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「推し活」人気アニメキャラのケーキ&弁当作り SNSアップは“逮捕”の可能性? 知的財産権に詳しい弁理士に聞いた

オトナンサー / 2024年5月19日 8時10分

人気アニメキャラのケーキ&弁当作りってダメなの?

 ゴールデンウィークも明け、“推し活”やケーキ作りをゆっくりと楽しんだりしている人もいるのではないでしょうか。2021年に人気アニメ「鬼滅の刃」のキャラクターを描いたオリジナルケーキを販売した職人を、警視庁が著作権法違反容疑で書類送検されたことがありました。職人のほか、一般の人でもアニメやマンガといったキャラクターのケーキや弁当を作ったり、販売したりした時に著作権が発生するのかなど、著作権について、知的財産権に関する業務を行う弁理士の永沼よう子さんに解説してもらいました。

■著作権法違反・複製権の侵害は著作物性・依拠性・類似性がポイント

Q.まず、人気アニメのキャラクターを描いたオリジナルケーキを販売し、職人が書類送検された件は、どこに違法性があったのでしょうか。

永沼さん「お弁当やケーキに描かれたキャラクターについて、誰が見てもそのキャラクターであると分かるほど“上手”に再現した場合、著作権法違反(複製権の侵害)が考えられます。

著作権侵害を判断するためには、次の3つのポイントを考える必要があります

(1)真似された側のイラストや画像が「著作物」かどうか(著作物性)
(2)ケーキに再現したイラストや画像が、元ネタのイラストや画像を参考にして作成されたものか(依拠性)
(3)ケーキに再現したイラストや画像が、既存のイラストや画像に似ているかどうか(類似性)

(1)についてですが、著作物とは自分の考えや気持ちを作品として表現したものを言います。『鬼滅の刃』のイラストは、作者が自身の思想や感情を創作的に表現した作品であるため著作物ということになります。(2)の「依拠」とは、元ネタを見て参考にしたかどうかということです。完全に偶然の一致で『鬼滅の刃』に似たキャラクターを描いたとしても著作権侵害にはならないというのが著作権法上のルールです。しかし、書類送検されたケースは、複製したイラストが『鬼滅の刃』のキャラクターであると知り、依頼を受けてケーキを作成・販売していたため、元ネタを見た・知っていたということになります。お客さんがオーダー前に送信したお気に入りの『鬼滅の刃』のキャラクター画像を元に、反転印刷させたシートにチョコレートペンで色付けしていたと話していて、元ネタを見た・参考にしていたというのは明らかでした。

(3)の類似性が一番参考になるポイントです。類似性とは、言葉の意味通り、再現されたイラストや画像が元のイラストや画像に似ているかどうかを意味します。判断のポイントはイラストや画像が“上手”に再現されていることです。 今回は、反転印刷させたシートにチョコレートペンで色付けしていたとのことですから、“上手”を超えて完全なコピーに近いのでしょう。裏を返せば、「これは鬼滅の刃のキャラクターを使ったキャラ弁よ」と渡されても、キャラクターとは似ても似つかない絵が書いてあった場合、著作権的にはセーフということになります」

Qでは、販売目的でなく、個人的に、キャラクターを描いたケーキや弁当を作ったり食べたりすることに違法性はないのでしょうか。

永沼さん「厳しい著作権法ですが、例外もあります。一つの例外は『私的使用』の範囲であればOKです。『親が子どもに』『夫婦間で』など、閉じられた関係の中でケーキや弁当を作って楽しむ分にはまったく問題ありません。
ぜひ、家族間で、キャラクターを描いたケーキやキャラ弁を作ったり食べたりすることを楽しんでほしいと思います。

ただし、ここにも例外の例外があります…。個人的に上手に作ったキャラ弁やケーキをSNSにアップしてしまうと、今度は著作権法の『公衆送信権』を侵害する可能性があります。

また、例え店ではなく家で作ったものだとしても、家族に渡すのではなくバザーなどで『販売』してしまうと著作権法の『複製権』を侵害する可能性があるのです。作る 場所だけではなく、どこで楽しむかも気にした方がよいといえるでしょう。

ではなぜ、そういった菓子や弁当がSNS上にアップされているのか…? 明らかな著作権侵害であっても見逃されているケースと捕まってしまうケースがあるのはなぜか…?

明確な基準はありませんが、今回のキャラクターケーキの場合、販売価格は一つにつき約1万5000円で、2年間で約400万円の売り上げがありました。

このように高価なキャラクターケーキを販売し、かつSNSを通じて営利的な宣伝も行っていたことから、著作権法において明確な著作権侵害であるとみなされたため、摘発されたと見られています。

しかし、例え自宅で作ったお弁当であっても、SNSにアップしたり違反行為をしていると、著作権侵害という意味では同じような結論に至る可能性もあります。基本原則として、お金もうけを目的としていなくても、著作権法の違反は許容されないということを頭に入れておいてもよいかもしれません」

Q.「使用料」についても、教えていただけますか。
永沼さん「キャラクターの使用について、使用料の相場は売り上げの3~5%が平均になっています。会社によっては、もっと高い場合もあります。

使用料について誤解されがちなのですが、誰でも使用料を支払えば使っていいというわけではありません。厳格な審査があり、個人事業主や中小企業にはそもそもライセンスしない、という方針の企業も多くあります。理由として、クオリティーを保証できなかったり、トラブルになった場合の解決がスムーズでないことなどが挙げられます。

キャラクターを保有する会社側も、使用料だけが目的ではなく、大切に築いてきたキャラクターのイメージを守り抜く責任があります。キャラクターが予期せぬ場面で望ましくない商品に使用されたりしてしまうとブランドイメージも損なわれる可能性があります。

そうしたリスクを管理するのは、当然のことでしょう。広く愛されているキャラクターを守るのは会社側の利益のためだけではなく、時にファンの心を守るものだと思います」

オトナンサー編集部

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