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堀江貴文「コロナ不況でも儲かる飲食店と潰れる飲食店の決定的な違い」

プレジデントオンライン / 2021年3月25日 11時15分

撮影=ワタナベアニ

コロナ不況でも儲かる飲食店はどこが違うのか。実業家の堀江貴文さんは「たとえばラーメンチェーンの一蘭は、お客にオーダーシートを書かせるなど徹底的に効率を高めることで、収益性を高めている。ライバルを出し抜くには、業界の常識を疑うことだ」という――。

※本稿は、堀江貴文『死なないように稼ぐ。』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

■「ホットペッパーグルメ」に頼る店の問題点

飲食店は常連さんに支えられている。そして、常連さんになってもらうためには「最初に2〜3回お店に来てもらう」ことが先決だ。

飲食店の予約台帳サービス「トレタ」には、「常連化曲線」という概念がある。

来店回数を重ねるほど再来店率が上昇するが、その上昇率は直線的ではなく、二次曲線を描くように、最初の2〜3回で急激に上昇する。初めて来たお客さんのリピート率は10%程度だが、2回目に来たお客さんは32%程度、3回目は48%、4回目は58%、5回目は65%といった具合だ。そして、それ以降は7割以上のお客さんがリピートしてくれるようになる。

ポイントは最初に説明した通りで、「常連さんになってもらうにはまず3回来てもらう」ことが重要なのだ。

飲食店は集客を「ホットペッパーグルメ」に頼っているところが多いが、たいていは初回来店時のクーポンや割引が目当てのお客さんなので、2回目の来店につながる確率は平均よりも少ない傾向がある。

ヘアサロンやネイルサロンも「ホットペッパービューティー」を使っているお店が多いが、これも同じく新規の集客がメインだ。店舗の利益率向上にはむしろマイナスになっている。

クーポンが目的の新しいお客さんをたくさん集めるよりも、来てくれたお客さんへの対応をより丁寧にして、リピートしてもらうことが非常に大事だということだ。

常連さんになってもらうための戦略として「バーチャル行列」を作る手もある。

僕が考えた新しい概念で「行列ができているように見せること」ともいい換えられる。物理的な行列はなくても、「待っている人をプールする」ことで行列ができているのに近い状況を生み出し、人気があるとPRする作戦だ。

■60万人超のキャンセル待ちがいるドライヘッドスパ店

意識していないだけで、「バーチャル行列」を作っている人気店はけっこうある。

象徴的なのは、ドライヘッドスパの『悟空のきもち』だ。

運営会社の社長と対談したことがあるのだが、『悟空のきもち』には、現在60万人超のキャンセル待ちがいるそうだ。

人気の理由は施術などのクオリティもあるとは思うが、その状況を生み出している重要な要素は他にもあると分析している。

ポイントは「少人数制」→「予約ループ」→「バーチャル行列」のコンボだ。

そもそも『悟空のきもち』は日本に5店舗しかない。ニューヨークにも店舗があるが、あえて店舗を絞っている。

さらに各店舗もキャパは10人程度だろう。一度に施術できる数をあえて「少人数に抑えているのだ。

キャパが少ないと、予約が取りづらくなる。そして、常連さんは来店した際に優先して予約できるようになっている。予約が取りづらいので、常連さんのほとんどが次回の予約をしてくれる。これが「予約ループ」だ。

■常連による「予約ループ」から「バーチャル行列」のコンボ

予約が常連さんで埋まってしまうと、新規のお客さんはさらに予約が取れなくなる。予約できないキャンセル待ちの人が増え、「バーチャル行列」が生まれる。

キャンセルが発生した場合は、キャンセル待ちリスト(=「バーチャル行列」)にアナウンスすれば、瞬く間に予約が埋まるのだ。

いったんキャンセルしてしまうと「予約ループ」から抜けて次の予約が取りづらくなるので、そもそもキャンセルが発生しにくい。

ドタキャンが発生してもすぐに空いた枠は埋まるし、新しい常連さんを生み出すことにつながるので、ドタキャンが問題ではなくなる。

さらに、お客さんの数を絞っているので、サービスレベルの向上に力を入れることもできる。サービスが向上すればさらに人気が高まってさらなる好循環につながっていくだろう。

