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「ペットボトルのお茶」は濃いものを選ぶ…オートファジーで細胞から若返る「最強の食事術」8つのコツ

プレジデントオンライン / 2023年10月26日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kayoko Hayashi

いつまでも健康で過ごすにはどんなことが大切なのか。生命科学者で大阪大学大学院の吉森保教授は「細胞の働きを活性化させる『オートファジー』を高める食品を選ぶと、加齢に伴う疾患を予防できたり、寿命が延びたりする可能性がある」という――。

※本稿は、吉森保、松崎恵理『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「12時間プチ断食」に根拠はない

近年、プチ断食が話題です。

「12時間ダイエット」「16時間断食」「半日断食」などの言葉がメディアを賑にぎわせています。

そして、空腹の時間を長くつくるダイエットに共通する最大のメリットが「オートファジー」です。空腹になると細胞内でオートファジーが機能して、体のダメージがリセットされ、体が内側から若々しくなると紹介されています。

オートファジーの専門家としては、研究対象が広く知られるのはうれしい限りですが、同時に違和感もあります。ブームになることで、少し誤解も生まれているなというのが本音です。

例えば十数時間断食するとオートファジーの働きが数倍に活性化するとの主張もありますが、そのようなデータは存在しません。

断食しないとオートファジーが働かないと思われている方もいるかもしれませんが、オートファジーはみなさんの体の中で常に起きています。

確かに「空腹状態=カロリーを抑える」と活性化しますが、12時間にも16時間にも根拠はありません。むしろ、常に体の中で起こっているオートファジーを一定レベルに維持することが健康には重要です。

■一食当たりのカロリーを抑えれば効果は同じ

断食は確かに効果が見込めます。カロリーを抑制することは内臓を休ませ、脂肪を燃焼させます。高血糖や体内での炎症も防げるといわれています。そして、オートファジーにも有効です。動物実験ではカロリーを制限すると寿命が延びることがわかっていますが、これはオートファジーによる効果とされています。

一方で、断食でカロリーを抑えるのも一食当たりのカロリーを抑えるのも効果は同じとされています。摂取するカロリー量を抑えられれば、方法は問わないわけです。

つまり、修行僧のように食べるのを我慢せずに一食当たりの食事を腹八分にすれば効果は見込めます。オートファジーも活性化します。

むしろ、極端な断食はデメリットがあります。過度な断食によってオートファジーで分解された筋肉は栄養が足りないために再合成されなくなり、細くなってしまいます。また、絶食している状態から急に食べると血糖値が急上昇し動脈硬化の原因になるという研究もあります。

さて、少し前置きが長くなってしまいましたが、本稿を読み進める前にみなさんに覚えておいてほしいのは、極端な健康法や食事法にはデメリットもあるということです。

■オートファジーとは、細胞の働きのひとつ

極端な方法はわかりやすく簡単に取り組めるので注目を集めがちですが、専門家の視点からするとエビデンス(証拠)が明確でないものも少なくありません。生物学的にも栄養学的にもマイナスの側面もあります。

オートファジーは、ダイエット法でも断食法でもありません。人間を健康に保つ、細胞の働きのひとつです。そして今、生活習慣病や認知症、感染症、腎症、心臓病、肺炎などの炎症の改善と深くかかわることがわかってきています。

また、免疫を高めて健康寿命を延ばす効果や美容との関係でシミ、シワ防止に役立てる研究も進んでいます。その働きは食生活や生活習慣の改善で高められます。

本稿では、オートファジーを高める食品や食べ方を示していきますが、まず、オートファジーとは何なのか、どのような効果があるのかについてもう少し見ていきましょう。みなさんの健康意識を大きく変えることになるはずです。

■細胞には「道路」や「リサイクル工場」がある

人間は何からできていますか? と聞かれたらみなさんはなんと答えますか。

おそらく、「皮膚」「骨」「内臓」などの答えを思い浮かべた人が多いでしょう。実はこれらは全て「細胞」からできています。そして、人間は37兆個もの細胞からなります。

その細胞ひとつひとつの中には、多くの物質が存在します。物質がつくる「器官」もあります。エネルギーをつくる器官もあれば、物質を消化する器官もあります。人間の社会のように「道路」もありますし、「リサイクル工場」もあります。

