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高齢者は大学病院に行ってはいけない…和田秀樹「患者が知っておくべき"いい医者を見極める"突っ込んだ質問」

プレジデントオンライン / 2023年12月19日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/andrei_r

いい医者を見極めるにはどうすればいいか。医師の和田秀樹さんは「大学病院に罹ると大量の薬が投与され、薬の多剤併用の副作用が出てしまうため、70歳以上の高齢者は原則的に行くべきではない。患者がベストな治療を受けるためには、医者を信じすぎずに自分の症状や投与された薬の副作用など最低限は学び、医者を質問攻めにすることだ」という――。

※本稿は、和田秀樹『病気の壁』(興陽館)の一部を再編集したものです。

■高齢者は大学病院にはいかないで

医療の常識といえば、高度医療を提供する大学病院にいけばベストな治療を受けることができると妄信している人が目立ちます。でも本当にそうでしょうか?

とくに70歳以上の高齢者は原則的に大学病院へいくべきではないというのがわたしの考えです。

若い人であれば何らかの病気にかかったときに、それを徹底的に検査し、なるべく高度な治療を受けて、もとの状態に戻るというのは望ましいことなのでしょう。

若ければ、手術による体力低下や投薬の副作用を乗りこえて回復し、病気になる前の暮らしをとり戻すということがあると思います。

でも、高齢者には高度医療という名の力技といえる治療によって身体に受けたダメージから完全復帰するのは難しい。

たとえトラブルのあった臓器の状態がもとの状態に戻ったとしても、調子が戻らずヨボヨボの状態で退院をするとか、退院後の生活のなかで慢性的な倦怠(けんたい)感を抱えてしまうといったことになりかねません。

それ以上に、若い人であれば、病気をするにしても、一つだけであることが多く、それを治せば健康に戻ることができました。

ところが、高齢者の場合、いくつもの病気を抱えていることが多く、そのそれぞれに専門的で高度な治療を受けると、かえって弊害が増えてしまうのです。

■大学病院が3つ以上ある都道府県ほど平均寿命が低い

たとえば高血圧でありながら、軽い糖尿病もあり、コレステロール値も標準値オーバーで、頻尿症状も抱えているという場合、大学病院では循環器内科で血圧を下げるための降圧剤とコレステロール値を下げる薬が処方され、内分泌代謝内科で血糖値を下げる薬が処方され、泌尿器科で膀胱収縮を抑える薬を処方されるでしょう。

各臓器の状態が正常に戻っても、これでは薬の多剤併用の副作用が出てしまいます。

短期的な有害事象だけでも、薬が6種類以上の場合、15パーセントの患者さんに出るというデータがありますが、長期的な弊害ははるかに多いとわたしは見ています。

実際、愕然としてしまうようなデータもあります。

1965年に47都道府県を対象におこなわれた平均寿命を調べる調査では、東京、大阪、福岡、愛知、神奈川といった大学病院の多い県が上位を占めていたのですが、その後、その順位はどんどん下がっていき、今では大学病院が3つ以上ある都道府県ほど平均寿命が下位になっています。

先にお伝えしたとおり、大学病院で臓器別診療を開始したのは70年代の話です。大学病院が多い県では、近隣の大病院や開業医もその影響を受けやすいのでしょう。

東京都お茶の水にある順天堂大学病院
写真=iStock.com/ranmaru_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ranmaru_

■働き盛りが終わったら、快適に過ごせる医療を求める

逆に、地域医療が盛んで大学病院の影響の少ない長野県などは、男性の平均寿命が日本のトップに躍り出た1990年以降、平均寿命は常に日本のトップクラスで、ひとり当たりの老人医療費も常に最低レベル(つまり、県民が健康)の常連です。