このコンボはかなり強力だ。

出だしのポイントは、数を絞ってサービスを向上させること。「常連化曲線」を意識して、一定数の常連さんがついてくれたら、「予約ループ」から「バーチャル行列」のコンボが活用できるようになる。

その状況になれば、確実に経営は安定する。

応用できる業態は多いので、ぜひ取り入れてみてほしい。

■『一蘭』のすごいところは接客リスクがないところ

『一蘭』は味の他にもさまざまな工夫があってすばらしい。

相場より少し値段は高いものの、ラーメン自体もおいしいと思う。でも、もっともすごいのは「接客リスク」がないところだ。意識するようになってから、「接客リスク」のない飲食店を探してみたが、ほとんどなかった。

それほど『一蘭』はすごいということだ。

まず、『一蘭』はお客さんから見えない内側でラーメンを作っている。アルバイトのスタッフが「笑顔」なのか「しかめっ面」なのかが見えない。つまり、「あの店員、感じ悪いな」と思われるリスクがほとんどない。「いらっしゃいませ」は機械が率先していってくれる。ここでも、「スタッフが挨拶してくれなかった」「感じが悪い」といったクレームとは無縁ということだ。

麺をゆでている大鍋
写真=iStock.com/PixHound
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PixHound

ひとりひとりがブースで区切られていてお客さんが長居することはなく、それにまつわるトラブルもないだろう。

お客として初めて『一蘭』に入ったときは、オーダーシートを書く意味が正直わからなかった。でも、そうすることでオーダーミスがなくなると気づいた。

■細かいところまで常識を疑う

少し話は変わるが、『一蘭』では「セントラルキッチン」も導入している。

セントラルキッチンとは、複数の店舗の調理を集約する施設やシステムのことだ。規模のメリットでコストを下げることができ、味や品質のムラを防ぐことができるのがメリットだ。

ただし、とんこつラーメン屋の場合はデメリットも大きい。店舗で作っているからこそ、その様子や匂いがおいしそうに感じられて集客につながるのだ。

その集客効果がなくなってしまっているのに『一蘭』は人気なのだから、それ以上の魅力を提供できているということだ。

細かいところまで常識を疑い、必要のないものを削って効率を高めているので、収益性はかなり高くなっているはずだ。

10年くらい前に『一蘭』のアトレ上野店ができたときには1日で4000食分くらい売りあげたそうだ。客単価も1000円くらいと高め。単純計算で1月に1億円以上の売上だ。1店舗で立派な会社規模の売上だ。

■常識を疑い、オートメーションなどの工夫を取り入れる

徹底して考えられているので、『一蘭』の代表取締役社長である吉冨学さんは日本のレイ・クロックだと思っている。

レイ・クロックはマクドナルドの創業者。フランチャイズ展開することで世界最大のファストフード店に育てた立役者だ。

マクドナルドは、1940年代に生まれた「オートメーション」を取り入れたのが画期的だった。自動車を生産するために「フォード」の工場で行われていたオートメーションを、ハンバーガーショップに応用したのだ。

スマホが普及し、キャッシュレス決済も広まってきた今なら、飲食のいろんな業態でオートメーションは応用できる。

スマホでオーダーできてセルフで提供すれば、ホールにスタッフはいらなくなる。

皿洗いと清掃が外注できれば、ワンオペで店舗を回すこともできるだろう。常識を疑い、オートメーションなどの工夫を取り入れれば、ラーメンやハンバーガーでなくてもライバルを出し抜くことは可能だ。

