには必須の栄養素です。
また、疲労回復のビタミンとも呼ばれており、運動でエネルギー消費量が多い人や、なかなか疲れが取れない人は、積極的に摂取するのがお勧めです。ビタミンB1以外にも、脂質の代謝をサポートするビタミンB2のほか、たんぱく質の代謝をサポートするビタミンB6も含まれています。
このほか、豚肉には鉄分も含まれているため、貧血の予防や対策にもぴったりの食材です」
■お勧めの調理方法は?
Q.「豚こま切れ肉」を使ったお勧めの調理法について、教えてください。肉の栄養素を効率的に摂取するために、どのように調理するとよいのでしょうか。
板橋さん「豚こま切れ肉は、先述のように、小さく薄くカットされているため、切る手間がなく火の通りも早いため、時短料理にもぴったりです。さまざまな料理にも使いやすい肉ですが、特に栄養素を意識したお勧めの調理法を紹介します」
■煮汁やゆで汁は捨てない
豚肉に豊富に含まれているビタミンB1は水溶性ビタミンの一つで、水に溶けやすい性質があります。豚しゃぶなどで食べる場合は、ゆでるよりも電子レンジで加熱するのがお勧めです。また、スープやカレーなどのように、溶けた栄養素ごと食べられる煮込みメニューも良いでしょう。
■ニンニクやタマネギを加える
ニンニクやタマネギに含まれる「アリシン」という成分は、ビタミンB1の吸収を高める働きがあります。豚肉とタマネギを一緒に炒めたり、ニンニクをアクセントとして使ったりすることで、料理の味だけではなく、栄養面でもメリットがある組み合わせとなります。
■酸っぱいものと組み合わせる
お酢やレモン汁に含まれる「クエン酸」には、疲労回復の効果もあるといわれています。そこで、豚しゃぶのタレを酸味のあるタレにしたり、調味料としてポン酢を使ったりすると、疲労回復効果がある豚肉との相性は抜群です。手軽に手に入る豚こま切れ肉を、毎日の食事に取り入れていきましょう。
オトナンサー編集部
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