細胞の中の物質が全体のためにひとつひとつ動いています。細胞は何億年も前から、人間社会の物流網より効率的な、非常に秩序だった物流の仕組みを持っているわけです。人間の社会よりもある意味、きっちり動く世界があります。

細胞ひとつひとつが正確に機能しているから、私たちは問題なく日々を過ごせています。つまり、健康とは細胞が正常な状態です。その反対に病気とは細胞に不具合が起こっている状態です。細胞がまともに機能しなくなることで私たちは体調が悪くなり、最終的には死ぬこともあります。

細胞には恒常性という特徴があります。これは体の状態をある一定のレベルに保つ生命の現象です。難しく聞こえるかもしれませんが、恒常性があるから、私たちの体温や体重はある一定の範囲内に収まっています。

■清掃車がリサイクル工場に物を運ぶイメージ

もちろん、大半の人はこの恒常性を日常で意識する事はほとんどないでしょう。「おお、今日も細胞のおかげで昨日と変わらず元気だ」なんていう人はいません。

ただ、体の中でこうした調節がされていることは感覚的に知っているはずです。ですから、体温が39度もあれば、なんだかおかしいなと気づきますし、体重が1週間で5キログラムも減少したら、病気かなと疑うわけです。

恒常性が失われると体が一定に保たれなくなります。つまり病気になるわけです。細胞が恒常性を失う原因はいろいろありますが、病気は細胞がこれまでどおりの活動ができなくなることで起こります。細胞がおかしくなることが病気の原因の一つです。

胚性幹細胞
写真=iStock.com/luismmolina
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/luismmolina

ですから、人間にとって細胞を正常に保つことは非常に重要です。そして、オートファジーは細胞を正常に保つ重要な役割を果たしています。

オートファジーはモノの名前ではありません。「細胞の中の物質を回収して、分解してリサイクルする」現象あるいはシステムです。

細胞内の「社会」のお話をしましたが、そこでのオートファジーのイメージとしては清掃車がリサイクル工場に物を運ぶ光景を想像してもらうとわかりやすいかもしれません。

ちなみに、オートファジーが運ぶのはゴミだけではありません。詳しいことは『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)でお伝えしています。

■では、具体的に何をどう食べれば良いのか

最近は書籍やテレビでも「老けない食品」のように何かに役立つ食品の特集が目立ちます。ただ、特定の食品を食べれば健康になったり、若々しさを保ったりできるわけではありません。食品の働きを生かしきるためには、体が生きていくために必要な栄養素や成分がしっかり足りていなければいけません。

私たちの体は、栄養素やさまざまな成分を食事として食べ、生きるために必要な生化学反応を支えています。そして、食事として食べる栄養素や成分は多すぎても、少なすぎてもよくありません。そのためには、ちょうどよい量の栄養素や成分をとることができる「土台」をまずつくらなければいけません。

毎日の食事をしっかりとっていれば、病気にも肥満にもなりにくい土台ができます。土台があれば加齢にあわせて調整することは難しくありません。

毎日の食事をバランスよく食べる方法を知り、実践しましょう。

①納豆

オートファジーを活性化する成分:スペルミジン

納豆に含まれる栄養素は、たんぱく質、食物繊維のほか、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラルが豊富です。ビタミンKが非常に多く、ビタミンB1・B2・B6、ナイアシン、葉酸も含まれています。

また、納豆には、納豆菌から作り出される酵素が含まれていますが、その中のひとつにナットウキナーゼがあります。ナットウキナーゼは、血栓溶解作用があります。ナットウキナーゼは、長時間加熱すると酵素活性が失われますが、一般的な調理法で食べる分には、あまり気にする必要はないでしょう。

■時間がない時は「鮭フレークごはん」でもいい

食べ方:手軽に食べられるので、朝食でのたんぱく質摂取に最適です。朝食でたんぱく質をしっかりとることは、睡眠の質の向上に繋がるため、そういった意味でもおすすめです。習慣的に食べることで血栓溶解の働きも期待できます。

そのまま食べるのはもちろん、炒める、和(あ)え物などでもよいでしょう。たんぱく質がとれて、脂質が少ない「優等生」と言えます。栄養素も豊富で安価なため、ぜひ、毎日の食事に取り入れたい食品です。

②鮭(サーモン)

オートファジーを活性化する成分:アスタキサンチン

鮭(サーモン)に含まれる栄養素は、たんぱく質のほか、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラル、ビタミンD、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、葉酸、ビオチンなどが豊富です。