つまり「臓器別診療」という大学病院のスタイルは、高齢者には基本的にフィットしないことを物語っているのです。

長年にわたり思い描いてきた理想の医学を目指して専門医の育成に励んできたというのに、社会全体のニーズに応えることができなかったというのは残念なことだと思います。

でもかくなるうえは、自分の身は自分で守らなくてはいけません。

もしも、あなたが働き盛りも終わったし、24時間戦えなくてもいい。

数値以前に自分がほどほどに快適にすごせたらそのほうがいいと考えているのなら、大学病院がベストだという認識を改めたほうがいいとわたしは強くおすすめします。

■高齢者の高血圧や高血糖などが、一つずつ多発的に起こる

大学で「臓器別診療」がスタートした当時、日本の人口の7パーセント程度だった65歳以上の高齢者は、2022年度調べでは29.1パーセントまで上昇しています。

高齢者の高血圧や高血糖などが、一つずつ多発的に起こることが多いことを思えば、大学病院型の医療を学んでいると「薬漬け」の所以はさらに明確になるのです。

現在の50代より若い開業医は、ほとんどが大学病院の臓器別診療のトレーニングしか受けていません。

さらに80年代から盛んになった専門医制度は、ほとんどのものがある臓器の専門医の称号を与えるというものです。

それなりに厳しい条件をクリアし、それなりの難しい試験に合格しないと得られないものですが、逆にそれをとってしまうと、それを手放したくないのが人情です。

5年に一度くらいの更新のために、その臓器の勉強を続けないといけません。

ということでその臓器については最新の知識を学ぶことになるのですが、よけいにほかの臓器の勉強の時間がとれなくなるというパラドックスが生じます。

シニアの血圧測定中の女性医師
写真=iStock.com/Goran13
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Goran13

■「薬漬け大国」になってしまう構造

このような臓器別診療のために、開業医にかかっても、その医者の専門の臓器については大学病院のすすめる標準治療、それ以外の臓器にはマニュアル本頼りになります。

この流れをくんだ開業医の多くが頼りにするマニュアル本の標準治療では、ほとんどの病気で一つの病気に対して2~3種類(5種類のこともあります)の薬を飲ませるといいということになっているため、4つの症状を抱えている患者さんは8種類~12種類もの薬を処方されることになるのです。

ちなみにマニュアル本では、他の病気が合併していることは、ほとんど考慮に入れられていません。

何度も繰り返しますが、その一方で、総合診療を学んでいない医者は自分の専門外の臓器には他になす術がない。

だから病状の数だけマニュアル本どおりに薬を処方する。「こんなにたくさんの薬を飲むと胃が荒れますので、胃薬も出しておきましょう」と、2種類くらいの胃薬も出すので12種類の薬が14種類になってしまう。

これがこの国が「薬漬け大国」となってしまった理由なのです。

■依存心が強すぎる患者側の責任も

標準治療をすれば大外れにはならないとはいえ、マニュアル本どおりにしていたら、患者さんに個人差があるという点が抜け落ちてしまいます。

目の前にいる患者さんは、家ではどんな暮らしぶりなのか、どんな食生活をしているのか、どんなストレスがあるのか、運動はしているのか、何をしているときに癒しを感じるのか……。

人を知ろうとせず、数値とばかりにらめっこして、ステレオタイプな投薬を繰り返す。これでは「患者主体」の治療とはいえません。

前述のように、大量の薬を投与すれば、症状を軽くするどころか、副作用による害のほうが大きくなってしまいかねないのです。

そのうえ、高齢になれば肝臓の薬の分解機能も低下してきます。

腎臓の機能も落ちるので、体内に摂取した薬が排出しづらくなることから薬が血中に残りやすいことも考えられるのです。

とはいえ、患者さんにも責任の一端があるとわたしは思います。

医者を信じすぎているという点において。もっといえば依存心があまりにも強いという点において。

自分の身体のことなのですから、医者にかかって調子が悪いときに、どういうことが考えられるのかは今でも調べられますし、チャットGPTに聞けば教えてもらえるようになる日も近いでしょう。

■いい医者かどうかのリトマス試験紙

今でも出された薬については、その薬にはどんな副作用があるのか、すぐにスマホでも調べられます。このくらいは最低、調べておくべきなのではないでしょうか。

和田秀樹『病気の壁』(興陽館)
和田秀樹『病気の壁』(興陽館)

その構えがあれば、調子が悪くなったときに、医者に「今の薬が合わないようなのですが」といいやすいでしょうし、「その薬にはこういう副作用がありますが、どうお考えですか?」と突っこんで尋ねることもできるのです。

本来、医者は、くわしいインフォームドコンセント(患者さんが治療について十分に理解するための説明をしたうえでの同意)がないと治療を進めてはいけないのです。

こういうことを聞かれて、機嫌が悪くなるような医者は自信がないか、傲慢なのかのどちらかでしょう。いずれにしても離れたほうがいいと思います。

つまり「質問攻め」は、自分の症状について学んでいる人だけが手にすることのできるリトマス試験紙といえるのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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