米大統領選で都市の住人はなぜ不利だったか

プレジデントオンライン / 2017年1月29日 11時15分

アメリカ大統領選挙の「一票の格差」

■アメリカにもあった一票の格差問題

ドナルド・トランプの勝利に終わった米大統領選。しかし、得票数はヒラリー・クリントンが上回ったことが判明している。どうして得票数の少ない候補が当選できたのか。原因は二つある。

一つ目は、勝者総取り方式の選挙制度だ。米大統領選では、各州で得票数の多かった候補がその州に割り当てられた選挙人全員を獲得する。たとえばカリフォルニア州の選挙人は55人だが、ある候補が得票率6割で勝つと、6割の33人ではなく、全員の55人を総取りできる。

この方式で、なぜ逆転が起きるのか。テニスの試合をイメージすればわかりやすい。A選手とB選手が「7‐6」「0‐6」「7‐5」だった場合、セット数の合計は「14‐17」でBが多い。しかし試合は2ゲームを取ったAの勝ち。今回の大統領選も同じで、トランプは大負けした州があって総得票数で下回ったものの、スイングステート(激戦州)でことごとく競り勝ち、総選挙人数で勝利をおさめた。

もう一つは州間の「一票の格差」だ。各州に割り当てられる選挙人の数は、各州から選出される上院議員、下院議員の数と同じ。このうち下院議員は人口に応じて決まるため、格差はほとんどない。問題は、各州2人と決まっている上院議員。たとえばカリフォルニア州とワイオミング州では人口に約67倍の開きがあるが、どちらも上院議員分の2人の選挙人がいる。選挙制度に詳しい拓殖大学の浅野正彦教授は次のように解説する。

「建国当時、各州の人口は大きく変わりませんでした。しかし都市化によって都市部の人口が増え、大票田ほど一票の価値が下がってしまった。都市部に支持者が多い民主党のクリントンに不利でした」

■民意を適切に反映する理想の選挙制度とは?

米大統領選史上、得票数で上回った候補が負けたケースは初めてではなく、過去に4回あった。民意を適切に反映するために、選挙制度を変える動きはなかったのか。

「全州の合計で得票数が多い候補の勝者総取りにするとか、いまネブラスカ州とメイン州で行われているように、下院議員数に該当する選挙人は下院議員の選挙区ごとに決めるという代替案が出ています。いずれも既存の制度で利益を得てきた人たちに阻まれて進んでいません」

選挙結果はもう覆しようがないが、気になるのは、選挙後もリベラル派による反トランプの動きがおさまらないことだ。アメリカに限らず二大政党の国では国論が二分されがちだが、選挙のたびに国民が分断されてはたまらない。民意が割れたら割れたで、それを適切に反映する選挙制度はないのか。

「民意を反映しやすい選挙制度として比例代表制が知られています。ただ、比例代表は利益集団ごとに政党ができて収拾がつかなくなる。民意の反映と、政治のわかりやすさはトレードオフ。どちらを選ぶのかは国民しだいです」

(文=ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=拓殖大学教授 浅野正彦 図版作成=大橋昭一)

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