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リーダーシップとキャプテンシーの違いとは?

プレジデントオンライン / 2016年7月15日 11時15分

■リーダーに必要なこと

蒸し暑い夜、考えた。いったい、リーダーシップって何だろう。では、キャプテンシーとは。11日夜、東京都内で、ラグビーの元日本代表キャプテンであり、昨年のワールドカップ(W杯)の日本代表の精神的支柱であった広瀬俊朗さん(東芝)と、アフリカのスーダンで医療活動に奔走するNPO法人ロシナンテス理事長の川原尚行さんの興味深い“トークライブ”が行われた。

テーマが「未来の日本ラグビーを語る~組織のリーダーに必要なこと~」だった。イベント終了後、ふたりの著書を即売会で購入し、「リーダーに一番必要なこと」をそれぞれ本に書いてもらった。

広瀬さんは考えた挙句、自著の『なんのために勝つのか。』(東洋館出版社)の赤色のページに金色で「大義」と書き、川原さんはすぐに自著の『行くぞ! ロシナンテス』(山川出版社)の白色のページに「志あるのみ」と黒ペンを走らせた。大義も志も、何のために生きるのか、という根っこのことである。

「なんのために勝つのか」といえば、35歳の広瀬さんは「大義を実現するため」と漏らした。広瀬さんは著書の中で、日本代表の大義とは「日本のラグビーファンを幸せにできる喜び」「新しい歴史を築いていく楽しさ」「憧れの存在になること」と記している。

日本代表を指揮したエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は強烈なリーダーだった。まず、“ぶれない”。W杯に向けての目標を「日本ラグビーの歴史を変える」と明確に示し、すべてにおいて正しい準備を重ねていった。選手たちに「究極のハードワーク」も科した。ジョーンズHCは就任直後の2012年春、広瀬さんを主将に抜擢した(14年、リーチ・マイケルと交代)。

■嫌われることをいとわないか

いかにもキャプテンらしいキャプテンだった広瀬さんは、「リーダーとキャプテンはちょっと違いますね」と言った。

「僕はリーダーというより、キャプテンという感じだった。エディーさんはリーダーで、(選手に)嫌われることもいとわなかった。でもキャプテンは(チームメイトに)嫌われたら成り立たないんです。会社でいえば、キャプテンは中間管理職的なところもある。リーダーが考えていることと、選手の考えていることの間に立って、組織がスムーズにいくことを考えるのです」

でも、リーダーは自分でこうやりたいと考えたら、基本的にはそれを貫き通していく。だから、自分はリーダーにはなれないような気がすると広瀬さんは説明した。「僕はみんなに好かれたいし、嫌われることがこわいから」と冗談口調で言葉を足した。

なるほど、リーダーシップとキャプテンシーも微妙に違う。リーダーシップは先頭に立って多くのメンバーをリードしていく能力、キャプテンシーはキャプテンという立場に立って一緒にチームを率いていくことをいうのだろう。つまりは組織における責任の重さと責任範囲が違う。広瀬さんは「川原さんはリーダーという感じですね」と評した。

■リーダー教育にスポーツ現場を

50歳の川原さんも元ラガー。外務省の医務官としてスーダンに赴任し、39歳の2005年、現地で地元の人々への医療活動を徹底するために外務省を辞めた。今は現地に深く溶け込み、巡回診療だけでなく、小学校設立や水道管浄化事業などさまざまな社会貢献活動も行っている。川原さんの志とは、いわば「博愛」である。ただ「困っている人を助けたい」「共に生きる」ということなのだろう。

川原さんは、スバ抜けた行動力を持つ。「もう猪突猛進。恥ずかしい限りです」と笑う。

「これまでは、自分がまずやって、“みんな、ついてこい”みたいのが多かったですね。でも、ちょっと今、自分のスタイルに壁を感じています。ラグビーと同じような感じでぶち当たってやろう、というだけでは難しいですよ。広瀬さんを見習って、理論的に戦術を立てて、だからこう攻めなきゃいけないということをしないといけないのだと50(歳)にしてようやく学びました」

ふたりがともに賛同したのが、リーダー教育の必要性だった。川原さんはその教育の場としてスポーツ現場を持ち出し、「ラグビーに限らず、サッカーでもバレーボールでも、いろんなレベルがあるけど、それぞれの目標に向かって、戦力やスキルを高めていく。結果が必ず出る。そうやってスポーツで培ったものが実社会でもおそらく生きてくる。リーダーを育てていく場じゃないかなと思います」と言葉に実感を込めた。

広瀬さんは現役を引退し、ラグビーの選手会を立ち上げた。川原さんはスーダンに診療所を造り、医療活動の充実にまい進しようとしている。広瀬さんはキャプテンとしての指導力を極めてスポーツの価値を高め、川原さんは医療活動のリーダーとして国際交流と尊い人命を守ろうと努めているのである。

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松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。

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(ノンフィクションライター 松瀬 学)

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