また、DHA、EPAといった良質な脂質も含まれています。DHAは脳の機能を向上させる働きなどがあります。EPAは、体内の免疫の働きの調節や抗炎症作用、生活習慣病の予防に関連していると期待されています。アスタキサンチンは、オートファジーを活性化する以外にも強力な抗酸化作用があります。

食べ方:主菜として塩焼きや、漬け焼き、ソテー、蒸す、汁物に入れても美味しく食べることができます。基本的に味付けも含めて非常に使い勝手がよい食品です。

忙しいビジネスパーソンには鮭、きのこと野菜のホイル焼きが手軽です。ホイルで包むだけでできて、脂質をとりすぎません。本当に時間がない時は、鮭フレークをごはんにかけるなどして取り入れるのもよいです。

■ワインは「グラス1杯」が健康にいい

③ブドウ、赤ワイン

オートファジーを活性化する成分:レスベラトロール

グラスに注がれるワイン
写真=iStock.com/Xsandra
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Xsandra

ブドウに含まれる栄養素は、カリウム、鉄、亜鉛、葉酸などがあります。またブドウは、果物の中では糖質が多く含まれています。赤ワインに含まれる栄養素は、カリウム、鉄、ビオチンなどです。レスベラトロールは、ポリフェノールの一種で日本人である高岡(たかおか)道夫(みちお)氏によって発見された成分です。抗酸化作用、がんの抑制作用などさまざまな働きがあることが報告されています。

食べ方:おすすめはブドウをそのまま食べることです。糖質が多めなので夜よりも朝食、昼食、おやつに食べるのがよいでしょう。ワインはグラス1杯程度が適量です。飲み過ぎないように注意しましょう。

ブドウジュースはブドウそのものに比べて糖質を吸収しやすいので、ヨーグルトと混ぜてヨーグルトドリンク、お酢と炭酸水で割って自家製のドリンクにするなど工夫すると良いでしょう。ワインは沸騰させてアルコールを飛ばしてから、ゼリーや寒天などで固めるとデザートとして楽しめます。

■ペットボトルのお茶は濃いものを選ぶ

④緑茶、抹茶

オートファジーを活性化する成分:カテキン

緑茶に含まれる栄養素は、ビタミンC、葉酸、ミネラルなどです。抹茶には、たんぱく質、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、β-カロテン、ビタミンK・B1・B2・B6、葉酸が含まれます。緑茶や抹茶に含まれるテアニンは、アミノ酸の一種でカテキンに変化する前の成分でもあります。

テアニンには、リラックス効果があるとされています。

飲み方:一般に茶葉から淹(い)れたお茶はペットボトルのお茶よりも200ミリリットルあたりのカテキンの量が多くなります。濃いタイプのペットボトルのお茶には茶葉から淹れたものの倍以上のカテキンが含まれているものもあります。

カテキンの量だけで考えるとペットボトルのお茶でよいと言えますが、風味が違うことや茶葉で淹れた方が、テアニンの量が多いというデータもありますので、リラックスなどを目的に茶葉で淹れたお茶も楽しみたいところです。

抹茶は、なかなか日常生活に取り入れづらいですが、最近はスイーツなどにも多く使われています。抹茶入りのスイーツでもカテキンをとることができます。

■栄養素が豊富で、幅広い料理に使えるオリーブ

⑤オリーブ油、オリーブ

オートファジーを活性化する成分:ヒドロキシチロソール

ヒドロキシチロソールは、オートファジーの働きにより細胞内で分解される物質の量を増やし、神経変性疾患やがん、また、加齢に伴う疾患を改善する可能性が指摘されています。

オリーブ油に含まれる栄養素は、脂質、β-カロテン、ビタミンEなどです。主成分はオレイン酸と呼ばれる脂肪酸です。酸化につよく、血糖値をコントロールするインスリンの働きを助け、体脂肪をためにくくする働きがあります。オリーブの実に含まれる栄養素は、ビタミンAやビタミンEが豊富であるほか、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラルなどです。

食べ方:オリーブ油は、炒め物や揚げ物、ドレッシングなど幅広く使うことができます。

ただし、とりすぎはよくないので、ドレッシングなどに使う場合は、一食あたり1人分で小さじ半分~1杯くらいがおすすめです。サラダ油をオリーブ油に意識的に変えて料理するのもよい方法です。

