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左派メディア有名人を斬りまくる、個人ブロガーの「悪書」

プレジデントオンライン / 2020年10月20日 11時15分

藤原かずえ『テレビ界「バカのクラスター」を一掃せよ コロナ禍はテレビ禍』(飛鳥新社)

■左派メディア有名人を斬りまくる、個人ブロガーの「悪書」

タイトルがずばり示すように、特定の業界や番組、コメンテーター個人を名指しで批判し、いわゆるネトウヨ的なスタンスから、安倍政権を支持する意思がたっぷりの一冊。どう割り引いて優しい目で読んでも、お品がよろしいとは言いがたい。

もともと著者は左派のメディア有名人をギッタギタに斬ることで知られる個人ブロガーということで、その文章も実に横書きのブログ的で英語の論理学や心理学用語が頻繁に交じり、勢いに乗って軽妙な罵倒の言葉も顔を出す書き方となっている。細部から察するに、もしかして(昨今なぜか保守界隈で流行の)女性名を借りた男性著者の思考や文章ではあるまいか、というのが私の勝手な邪推である。

だが煽られまいと頭を冷静に保ち、懐疑的視線たっぷりに身構えるも、あまりに面白くて一気に読み終えてしまったのは、それほどにこの「コロナ禍はテレビ禍」との著者の指摘は、的を射ているということかもしれない。

新型コロナウイルスの感染拡大で東京が緊急事態宣言下にあったころ、外部との接触を避け自宅から出られない人々が情報を求めた先は、多くが速報性の高いネットであり、テレビであった。ウェブメディアは軒並み過去最高アクセス数を更新、長年ネットで細々と記事を書く私にも驚くほどのアクセス数がボーナスのようにやってきたし、少しでもテレビに出してもらうと大量の親戚や同級生や近所の人に見つかった。あのころ、誰もがそれぞれに“画面を見つめっぱなし”だったのだ。

■国民もどうかしていた

この本で初めて存在を知ったのだが、2015年に実施された「第6回世界価値観調査」なる(たいへん失礼ながらそのネーミングについ実在を疑ってしまいそうな、だが実在の)国際調査によると、「日本国民の73%が新聞から、94%がテレビから毎日情報を得ていることが判明」、そしていずれも「調査を実施した57カ国中で1位の数字」なのだという。

近年の新聞とテレビはオールドメディアと呼ばれて斜陽産業のレッテルを貼られてきたようだが、影響力はいまだ充分に大きい。コロナ禍でもテレビのワイドショーやニュース番組の情報は視聴者の心情と行動を逐一左右したし、見聞きした情報をまっすぐに受け止めてしまう素直な視聴者たちによって買い占め騒動が起きるなど、国民もどうかしていたのは我々の実感するところだろう。

ワイドショーやニュース番組が番組カラーとして打ち出す政治色、攻めるコメンテーターの発言に対する生放送ゆえの検証不足、素人発言の確信犯的な利用など、本書著者の偏向を割り引いても、指摘は納得感充分。ありったけの良識とリテラシーを全投入して懐疑的に読み、メディアのあり方を考えたいある種の「悪書」。

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河崎 環(かわさき・たまき)
コラムニスト
1973年、京都府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多くの分野で執筆中。著書に『オタク中年女子のすすめ』『女子の生き様は顔に出る』ほか。

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(コラムニスト 河崎 環)

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