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緊急チェック!「あなたの思考は、深いか浅いか」

プレジデントオンライン / 2016年10月27日 6時45分

上司からも部下からも結論を急かされる時代。あらゆることで即断即決をすることが常に良い結果をもたらすか。心理学者・植木理恵氏がベストな方法を伝授する。

■緊急チェック!「あなたの思考は、深いか浅いか」

↓あなたの習慣、行動にあてはまるものをチェックしてください。
□部長から叱られた。「自分は嫌われている」と感じる
□「プロジェクトのミスは自分のせいだ」と責任を感じる
□「新人ではないのだから、しっかりすべきだ」と自分を責める
□「あの人は本当はこう思っているんじゃないか?」と勘ぐる
□「あっちを買えばよかった」と後悔する

※チェックした数が少ない人ほど、深く考えている人。解説は本文をご覧ください。

■カレーとオムライス。作るならどっち?

作るのに一晩かかるカレーと、30分でできるオムライス。手間がかからないのはどちらの料理でしょう。実は、多くの主婦がカレーを選びます。なぜなら、オムライスは所要時間が短くても作業が煩雑ですが、カレーはシャトル鍋で10分煮れば、あとは放ったらかしで完成です。

これが時間の新法則。時短という言葉だけですぐに決めつけず、作業工程にまで考えを深く思い至らすことができるかが、鍵になります。

即断即決は仕事の鉄則です。ビジネスをするなら、どこかで結論を出さないといけません。そこで考えすぎることなく、すぐに正しい決断を下して行動に移せるのであれば、素晴らしいことです。ただしそれは正しい決断ができればの話。心理学的にも結論を急がされるのはよくない状態です。極論になりますが、「死にたい」とふと思った瞬間に自殺したら、まずいですよね。だから私は悩んでいる人に、「その悩みは、本当に今、悩まなきゃいけないことですか? 明日もう一度考えて結論を出してください」と問いかけます。

「明日できることは、明日しなさい」が、心を楽にするルールなんですね。

最近、結論延期能力が注目されるようになりました。知能テストのパズルの問題で、一致するピースが見当たらないとき、こだわっていつまでも探し続けるタイプと、一旦その問題を棚上げして次の問題に移るタイプがいます。ここで後者のように結論を先送りにできる人と、IQが高い人とは相関関係があるとわかっているのです。

そもそも、人間の心は大きな決断をすぐには下せないようにできています。ヨーロッパで臓器提供するかしないかというアンケートをとったところ、宗教的・文化的土壌はほぼ同じはずなのに、「する」の回答が優勢な国、「しない」が優勢な国で真っ二つに分かれました。なぜか。実は「する」派の国は、アンケートの質問が「臓器移植をしたくないと考えるなら、下の空欄にチェックを入れてください」、「しない」派の国では、同様に「臓器移植をしたいと考えるなら……」という文章だったのです。どちらの質問に対しても、回答者は空欄をチェックしませんでした。大きな問題を問いかけられると、人は判断できなくなり判断を保留します。実質的には判断を下しているのですが、少しでも結論を先送りしようとしているというアンケート結果が出たのです。

もっと身近な例でいえば、洋服売り場でぶらさがっているネクタイ。これが6本下がっていると、自然と選びたくなるから購買率が上がります。でもネクタイを30本揃えた店は、まず売れません。選択肢が多すぎて、客が「もう今日はいいや!」と投げてしまうのです。

このように、人は大事な決断を先送りにする思考のクセを持っています。だから早急に結論を出す必要性も承知のうえで、たまには少しゆっくり考えてみたらどうですか、と私はあえて言ってみたいのです。

■決断に時間をかけると「これにしてよかった」

時間をかけて考える行為の意味を、脳科学的にとらえてみましょう。

人間の思考はネットワークになっています。たとえば「自分の仕事を今後どうするか」について考えようとするとき、まず思い浮かぶのが「継続する」「転職する」。この基本的な選択肢を第1層ネットワークと呼びます。

そしてここからもうひとつ先を考えるんですね。「転職する」だったら「今とは全く異なる仕事を選ぶ」「今と近い仕事を選ぶ」。そして前者だったらさらに「新しい世界で自己実現したい」「リスクが高い」……このような連想ゲームが続いていく。いわゆる「マインドマップ」と言えば、ご存じの方もいるかもしれません。

考えるという行為は、連想の枝葉を伸ばすことです。そして枝葉同士がくっついて、「あっ、そうか」と感じた瞬間、考えることが終了します。あまり考えないのは枝が伸びずに浅い第1層ネットワークで終わる状態。ゆっくり考えるのは、枝をずっと伸ばして2層目、3層目へと広げる行為です。どちらのほうが選択肢や可能性が増えるかは、みなさんわかりますよね。

また時間をかけて考えて物事を決めると、将来の後悔が少なくなります。決断に時間をかけると納得感が残り、「やっぱりこれにしてよかった」といいところを探しますが、即決したことに対しては、「あのときもっと考えればよかった」と悪いところを探してしまう傾向があるのです。

悩むのは嫌かもしれませんが、決して意味のない時間ではありません。ある程度悩んだほうが自己合理化できて、後々、モチベーションの維持が可能になります。

■考え足りないから鬱になる。ストレスがたまる

考えるのが好きではない人は、「考えこむと、思い悩むことが増えるのでは?」というイメージを持っているのではないでしょうか。鬱になったり、過度のストレスをためる人は、考えすぎているように思われがちです。でも、これは逆。実際は考え足りていないから、落ち込むことのほうが多いのです。

考えないことが招く弊害を、4つ紹介しましょう。

ひとつが「拡大解釈」です。脳はインプットされた情報に似た情報を、瞬時に集めるようにできています。だから失敗して上司から怒られたら、「そういえばあのときも怒られたな」「他の上司からも説教されたぞ」と連想する。そして「自分は相当嫌われているんだ」と拡大解釈した結論を、短絡的に出してしまうのです。

2つ目が「自己関連づけ」。人は本能的に自分に関係があるように思考します。たとえばプロジェクトの成果が上がらなかったとき、誰も責めていないのに、「自分が役割を果たせなかったのが原因だ」と思ってしまう。

そして「べき思考」。すぐに答えを出せと促されると、「こうするべきだろう」「こうしないべきだろう」と、人は世間の規範になっている「べき」で判断してしまいがちです。自分の考えと一致するわけではないですから、結構ストレスがたまります。

最後が「マインドリーディング」です。「あの人は本当はこう思っているんじゃないか?」と根拠もなく勘ぐってしまう。これも疲れますよね。

この4つが、あまり考えていないときに起きる、特徴的なクセです。どれも時間をかけて考えたら、「一人の上司に怒られただけ」「プロジェクトの失敗は自分のせいではない」と思い至れることばかり。でも瞬時に答えを出そうとすると、さまざまなバイアスがかかるため、その結果、間違った答えに手を伸ばしてしまう確率が高くなります。

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心理学者、臨床心理士 植木理恵
東京大学大学院教育心理学科修了。日本教育心理学会で最難関の「城戸奨励賞」「優秀論文賞」を史上最年少で連続受賞。現在、カウンセラーおよび慶應義塾大学で講師をつとめる。著書に『脳は平気で嘘をつく──「嘘」と「誤解」の心理学入門』『人を見る目がない人』など。

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(心理学者、臨床心理士 植木 理恵 構成=鈴木 工 撮影=奥谷 仁)

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