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故・瀬戸内寂聴さん、書斎から大量の句稿が発見される 「恋」「反戦・平和」「書く」などをテーマに綴る

NEWSポストセブン / 2024年5月10日 11時15分

2021年11月に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さん(写真/篠山紀信)

 2021年11月に99歳で亡くなった作家の瀬戸内寂聴さんが暮らした京都・嵯峨野にある「寂庵」の書斎から、大量の句稿が発見されていたことがわかった。原稿用紙の端やノート、切り抜いた新聞の隅やメモ用紙などに手書きで書かれていたもの。

 瀬戸内さんは95歳の頃、知人に宛てた手紙で「小説とちがい、私にとっては俳句は無責任な愉しみだけを与えてくれるので今では無二の友になりました。死ぬまでつづけるつもりです」と綴っていた。作家として、僧として多くの人の心に寄り添ってきた瀬戸内さんの数多くの遺稿は、大きな話題になりそうだ。

 句に取り上げられたのは「反戦・平和」「花」「恋」「書く」「生きる」など、瀬戸内さんの人生の写し鏡のようなテーマだった。

《あらびあの 殺戮やまず 牡丹散る》

 これは、1990年に勃発した湾岸戦争に対して平和を希求して詠んだ句だという。現在のイスラエルとガザ地区をめぐる状況を見たら、瀬戸内さんはきっと心を痛めることだろう。

《忘己利他(もうこりた) 異国に盡(つく)し 射殺され》

 今回発見された句を集めた、5月末に発売される遺句集『定命』に解説を寄稿した瀬戸内寂聴記念会事務局長の竹内紀子さんによると、この句はアフガニスタンで亡くなった医師・中村哲さんを悼んだ句だという。中村さんは長年、パキスタンやアフガニスタンで人道的な活動に尽力したが、2019年、アフガニスタンの東部・ジャララバードで何者かの銃撃を受けて亡くなった。

 瀬戸内さんは51歳で出家してからは性とは無縁だったが、恋心を持つことは大切にしていた。

《遠花火 肩寄せ見た日も ありしかな》
《返メール 待ちくたびれし くれの春》

 星霜を重ねても、スマートフォンを操っていた瀬戸内さん。誰かからの返事を待ち焦がれていたのだろうか。

 前述の遺句集『定命』で、元秘書の瀬尾まなほさんはこう稿を寄せた。

〈先生は仕事の合間や、ふといい俳句がうまれたときに書き残していた。めぐり巡らせ、ふっと湧き出た句をしたためる。晩年のささやかな愉しみであったことがよくわかる。そのときの想いなどを今、句を通して知ることが出来る。まるで日記、随想のようだ〉

 昨年秋に三回忌を迎えた瀬戸内さん。その作品は、まだまだ多くの人の心を震わせそうだ。

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