オリーブの実はワインのおつまみなどで食べる人も多いですが、サラダに加えたり、洋風の煮物、トマトソースと一緒に調理したりと手軽に使えます(種付きでも種を抜いたものでも可)。

アンチョビやにんにくなどと一緒にオリーブ油に漬けておいて、パスタに使ったり、魚のソテーで一緒に加熱すると風味が増します。

オリーブの実をにんにくと一緒にペースト状にしたタプナードは、パンやクラッカーに塗って食べると美味しいです。

■ベリー類、クルミは小腹が空いたときに最適

⑥ベリー(いちご、ブルーベリーなど)

オートファジーを活性化する成分:ウロリチン

ベリーとオートミールのお粥のボウル
写真=iStock.com/Arx0nt
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Arx0nt

ベリー類に含まれる栄養素は、いちごはビタミンC、葉酸のほか、カリウム、鉄、亜鉛などのミネラルが多く、ブルーベリーは、β-カロテン、ビタミンE、鉄などが含まれます。ブルーベリーに含まれるアントシアニンは、ポリフェノールの一種で抗酸化作用があり、目の健康維持に働きます。

食べ方:いちごはそのままはもちろん、ヨーグルトなどに混ぜてもよいでしょう。ブルーベリーは冷凍品でも手に入れやすいので、常備しておくと使い勝手が良いです。数種類のベリー類を合わせて冷凍にしたものは、手軽に利用できて保存もできるのでおすすめです。

ヨーグルトやサラダに添えるなどさまざまな場面で使えます。肉のソースとして、赤ワインなどと一緒に煮ても美味しいです。

⑦クルミ

オートファジーを活性化する成分:ウロリチン

クルミに含まれる栄養素は、たんぱく質、食物繊維、脂質のほか、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラル、ビタミンB1・B2、ナイアシン、葉酸などが豊富です。

食べ方:小腹が空(す)いたときにおやつ代わりにつまむのが、もっとも手軽なとり方です。料理に使う場合は、サラダやシリアルに混ぜたり、細かく砕いて和え衣として野菜などと和えても美味しいです。軽く炒(い)ってから使うと風味がさらに良くなります。細かく砕くのが面倒な場合は、クルミパウダーを使ってもよいでしょう。

■スパイスカレーは健康にいい

⑧ウコン(ターメリック)

オートファジーを活性化する成分:クルクミン

吉森保、松崎恵理『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)
吉森保、松崎恵理『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)

クルクミンは、肝細胞のオートファジーの経路に影響を与えて活性化することで、肝臓の臓器不全につながる肝細胞の線維化を緩和することができると報告されています。

ウコンに含まれる栄養素は、リン、鉄、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルや食物繊維などです。黄色の色素成分であるクルクミンは、ポリフェノールの一種で、抗酸化作用、抗炎症作用があるとされています。

食べ方:「ウコン」と聞くと健康ドリンクのイメージが強いかもしれませんが、「ターメリック」として調味料売り場などで販売されています。カレーに含まれているので、カレーを食べる際にとるのが一般的です。

できれば、市販のルーを使わずに、自分でスパイスを合わせてスパイスカレーをつくるのがおすすめです。米と一緒に炊いてターメリックライスにすると、鮮やかな黄色になります。鶏肉を漬け込んでタンドリーチキンにしたり、煮込んだりしても良いです。ターメリック単体はあまり香りが強くないため、クミンなど、他のスパイスと合わせて使うと美味しいカレー風味にすることができます。

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吉森 保(よしもり・たもつ)
生命科学者
専門は細胞生物学。医学博士。一般社団法人日本オートファジーコンソーシアム代表理事。大阪大学大学院生命機能研究科教授、医学系研究科教授。2017年大阪大学栄誉教授。2018~22年生命機能研究科研究科長。大阪大学理学部生物学科卒業後、同大学医学研究科博士課程中退、私大助手、ドイツ留学ののち、1996年オートファジー研究のパイオニア大隅良典氏(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)が国立基礎生物学研究所にラボを立ち上げたときに助教授として参加。2019年紫綬褒章受章、他受賞多数。著書に『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(日経BP)、『生命を守るしくみ オートファジー 老化、寿命、病気を左右する精巧なメカニズム』(講談社)他。

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(生命科学者 吉森 保、一般社団法人栄養検定協会代表理事 松崎 恵理)

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