■飲食店の競合はもはや飲食店だけではない

「人」にフォーカスしたスナックが最強の飲食店ではないかと思っている。

「トレタ」の代表、中村仁さんと対談した際に、僕が「スナックは最強」だと思う前提をわかりやすく解説してくれた。

今までの飲食店は「料理」「人」「場」の3つの要素が渾然一体となって構成されていた。それがテクノロジーによってアンバンドル(分割)されて、個別に解体されるようになってきた。

つまり、料理はデリバリーで頼めるし、シェフも手軽に呼べるし、場所も簡単に借りられるようになったのだ。

そうなると、飲食店の競合はもはや飲食店だけではない。さまざまなサービスとの戦いになっている。従来の考え方で思考停止しては、勝ち残ることはできない。

「何で勝負するのか」「どんな価値を提供するのか」といったことをより明確にする必要があるのだ。

それはつまり、何にフォーカスして、何を妥協するかということでもある。

そこでおすすめしたいのが「人」にフォーカスして勝負するやり方だ。

■最強のお店は会いたいママがいる「スナック」

僕はこう見えても、実は人見知りだ。

すぐに打ち解けたりはしないし、そもそもあまり人と仲よくならない。初めて会う人とは距離を置いてしまうのだ。

だからこそ、仲よくなった人とはちゃんと仲よくする。

それはお店も同様で、通うお店は限られているし、そのお店も仲のいい人に会いに行くという感覚が強い。

そんな感じで「この人に会いたいからまた行きたい」と思わせるのがスナック的なコミュニケーションだ。

実はスナックは業態としてはかなり研ぎ澄まされていて、食事は簡単に用意できる乾き物だけだ。

他にカラオケとお酒があるだけ。アルコール類も酒屋と在庫を共有していて、足りないものを勝手に持ってきてもらって伝票を切るという方式だ。

だからこそ、人と人とのコミュニケーションが中心になっている。

ママと常連さんには信頼関係があり、ママがひとりで切り盛りしているようなスナックでは、お客さんがスタッフのように手伝っていることも珍しくない。

常連さんが「ママ、これ片づけとくよ」とグラスを下げたり、キープしていたボトルで勝手にお酒を作ったりしているのだ。

それを突き詰めていくと、スタッフを雇わなくてもいい飲食店ができるのではないかと考えている。

■スナック的な飲食店は今後ますます求められる

スナックで提供する料理をすべてコンビニで調達すれば、格安業態へ進化させることも可能だろう。最近はコンビニの冷凍食品がおいしいから、ちょっと手を加えれば十分においしい料理になる。

さらにいえば、料理もおつまみも置かず、持ち込みのみにしてもいい。

堀江貴文『死なないように稼ぐ。』(ポプラ新書)
堀江貴文『死なないように稼ぐ。』(ポプラ新書)

そんなスナックをコンビニ横に作れば、コンビニで買ってそのまま持ち込める。持ち込み料を500円くらいに設定しても、お店にいるうちにいろいろ追加でお酒などを頼んでしまうので、結果的に客単価はあがるはずだ。

シャンパンなんかを置いて記念日に対応すれば、さらなる売上も望める。

コンビニの横でないなら、ホテルの隣か中でもいい。部屋飲み感覚で利用できるからだ。『ドーミーイン』が今すぐやるべきビジネスは「スナック」で間違いない。「人」が中心のスナック的な飲食店は、今後ますます求められるようになる。

現状のスナックでも研ぎ澄まされているが、さらなるアップデートを加えることで、「無敵」のスナックを生み出したい。

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堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)
実業家
1972年福岡県八女市生まれ。SNS media&consultingファウンダー。ライブドア元CEO。宇宙ロケット開発やスマホアプリのプロデュース、予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど多岐にわたって活動中。 著書に『ゼロ』『多動力』『好きなことだけで生きていく。』『自分のことだけ考える。』などベストセラー多数。

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(実業家 堀江 貴文)

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